ごちそうさまよりも先に口吻を「いちまぁつ、ただいま!ちょっと荷物で手が塞がってて、ドアを開けてくれないか?」
控えめなカツカツという義足でと思われるノックの後、次兄のよく通る声が家の中まで響いた。おれは確かにそれが聞こえていた筈なのに、それに応えることが出来なかった。
次兄はドラゴン研究家という、ドラゴンと対峙する機会の多い危険な仕事をしている。心配はあれどそれ自体は否定しない。次兄のドラゴンを目の前にした時の、あのキラキラと輝く瞳が好きなのだ。
とはいえ、心配なものは心配だ。あいつがある調査から片足を失くして帰ってきた時なんか、兄弟全員であいつを暫く軟禁状態にしてたくらいには。だから、あいつが調査から帰ってきたら、まず兄弟全員に顔を見せに行くこと、無事を直に確かめさせること。それを約束したのだ。
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