シロップ息が詰まる。突き上げた内部の一番深いところで達して、何度か腰が震える。そんな水上の動きに合わせたかのように膝の上の身体も仰け反り、そのまま後方に重心が傾く。
慌てて彼を抱きとめると、二人の上半身が密着して粘ついた体液が水上の腹についた。
すぐ耳元にある喉からは喘ぎとも呻きともつかないか細い声が出ている。低くねっとりと甘いそれは、遂情で失せた欲望を呼び覚ますには十分で、水上は考えるより先に隠岐の身体を引き離した。
掛けていたベッドの中央に彼を座らせる。ぐったり弛緩した身体を安定させるのは難しかったので、着地した臀部からそのまま腰、背中、肩と横たえた。自身に装着していたスキンを外し、ティッシュペーパーに包んでごみ箱に捨てる。再びティッシュボックスに手を伸ばして、何枚か取り出す。
後方を振り返り寝転んだ隠岐と向き合う。額の汗を軽く拭ってから、身体に散った体液をティッシュに吸わせる。
「隠岐。いけるか?」
無言で他人の身体を触るのに抵抗があったので問いかけたが、自分の声など聞こえていないのは想像がついた。密度の高く長い睫毛は絶頂の余韻に震え、瞳は潤んでいた。薄い唇からは荒い呼吸に混じって喘鳴のような音が漏れている。焦点の合っていない視線は一応水上のほうに向けようとしているように見えるが、なんとも頼りない。
改めて隠岐の身体を眺める。ところどころ鬱血が散る上半身は薄く、その下にある骨も華奢だ。二人の身長は数センチ差で体重もそう違いはない。それなのに彼の手足は水上に比べて細く長く胴体も平べったい。一体どこにそんな質量を蓄えているのだろうか。
いつもは乳白色の肌も今ばかりは赤らんでいる。汗で湿った頬に触れる。少し癖のある髪に指を通して、側面から頭頂部をなぞって後頭部を撫でる。円を描いたような小さな頭。どこもかしこも作りが繊細で人形めいている。
「みずかみせんぱい」
不意に子供のように舌っ足らずな声が水上を呼ぶ。思考が切断されて、視線が隠岐に引き寄せられる。
「なんや」
「先輩は女子もそんなおどおどしながら抱くんですか?」
おれ、そんなに弱そうに見えるんかなあ。突拍子もない言葉に面食らう。そして自然と唇が歪んで笑い声が出た。
物腰が柔らかい優男。それがなんだというのだ。水上がどれだけ激しく抱いてもその身体が壊れることはなかった。痩身に確かに宿った殺意の高さも、狙撃の実力もよくが知って駒として扱っているというのになにを気遣う必要があるのか。
「そうやな。そんなこと考えるん俺らしいないな」
隠岐の頭に触れていた水上が指先で髪の毛をもてあそぶと、心地よさそうに彼は目を細めた。