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    ありがとう

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    DONE2025/05/04「リペアショップ・メロピデ」の前日譚として無料配布いたしましたポストカードSSのweb再録です。
    お手にとっていただき本当にありがとうございました!
    本編の前日譚になりますので、読了後にお読みいただくのをオススメしております。
    5/4無料配布・再録 ある日、ヌヴィレットは運命が動く音を聞いていた。

    「……カロレ?」
     執務室の窓から空を見上げると、そこには今日もまあるい月が輝いていた。いつもと変わらぬ、穏やかな夜。だが、ヌヴィレットは確かに聞いていたのだ。自分が待ち望んでいた運命がやって来る音を。
     ヌヴィレットはなりふり構わずに窓から飛び出し、紺碧の夜空へ浮かぶ月へ向かって一直線に飛び込む。正確には、この世界に浮かぶ月とは月ではない。だが、自分たちにとってあの穏やかな輝きは、確かに月なのである。
     月の光へ追いつき飛び越えた先には、限りないブルーが広がっている。上下左右ないその空間へヌヴィレットが滑り込むと──いた。
    「……ヒトの子供、か?」
     ゆっくり、ゆっくりとこちらへ沈んでくるのは、ボロボロの新聞紙に包まれた小さな塊。血の匂いがするその塊は息絶えて間もないのだろうか。弱々しいながらも何かを訴えかけてきており、ヌヴィレットは思わず手を伸ばし、その塊をそっと受け止めてやった。ボロボロの新聞紙をそっと避けてやると、そこには小さくて可愛らしい、まだ温もりの残った赤子の姿がある。
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