道祖子供扱い
「ふふかわいいね」
「……」
「君にもあんな時期があったんだよ覚えてる?」
「俺はあんなどんくささくなかったが?」
「ふ、そうかい
でも、うん、きみも大きくなったねぇ」
ぽんぽん、と頭を撫でられる。完全な子供扱いだ。俺を見る目があの頃から何も変わっていない。コイツに勝つために、コイツに見合う男になるために、努力したというのに。未だ0勝全敗、近所の子供と同じ扱い。
「子供扱いすんな」
「まだまだ可愛いままじゃない」
にこ、と笑うその顔に心臓を掴まれる感覚に陥る。言ってる事は大層ムカつくが顔は緩みきっていて笑うと破壊力が凄い。
そこで遊んでいた子供が晴明をぼーっと見つめている。顔が若干赤い。……落ちたな。可哀想に、ガキがこんなもの見たら初恋奪われるに決まってる。残念だったなマセガキ、コイツは俺の(になる予定)だ。俺は大人だからわざわざそれを言わないけど。
顔の位置が近い晴明を横目で見て、おそらく初恋を奪われた子供を見下ろし笑った。
絶体絶命!ピンチ!な平安組を颯爽と抱き上げて助ける⭐️
🈵の場合
久しぶりに厄介な術を使う妖に苦戦していた。
相手は空を飛び、それに届くように戦った。
あれは地面に引きずり下ろせば勝てる。そう思っていたら油断した。ぐらり、バランスが崩れ、体が宙に放り出された。
やばい!!!どうにか着地……
「おや、大丈夫かい道満」
する前に嗅ぎなれた匂いが全身を包んだ。それは、余裕な笑みを浮かべる。
「んだよ!抱えるなクソが!」
「君を抱えるのは久しぶりだけど、あまり変わらないね。身長伸びてないんじゃない?」
「あ"ぁ!!??」
変わってるし、伸びとるわ!!!ぐんぐん伸びてるわ!!お前がデカすぎるんだよ。それに来年頃にはお前を抜かす予定だから覚悟しとけよ!!?
とここまで言うと舌を噛むので心の中で叫ぶ。
「ほら、よく見ときなよ」
そこからは早かった。五芒星が浮かび、俺が苦戦した相手を難なく退治した。
悔しさとイラつきが混じりドスドスと歩く。簡単に抱えられた。なんなんだよクソ。俺を軽々と持ち上げる力があの腕のどこにあるんだよ。あんな、細くて白い腕に。
……??何考えてんだ俺。
よくよく考えてみるとアイツと密着したのは久しぶりだった。
……柔らかかったな
桜が吹雪いて瞬きしたその間に消える⭐️
「桜が綺麗だねぇ」
なんつーか、一緒に消えて無くなりそう。
桜を慈しむ横顔を見てそんな感想を覚えた。別にコイツの横顔を見たくて見たわけじゃなくて、無駄に上背があるコイツは桜を見上げるときどうしても視界に入る。俺は桜を見ているだけなのだが、やはり桜と共に消えそうな男は視界の端を占領する。
「あぁ」
春の暖かい風が吹いた。桜の花弁がぶわっと舞い、咄嗟に目を瞑る。
「…あ、?」
目を開くと隣に居たはずの男は居なくなっている。本当に桜と一緒に散ってしまったのかと錯覚する 。そんな訳あるか?先程までそちらを見てなくても勝手に見えていたのに、風が吹いて花びらが舞った途端視界から消えた。
右を、左を見渡すが居ない。
消えそうだとは思っていたが本当に消えるなんて!
「せいめい、」
少し震えた声が出た。
小さく呟くと、下からくすくす、いつもの笑い声が聞こえた。下?見るとそこには身を小さくしてしゃがんだ晴明。クッソ、またこの男の術中にハマってしまった。わざわざ身をかがめ、気配を消していたコイツとそれに直ぐに気づけなかった自分に舌打ちをする。
「僕が桜に連れ去られて行ってしまうように見えた?」またくすくすと笑う。なんとも憎らしいほど楽しそうで。
「安心して、僕は消えてなくなるより大きなインパクト残したい派だから」
いんぱくと?また意味のわからない言葉を使う。まぁいい。勝手に消えてなくならないのであればそれで。
いつの間にか先程までの小さな体は自分よりも大きくなっている。よくよく考えればこの高い背丈がどこに消えるというのか。先までの自分の考えを否定しまた桜を見上げた。