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    ひな

    ひなげし

    DONE自鬼小説。白ちゃんとヒナギクの出会いのお話を書かせて頂きました。
    ※間接的ですが魘夢さん出てきますので、ご注意下さい。
    自鬼小説『猫に愛情、花冠』 忘れかけていた感覚。柔らかくって愛しくって、触れたらきっと逃げられちゃう。




    鬼である私の毎日は、特に変わり映えもせず繰り返す。夜が更けたら獲物を狩って花を咲かせて、偶にやって来る魘夢さんの相手をして。行為が終われば意識を手放し、引き戻し、何だかやけに身体が疲れていたり目覚めるまでの時間もまちまちだったり。辻褄の合わない事が増えたけれど、特段気にも留めず過ごしていた。今夜もまた、徒花を芽吹かせて満足気に苗床へと変えていた時だった。

    「あー! 待って! どこ行くのー!?」

    鈴を転がしたような女の子の声がする。
    花の間を縫って黒っぽい何かが素早く通り過ぎたので、前後左右を確認し神経を研ぎ澄ませ敵襲に備える。いつ脅威が降り掛かってもおかしくないのは身を持って知っているから。いつだったか、今のような獲物を仕留めて一番気の緩んだ時、鬼狩りに背後を取られ死に掛けた事がある。付け狙って機会を伺っていたのだろう、咲いた人間を手折るまさにその時、振り翳される刃に反応が一歩遅れた。あの日輪刀がひやりと頸椎を掠める感覚、今でも思い出しては身震いする。
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