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    可能性

    irikopippi

    PROGRESS12月の新刊サンプル❶です。
    原作軸・壮年・転生と様々な鯉月とご飯の話です。
    絶賛作業中につき、サンプルは変更の可能性があります。
    作業進捗として読んでくだされば幸いです。
    読んだよ、の一言が頂けるととてもとても励みになります!感想でも好きなページでもフレーズでも、お気軽にお聞かせください。
    ▶︎マシュマロ
     https://marshmallow-qa.com/irikopippi
    菜の花を食べる話 素足で踏む濡れ縁はまだ氷のように冷たい。庭の片隅へと寄せた雪は温度のある朝日の中で少しずつその険しい稜線を緩やかにしている。鯉登は一度グーンと伸びをして、寝巻きの袂に手を突っ込んだまま庭へと降りた。
     昨春にこの家で暮らし始め、夏には草が伸びるのを見て、秋には芋を掘り、冬は雪が覆うのを見た。ようやっと、もしくはあっという間に季節は一巡した。全くの平穏無事とは言えないにしろ、なんとか迎えた春だった。 金塊争奪戦後、何はなくとも、とりあえず身を置くために家を借りた。元は長く空き家になっていた借家だったが、月島が忙しい間を縫うようにして細々と手を入れたおかげで、住まうには申し分のない様子となった。だというのに、当の本人である月島はさっさと別の場所へと間借りを決めてきたという。
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    irikopippi

    PROGRESS12月の新刊サンプル❷です。
    原作軸・壮年・転生と様々な鯉月とご飯の話です。
    絶賛作業中につき、サンプルは変更の可能性があります。
    作業進捗として読んでくだされば幸いです。
    読んだよ、の一言が頂けるととてもとても励みになります!感想でも好きなページでもフレーズでも、お気軽にお聞かせください。
    ▶︎マシュマロ
     https://marshmallow-qa.com/irikopippi
    ファミレスの話 いらっしゃいませ!
     自動音声というのは、はっきりと聞き取りやすく、そして明るい。
     鯉登は二枚目のドアを強く押し開け、踏み込んで店内を見回す。カフェ[[rb:風 > ふう]]、といえば聞こえはいいが毒にも薬にもならないようなインテリアで統一されたファミリーレストラン。隅のソファー席、オレンジ色の丸いペンダントライトの下で月島が軽く手をあげてみせるのがみえた。鯉登は二週間ぶりに見るその姿に眉を顰める。心なし、痩せたような気がする。
    「すまない、待たせた」
     月島はグラスに半分残ったアイスコーヒーを端に寄せて、鯉登のスペースを作ってくれる。水滴が丸く机に跡を残している。
    「今、来たところですよ」
     月島の横に置かれたボストンバッグが目につく。随分年季が入っているようで、持ち手のコバが毛羽立っている。もう長いこと一緒に住んでいるというのに、見たことがなかった。
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    実山椒

    DONE剛一郎と命の日常話。
    なんとなく剛一郎→命

    ※命がやむを得なく自身のヘッドドレスのリボンを切ったということが感じ取れる記載があります。主に与えられた服は何があっても守り抜くだろう派がいらっしゃる場合はご理解の上ご一読下さい。
    ※諸事情により誤脱の確認ができていないため、非常に読みづらい可能性があります。
    辿るいつもの帰路。いつもの日常。
    級友が部活だ塾だとそれぞれの目的のため次の場所へと行くように、俺自身は世に何か困りごとや事件が起きてはいないかと、集中力を欠くことなく帰路を行く。この時間の見慣れた光景に異変があるとするならば、それが難解な事件の入り口になる可能性だって当然ある。なんせ、気が付けば異変に巻き込まれているなんてことのほうが、最近では日常になりつつあるのだから。
     ところどころひび割れたコンクリートや、最近開店したコンビニエンスストア、それからもう半年以上も貼られている「マロンを探しています」のポスター。ラミネートされていても色褪せきった写真には、記憶によれば栗毛の小型犬(おそらくはプードル)が赤色の首輪をし、舌を出していた。文字色はあせることなくそこに残り続け、はっきりと「女の子」「2才」「マロンと呼ぶと尻尾を振る」など書かれていた。よほど賢くなければ、何と呼んだところで犬は尻尾を振るものではないだろうかと思うのだが、これを作成した家族にとってはその行動が彼女を彼女づける一つの要素だったというわけだろう。
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    らんじゅ

    DOODLE🍅💊(🍅)
    甘えんぼモンスターの成獣が甘える小話
    この二人がどうこうなる可能性についてメモしていたらできました、おかしいですね……
    甘えんぼモンスターの成獣 なぜか、梅宮を見上げている。より正確に言うならば、すっかり瞳孔の開いた梅宮の向こうに広がる空を見上げている。雲が少なく、快晴と言っていい空模様だ。天気が良いとなんとなく元気な気がする。

    「なあ」
    「黙ってろよ、今状況を良い感じに噛み砕いてるところなんだからよ」
    「あ、そう」

     梅宮はぱちりと瞬きをひとつすると、また口を閉ざした。
     どうしてこんなことになっているのだったか、柊にはいまいち理解できていなかった。杉下の去った屋上で二人、畑と畑の間の小さなスペースで、柊は梅宮によって押し倒されている。つい数分前まで野菜の苗の育ちが良くてご機嫌の梅宮と、それを嬉しそうに見る杉下を眺めてベンチに座っていた。梅宮はともかく、杉下は自分の預かる衆の人間であり、以前から交流もあって柊にとっても大事な可愛い後輩なのだ。それが土汚れを頬につけてニコニコとしているもんだから、軽く拭ってやって、ついでに頭を撫でた。杉下の髪は柔らかく、指通りが良かった。
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