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    問題

    きのした

    DONEハッピーエンドですが、途中だいぶ暗い承花です。
    4×4。
    出会いから落ちてる承花、プロポーズからのハネムーンと、考えたらこのようになりました。承花の出会いとは、となると、この問題を避けて通れない私は二人をごたごたさせなければ気が済まないらしい。
    焦燥の夢と、愛し君へ 近頃僕は、承太郎の目を真っ直ぐ見れずにいる。承太郎は静かに怒っている。若い頃はわかりやすく感情を爆発させていた僕たちは、喧嘩もしたが仲直りも早かった。だけれど、大人ってやつは。相手が何に不満を持っているかもわかっているのに、それについて真正面から謝ることもできない。承太郎は、僕を愛しているから。だから、僕の対応が許せない。自分自身を可愛がれない僕を許せない。いつになったら観念するんだと、僕を締め上げるような視線から逃げて、同じ家に住んでいるというのにここひと月ほど、僕は承太郎を正面切って見ることができなかった。

     問題は、僕の服薬内容について。僕はあの旅で大怪我を負って、腹部から背中にかけて大きな傷がある。今でこそ健常者と変わらず動くことができるけれど、退院したての頃は、ハイエロファントに手伝って貰わなければ、僕は真っ直ぐ歩くことも困難だった。処方箋は、痛み止めを中心に、抗生剤や内臓機能を補助する薬が主で、随分と長いこと、僕はそれらのお世話になっている。そしてそれは、最近になって少し変わった。僕の健康状態について、本人以上に気にしている恋人が、把握できないようにこっそりと、僕は医師に相談していた。それがバレて、承太郎は怒り、僕らはギクシャクしている。何も事細かに些細な変化を報告しなくてもいいだろう、と思っていた僕には、承太郎に知られたくない動機があった。まさにそれは、僕らの間に鎮座する、本当に小さなひび。僕らの出会いから起因する、僕の傷。僕にとって勲章である腹のものではなく、額に残った、小さな小さなあと。
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