山岸風花
mitsuhitomugi
DONEクリスマスイブをみんなと過ごす風花のお話です。風花お誕生日おめでとう!お誕生日小説というわけではないですが、できれば誕生日当日に投稿したかったので間に合って良かったです。Re :Re :クリスマスだね 昇降口を抜けた先のアプローチに並ぶ桜を見ると、少し憂鬱な気分になる。春の盛りに見せた美しさは見る影も無く、殆どの葉を落とした枝は何とも寒々しい。落ちた枯葉さえ、用務員か掃除当番が回収してしまったのだろう。かつて活き活きと葉を茂らせていた証さえ残せず、まるで死んでしまったような桜の木の姿は、今の風花には自分たちの行く末を示唆しているみたいだとさえ思えた。
(次の春は来ない、か……)
今月の初めに綾時に告げられた言葉を思い出し、今日何度目かのため息を吐いた。そう遠くない内に訪れるという絶対的な滅びの運命。この桜の木が新たに花を咲かせることはもう二度とないのかもしれない、なんて考えると余計に気が重くなって、頭を振って無理矢理考えをかき消した。
6609(次の春は来ない、か……)
今月の初めに綾時に告げられた言葉を思い出し、今日何度目かのため息を吐いた。そう遠くない内に訪れるという絶対的な滅びの運命。この桜の木が新たに花を咲かせることはもう二度とないのかもしれない、なんて考えると余計に気が重くなって、頭を振って無理矢理考えをかき消した。
mitsuhitomugi
MAIKING風花の話 キリの良いところまで書けたら都度貼り付けていく予定巌戸台の駅前商店街、その一階に佇む年季の入った古本屋は、風花の密かなお気に入りスポットだった。
経営している老夫婦はいつも穏やかで優しいし、本の虫という名前も可愛らしい。何より品揃えが豊富で、学生の味方の参考書から随分前に絶版になった幻の本まで置いてある。
所狭しと並ぶどころか棚に入り切らずに机に平積みされている本もあって、それを見るのもまた楽しかった。自分の未知の世界がまだまだ広がっていることを実感すると、風花の心は高揚感でほんのりと色づくのだった。
(最近はついネットばかり見ちゃうけど、こういうのも大事だよね)
父親の影響で昔から機械に関心があった風花は、この年頃の女子にしては機械関係に詳しかった。学生寮の自室には基板やら愛用のはんだごてやらが置いてあるし、情報集めのために自前のノートパソコンを使うことはもはや日課になっている。やろうと思えば壊れたデータの修復やハッキングだってできてしまうし、実際にそのスキルを見込んで頼みごとをされたこともあった。
5216経営している老夫婦はいつも穏やかで優しいし、本の虫という名前も可愛らしい。何より品揃えが豊富で、学生の味方の参考書から随分前に絶版になった幻の本まで置いてある。
所狭しと並ぶどころか棚に入り切らずに机に平積みされている本もあって、それを見るのもまた楽しかった。自分の未知の世界がまだまだ広がっていることを実感すると、風花の心は高揚感でほんのりと色づくのだった。
(最近はついネットばかり見ちゃうけど、こういうのも大事だよね)
父親の影響で昔から機械に関心があった風花は、この年頃の女子にしては機械関係に詳しかった。学生寮の自室には基板やら愛用のはんだごてやらが置いてあるし、情報集めのために自前のノートパソコンを使うことはもはや日課になっている。やろうと思えば壊れたデータの修復やハッキングだってできてしまうし、実際にそのスキルを見込んで頼みごとをされたこともあった。