「はい、目的地に到着！　おつかれさん」

お客さんを無事送り届けて本日の護衛は完了。
密着護衛のせいかよくあることで、今回も俺を気にいってくれたらしいお客さんからの食事の誘いをいつものように断る。先払いで報酬は貰っているし、たった今依頼は終わったのだ。いつまでも留まる必要は無い。
何か言いたげなお客さんに確認書へサインしてもらい早々に離脱。

今から事務所に戻って……否、シフトがあるメンツ以外は帰り始める頃合いか。ならば明日提出しよう。
そう決めたところでポケットの携帯端末が震える。
画面に映る名前は遠方の婚約者。

「ムルソー？」
『グレゴール』

電話の向こうから落ち着き払った声が届き、護衛任務で張りつめていたままだった力がふっと抜ける。

无题（第一章）近夜时分，暴雨倾盆。

雨珠重重打在船篷上，混在滂沱的大雨中，劈里啪啦地响成一片。

喊了好几次船家也没有人应。戴着斗笠的船夫只顾着低头去挽沾满泥浆的裤脚，时不时抬起头朝着渡口张望。

好大的雨。仿佛万物的声音都消弭在这倾盖之下，凪诚士郎被钝重的雨声吵得有点发困。他用手去摁了摁耳屏，他面无表情地盯着视他如无物的船夫，心想这个人难道是没有听清吗？

“那个。”于是稍微提高了音量，凪诚士郎抬起一只手。“我要过河。”

不行。隐约之间终于听见船夫回复。他用力摇头，摆了摆手，一副不耐烦的样子，就连看都没看凪诚士郎一眼。

“不行不行，不开。”船夫的视线仍盯着空无一人的渡口。

为什么。心里自然地冒出这样的疑问，但又觉得再提问好麻烦。凪诚士郎心不在焉地顺着船夫的目光看去，只见被阴沉天色晕染成深灰色的河面水汽弥漫，临岸的地方停了一艘大船。