綾子
ena_476
MOURNING記憶が混濁した想い人との短い生活を描いた曽野綾子先生の小説「わが恋の墓標」の市茜パロ。手元になく記憶だけで書いているので色々と抜け落ちています。▼1980年前後、雪村が竹之内の所で下宿をはじめて二十五年近く。長命者に関する書籍を大量に保管している古い館は等々力渓谷にあった。そこに勤める四十半ばの使用人が雪村に語った昔話とは。
羊殺しが行われておらず、雪村が少し穏やかな設定です。
わが恋の墓標パロ長命者の労働をとりまく環境は、あまりに悪すぎる。
竹之内を相手に、雪村が白い髪を掻きむしって憤慨したのがはじまりだった。
公共の職業安定所の営業時間は夏も冬も午後六時まで。これじゃあ夜しか動けない俺たちオキナガは仕事に就くなと言ってるようなもんじゃねえか。オキナガの生活を守るのはあんたの専門なんだろ。
愚痴を聞いていた竹之内は新聞をめくりながら、顔も上げすに言った。
「それなら当事者から声をあげるべきだな。俺一人になにもかも頼られても困る」
少し頰をふくらませ雪村は押し黙った。
雪村は光明苑が長野に移ったのを機に社員寮付きの仕事に就いていたが、オキナガを嫌う先輩社員たちの度重なる嫌がらせに据えかね、とうとうその中の一人を殴り倒した対価に仕事と寮を無くして竹之内を頼ったのだ。それから二十年あまり、下宿生活は続いている。
9924竹之内を相手に、雪村が白い髪を掻きむしって憤慨したのがはじまりだった。
公共の職業安定所の営業時間は夏も冬も午後六時まで。これじゃあ夜しか動けない俺たちオキナガは仕事に就くなと言ってるようなもんじゃねえか。オキナガの生活を守るのはあんたの専門なんだろ。
愚痴を聞いていた竹之内は新聞をめくりながら、顔も上げすに言った。
「それなら当事者から声をあげるべきだな。俺一人になにもかも頼られても困る」
少し頰をふくらませ雪村は押し黙った。
雪村は光明苑が長野に移ったのを機に社員寮付きの仕事に就いていたが、オキナガを嫌う先輩社員たちの度重なる嫌がらせに据えかね、とうとうその中の一人を殴り倒した対価に仕事と寮を無くして竹之内を頼ったのだ。それから二十年あまり、下宿生活は続いている。
501megane
MOURNING綾子さんが亡くなる前の辛い時期。何かの冒頭。だけ涙の終わり残滓の味営団地下鉄という呼び方は、古い史料にしかもう存在しないだろう。ただし、どの新聞アーカイブを見ても営団地下鉄日比谷線の毒ガス散布事件という呼び方のほうが見出しが大きく載っている。
この路線で、折り重なるように人が死んだのか、と鳴瓢は想いを馳せる。東京メトロ日比谷線霞ヶ関駅では、電車が入線する前のぬるい風が吹いている。 スーツの上着をかかえたまま鳴瓢は北千住行きの電車に乗り込む。平日昼間でも混み具合はそこそこだった。終点までの乗車になるが鳴瓢は立ったまま吊り輪を握る。
足立区某所にて、マンションのタンクに農薬を投入しようとした殺人未遂の件を調査に行く。
毒、というキーワードと日常風景を地獄絵図に変える犯罪という意味で日比谷線の某事件が急に頭に連想されたのかもしれない。
675この路線で、折り重なるように人が死んだのか、と鳴瓢は想いを馳せる。東京メトロ日比谷線霞ヶ関駅では、電車が入線する前のぬるい風が吹いている。 スーツの上着をかかえたまま鳴瓢は北千住行きの電車に乗り込む。平日昼間でも混み具合はそこそこだった。終点までの乗車になるが鳴瓢は立ったまま吊り輪を握る。
足立区某所にて、マンションのタンクに農薬を投入しようとした殺人未遂の件を調査に行く。
毒、というキーワードと日常風景を地獄絵図に変える犯罪という意味で日比谷線の某事件が急に頭に連想されたのかもしれない。