蛍の光
Ordet_er_frit_
DONE[ホブモル]例のパブで年越しをするホブとモルフェウスのお話。なぜかコリント人もいます。むこうの年越しといえば花火、カウントダウン、そしてキス…。イギリスで年越しに歌うAuld Lang Syne(蛍の光)が二人にぴったりだなあ、と。
Auld Lang Syne 古き友、新しい年 なみなみとつがれたビールの泡が静かに弾ける。
その向こうから覗くのは百年に一度眺めてきた笑顔。ここはいつものパブ。だが、今日の日付は「その日」ではない。もっと言えば、今年は最後二桁が89で終わる年ではない。
あと数時間で、その最後の一桁も次の数字に歩を進めようとしている。パブは、友人たちと年越しをむかえようという客で賑わっていた。
「年越しなんてもう飽き飽きしただろう? ホブ・ガドリング」
モルフェウスが言うとホブはジョッキを置いて指先でトントンとテーブルを叩く。
「そうだなぁ、もうざっと——」
言いながら考えるように指を折っていく。
「その指一本が百年か?」
「まあそんなとこだ」
だがモルフェウスがじっと見つめているのを見て、おっと、というように人差し指を上げる。
2719その向こうから覗くのは百年に一度眺めてきた笑顔。ここはいつものパブ。だが、今日の日付は「その日」ではない。もっと言えば、今年は最後二桁が89で終わる年ではない。
あと数時間で、その最後の一桁も次の数字に歩を進めようとしている。パブは、友人たちと年越しをむかえようという客で賑わっていた。
「年越しなんてもう飽き飽きしただろう? ホブ・ガドリング」
モルフェウスが言うとホブはジョッキを置いて指先でトントンとテーブルを叩く。
「そうだなぁ、もうざっと——」
言いながら考えるように指を折っていく。
「その指一本が百年か?」
「まあそんなとこだ」
だがモルフェウスがじっと見つめているのを見て、おっと、というように人差し指を上げる。
百合菜
MAIKING遙か4・風千「雲居の空」第3章
風早ED後の話。
豊葦原で平和に暮らす千尋と風早。
姉の一ノ姫の婚姻が近づいており、自分も似たような幸せを求めるが、二ノ姫である以上、それは難しくて……
アシュヴィンとの顔合わせも終わり、ふたりは中つ国へ帰ることに。
道中、ふたりは寄り道をして蛍の光を鑑賞する。
すると、風早が衝撃的な言葉を口にする……。
「雲居の空」第3章~蛍3.
「蛍…… 綺麗だね」
常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。
短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。
「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」
半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。
「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」
1381「蛍…… 綺麗だね」
常世の国から帰るころには夏の夜とはいえ、すっかり暗くなっていた。帰り道はずっと言葉を交わさないでいたが、宮殿が近づいたころ、あえて千尋は風早とふたりっきりになることにした。さすがにここまで来れば安全だろう、そう思って。
短い命を輝かせるかのように光を放つ蛍が自分たちの周りを飛び交っている。明かりが灯ったり消えたりするのを見ながら、千尋はアシュヴィンとの会話を風早に話した。
「そんなことを言ったのですか、アシュヴィンは」
半分は穏やかな瞳で受け止めているが、半分は苦笑しているようだ。
苦笑いの理由がわからず、千尋は風早の顔を見つめる。
「『昔』、あなたが嫁いだとき、全然相手にしてもらえず、あなたはアシュヴィンに文句を言ったのですけどね」