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    過去

    toooocl8

    DONEぬかに(鰤)の100日アニバーサリーに便乗したSS。Xにもあげたもの。
    ある朝、エイトが目を覚めたときのこと。
    ※エイトの過去を少し捏造した描写あり。
    ※カップリング要素なし、使い魔二人が出てきます。
    Take my hand 早く大人になりたかった。
     大人になれば、自分の好きなところに行って、好きなことができると、信じていたから。
     先に貰われていく、歳の近い友達。新しい家族に不安もあるけれど、みんな嬉しそうな顔をして、きっと手紙を書くからと言って別れた。最初のうちは届いた手紙も、ぱったりと来なくなって、また、誰かが新しい家族に手を引かれていく。
     俺の番は、やってこない。
     誰か、この手を引いてくれる人は、いないのかな。
     そう思うのは、すごく、悲しくて、寂しくて。だから、そういう気持ちは出来るだけ、奥底に沈めていた。
     早く大人になりたかった。そんな悲しい気持ちで、誰かを待っているだけなんて、もう嫌だったから。


     目を覚ますと、うっすらと涙が浮かんでいた。なんだか、久しぶりに昔のことを思い出した気がする。天井は既に見慣れてきた屋敷のものだ。それをぼんやりと眺めていた。遠い昔のことのようで、つい、この間のことのような夢だ。胸の奥がぽっかりと空になったようで、大きく息を吐いた。
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    もちこの本棚📖

    DONE過去に幽霊けけシリーズの短編で書いたものを加筆修正しました。お題は「傘」をお借りしています。

    幽霊けけシリーズってなぁに?という方は本編後の暁人くんの元に幽霊として帰ってきたKKが再び一心同体状態で生活を共にしている、という設定が前提にあるおはなし、と解釈していただければ…!
    (過去作を読んでいただけると尚のこと嬉しいです………!)
    幽霊の相棒と、傘と ――スマートフォンのアラーム音が鳴る。
     うーん、と軽く唸りながら暁人がスマホに手を伸ばし、画面も見ずにアラーム解除をタップした。まだ眠り足りない暁人が再び眠りにつこうとすると、突然金縛りにあったように体が動かなくなり、目がバチッと開かれ閉じることが出来なくなる。ずしり、と体の上に何かの重さを感じ、恐る恐るソレの正体を確認…することはなく
    「けぇけぇ……金縛りで起こすのやめてくれる…?」
     寝起きの少し掠れた声で暁人が困った顔をした。
    『こうでもしないと起きないだろ、オマエ』
     金縛りを起こしたのは幽霊の相棒である、KKの仕業だった。霊体姿で暁人の上に胡座をかいて座っている。
    「大丈夫だよ……二度寝したって間に合うようにアラームセットしてるんだから……」
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    ue_no_yuka

    DONE奥原氏物語 前編

    ようみつシリーズ番外編。花雫家の先祖の話。平安末期過去編。皆さんの理解の程度と需要によっては書きますと言いましたが、現時点で唯一の読者まつおさんが是非読みたいと言ってくださったので書きました。いらない人は読まなくていいです。
    月と鶺鴒 いつか罰が当たるだろう。そう思いながら少女は生きていた。

    四人兄弟の三番目に生まれ、兄のように家を守る必要も無く、姉のように十で厄介払いのように嫁に出されることもなく、末の子のように食い扶持を減らすために川に捨てられることもなかった。ただ農民の子らしく農業に勤しみ、家族の団欒で適当に笑って過ごしていればそれでよかった。あとは、薪を拾いに山に行ったついでに、水を汲みに井戸に行ったついでに、洗濯を干したついでに、その辺の地面にその辺に落ちていた木の棒で絵が描ければそれで満足だった。自分だけこんなに楽に生きていて、いつか罰が当たるだろう。そう思いながら少女は生きていた。

    少女が十二の頃、大飢饉が起こり家族は皆死に絶えたが、少女一人だけが生き長らえた。しかし、やがて僅かな食べ物もつき、追い打ちをかけるように大寒波がやってきた。ここまで生き残り、飢えに苦しんだ時間が単楽的なこの人生への罰だったのだ。だがそれももういいだろう。少女はそう思い、冬の冷たい川に身を投げた。
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