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    4月

    あびこ

    DONE3年目4月に御影先生が退職してしまった世界線のマリィの話。
    ※マリィ=小波美奈子設定

    (前に生き霊というタイトルでツイートしてたネタを書き直したものです。)
    幻影と残像 四月四日。春休み明け初めての登校日、美奈子は学年が一つあがり、とうとうはばたき学園の最高学年となった。始業式を終えぞろぞろと講堂から出てきた生徒たちはエントランスホールに貼り出されたクラス発表の掲示を見て、想い人と同じクラスであることに内心ガッツポーズをしてみたり、親友とクラスが離れてしまったことを嘆いてみたり……とさまざまな反応を見せながら、各々新しい教室へと向かっていく。
     出席番号順に定められた自席に座った美奈子は、まだ馴染みの薄い教室内をぐるりと見渡した。今や自信を持って親友と呼べるみちるやひかるほどではないものの、昨年同じクラスで時折お昼を共にしたこともある仲の女子が数名クラスメイトに含まれていることが視認でき、美奈子は昨晩からずっと強張っていた気持ちがようやっとほどけていくのを感じた。小学校からカウントすれば、クラス替えなんてもう9度目のことなのに、毎度緊張してしまう。環境の変化は高揚感とセットで不安もいっしょに連れてくるからだ。その後、幼馴染が話しかけてくれたことですっかりいつもの調子を取り戻した美奈子は、もう間もなく聞こえてくるだろう元気な挨拶を期待してソワソワとその時を待っていた。
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    DONEなっぱっぱさんとの鋭百合同誌の再録です。(2022/4月)
    お題になった頭文字はLです。
    Limit マユミくんと付き合いだして──そういうことをするようになってから、わかったことがある。
    「んっ……マユミくん、しつこい……!」
     ぺち、とうなじを叩けば、ようやくマユミくんの唇が僕のからだから離れた。見えやしないからと許可した胸元とお腹はキスマークだらけだし、ずっと優しく触れられていた脇腹は未だにぞくぞくと背骨を震わせるし、繋ぎっぱなしだった手から溶け合う感覚でどこまでが僕なのかわからない。そう、マユミくんは前戯が長い。寝転んだ僕はしばらくからだを起こしていないから、マットレスにくっつきやしないかと心配になる。
    「……すまない、百々人」
    「……別に、いいけどさぁ……」
     そういえば始めて叱ったかも。マユミくんはしゅんとしていたけど、僕の二の句を受けたら嬉しそうな顔になって僕の唇に柔らかく噛み付いて舌をいれてくる。マユミくんが目を閉じて幸せそうに舌を絡めてくると、僕だって目を開いている気分ではなくなってしまうから視界を閉ざした。そうなるともう感じるのはマユミくんの舌の柔らかさと温度しかなくて、ひとつ感覚を遮断したことで耳が余計に音を拾う。
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