吸血鬼と鮫の人魚④ 攫われて目が覚めて、ぐちゃぐちゃになった俺の頭に残ったのは、このクソ砂の思い通りにはなりたくない!という想いだった。でも唯一の武器である暴力は通じないし、逃げ場もなく勝ち目もないこの状況で、無駄な足掻きは吸血鬼には逆効果だ。ならばアイツの望む、俺が楽しいと思うことを絶対にやらない!これしかないと思った。でも、実は決意したと同時に行き詰まっていた。
そもそも俺には楽しいことが何かわからない。それが「吸血鬼」であったのは先日のあの一瞬だけだ。今は逆に俺を悩ませる害悪でしかない。そうか、楽しいをしないってのは楽しくないをすればいいんだよな、なら目下俺の楽しくないはこの吸血鬼だ。クソ砂のしたいことを全部やれば、それは俺の楽しくないになるじゃねぇか!あれ、なんかおかしい?もういいや考えるの疲れた。アイツが俺に飽きるまで付き合ってやればいい。例え終わりが死だとしても、それはそれだ。
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