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    ビーサン

    あおいよ

    DONEネイビーさん夏編
    _暑い。避けようのない日差しは、意志とは関係なくじりじりと傾いてくる。流石に長袖のこのジャージはそろそろお役御免だろう、なんて、青緑の彼は心の中でぽつり。沸く汗を拭いながら歩みを進める。彼のお家は夏服を個人個人好きに引っ張り出してくるから、彼の半袖姿を見られるのはもう少し先になるはずだ。めんどくさがりだって?あながち間違いじゃない。ほら見て、飲み終わったジュースの缶、見事にナイスシュート。外したら格好悪いけれど、彼は滅多に外すことはない。
     …暑い。少し、チャックを下げる。……いやいやズボンじゃないよ、下げたのはジャージのチャック。ほら、彼が履いてるのは膝上のスパッツ。そして露出した足、そこにはぽつぽつ赤い跡…虫まで出てくる季節になった。いつの間に…って彼が思う頻度は少ない、なぜなら彼は小さな夏の訪れを見つける名人だから。…柔らかな温かみに雨が差したらそれは夏。蝉が歌うとそれは夏。すんっと鳴らした鼻に青さが飛び込んできたら、それは夏。こんなに素晴らしい夏が来たのが今回でたったの24回目だなんて、彼はにわかにも信じることが出来ない。頬を伝う汗も、憎みに憎めない。視界全体に広がる、爽やかで深みのある緑色も、夏の醍醐味。…彼は気づいてしまった、あの人はそう、こんな夏の葉っぱみたいな綺麗な目の色をしてたことに。……んふふっ、と小さい笑い声。_声の主の口角は、にんまりと上がっていた。
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