Gyoza_Hh2
DONEEM様(thread1920)主催の#アラスター気まぐれワンドロ・ワンライ企画
に参加したときのものです。
お題:人形
お題:人形「何です?これ」
「不気味でしょう?どうぞ持っていってください」
馴染みのブティックで、アラスターは見慣れない布の人形を見つけた。
その人形は、埃をすっかりかぶっており、妙な匂いまで放っている。
ボタンでできた目は黒くすすけていた。
「…」
真っ黒なボタンの目にアラスターの紅い瞳が反射する。
しばらくお互いを見つめた後、アラスターは、人形をぎゅうっと握りしめた。
☬
アラスターがブティックを出ると、ニフティがいた。
ニフティはアラスターの持っている人形を見るなり、それをひったくった。
「わ!ニフティ!何をしてるんですか!?」
アラスターはあわてて人形を取り返す。
急に手をひかれたニフティは、目に涙を浮かべていた。
その涙を見て、アラスターは我に返る。
1271「不気味でしょう?どうぞ持っていってください」
馴染みのブティックで、アラスターは見慣れない布の人形を見つけた。
その人形は、埃をすっかりかぶっており、妙な匂いまで放っている。
ボタンでできた目は黒くすすけていた。
「…」
真っ黒なボタンの目にアラスターの紅い瞳が反射する。
しばらくお互いを見つめた後、アラスターは、人形をぎゅうっと握りしめた。
☬
アラスターがブティックを出ると、ニフティがいた。
ニフティはアラスターの持っている人形を見るなり、それをひったくった。
「わ!ニフティ!何をしてるんですか!?」
アラスターはあわてて人形を取り返す。
急に手をひかれたニフティは、目に涙を浮かべていた。
その涙を見て、アラスターは我に返る。
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DONEEM様(thread1920)主催の#アラスター気まぐれワンドロ・ワンライ企画
に参加したときのものです。
お題:声/voice
お題:声/voice生前に一度だけ、「男らしくない声だ」と言われたことがある。
その時は、何を言われているのかよく分からなかったが、恐らく、侮辱をされたのだと分かった。眉をひそめながら、その場をやり過ごしたが、俺からすると、彼の声こそ、気持ちが悪い。喉はタバコに犯され、本当に同じように声を生業にしている人間とは思えなかった。出てくるトークも、つまらない。彼のラジオ放送の際、自分は、爪を見ていたという記憶しかない。
しかしーーー。
しかし、彼の悲鳴だけは本当に素晴らしかった。
ひとの人生の最後の瞬間を見届ける時、非常に満たされた気持ちになる。どんなにつまらない人間でも、断末魔だけは、心地よく脳髄に響いてくれた。
☬
アラスターは、思い出を頭のよそにやり、目の前のラジオブースのミキサーをいじり始めた。自分の声は好きだ。そして、それ以上にラジオを通したノイズ混じりの声が好きだ。
1255その時は、何を言われているのかよく分からなかったが、恐らく、侮辱をされたのだと分かった。眉をひそめながら、その場をやり過ごしたが、俺からすると、彼の声こそ、気持ちが悪い。喉はタバコに犯され、本当に同じように声を生業にしている人間とは思えなかった。出てくるトークも、つまらない。彼のラジオ放送の際、自分は、爪を見ていたという記憶しかない。
しかしーーー。
しかし、彼の悲鳴だけは本当に素晴らしかった。
ひとの人生の最後の瞬間を見届ける時、非常に満たされた気持ちになる。どんなにつまらない人間でも、断末魔だけは、心地よく脳髄に響いてくれた。
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アラスターは、思い出を頭のよそにやり、目の前のラジオブースのミキサーをいじり始めた。自分の声は好きだ。そして、それ以上にラジオを通したノイズ混じりの声が好きだ。
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DONEEM様(thread1920)主催の#アラスター気まぐれワンドロ・ワンライ企画に参加したときのものです。
52min「お題:創造/creation」
お題:創造/creation創造とは退屈から生まれるらしい。
しかし、退屈にも限度があるというものだ。
アラスターは、ラジオをつけ、コーヒーを淹れた。
そして、新聞を読みながら簡単な朝食をとる。
これが、アラスターのモーニングルーティンだ。
朝食は、普段なら、新聞屋だったり、家の裏で捕れた鹿だったりするが、今日は獲物を狩るにはなんとなく気分が乗らない。妙に怠い身体を引きずるようにしながら、ひとまずトーストを焼いた。ザクザクと音を立てながらトーストを食べると、新聞が汚れていく。
新聞に載っているのは、どこぞのCEOが新商品を出したとか、地獄の新しい店がオープンしたとか。魅力的なニュースはなさそうだ。
ラジオから流れる曲も自分の死後のものが多く、耳障りだ。パーソナリティのトークもあまり面白くない。
1409しかし、退屈にも限度があるというものだ。
アラスターは、ラジオをつけ、コーヒーを淹れた。
そして、新聞を読みながら簡単な朝食をとる。
これが、アラスターのモーニングルーティンだ。
朝食は、普段なら、新聞屋だったり、家の裏で捕れた鹿だったりするが、今日は獲物を狩るにはなんとなく気分が乗らない。妙に怠い身体を引きずるようにしながら、ひとまずトーストを焼いた。ザクザクと音を立てながらトーストを食べると、新聞が汚れていく。
新聞に載っているのは、どこぞのCEOが新商品を出したとか、地獄の新しい店がオープンしたとか。魅力的なニュースはなさそうだ。
ラジオから流れる曲も自分の死後のものが多く、耳障りだ。パーソナリティのトークもあまり面白くない。
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DONEEM様(@thread1920)主催#アラスター気まぐれワンドロ・ワンライ企画に参加した時のものです。
お題:植物園/botanical garden
お題:植物園/botanical garden「植物をホテルにたくさん置きましょう!お花をみるときっと罪人のみんなも癒されると思うの!」
ホテルのオーナーであるプリンセス・チャーリーの一声から、「ハズビンホテル・植物園化プロジェクト」が始まった。
チャーリーは、はりきって地獄中の花屋に注文をかけている。
しかし、彼女は大事なことを忘れている。
ここは地獄だ。とげや毒のある植物や造花ばかりが存在している。果たしてそれらで癒される心が罪人に残されているのか。ーーー地獄生まれのチャーリーは、とげのない、現世にある花たちを知らない。癒しというよりは、妖艶な美しさや危険な美しさを孕む花々しか彼女は知らない。チャーリーは、息巻いて、癒しではない、そういった、地獄基準で「うつくしい」花を大量に注文しているのをよそに、アラスターは自室へと向かった。
1628ホテルのオーナーであるプリンセス・チャーリーの一声から、「ハズビンホテル・植物園化プロジェクト」が始まった。
チャーリーは、はりきって地獄中の花屋に注文をかけている。
しかし、彼女は大事なことを忘れている。
ここは地獄だ。とげや毒のある植物や造花ばかりが存在している。果たしてそれらで癒される心が罪人に残されているのか。ーーー地獄生まれのチャーリーは、とげのない、現世にある花たちを知らない。癒しというよりは、妖艶な美しさや危険な美しさを孕む花々しか彼女は知らない。チャーリーは、息巻いて、癒しではない、そういった、地獄基準で「うつくしい」花を大量に注文しているのをよそに、アラスターは自室へと向かった。
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DONE56minお題:手紙/letter
EM様(@thread1920)主催の#アラスター気まぐれワンドロ・ワンライ企画
のものです。
お題:手紙/letterアラスターの部屋には暖炉がある。
パチパチと音を立てる暖炉の火を横目に、アラスターはペンを手に取った。
毎晩、机に向かって手紙を書こうとすること。
それが、アラスターの就寝前の日課である。
彼は、仕事柄、文字を書くことが多い。
ラジオスターである彼の筆から綴られる言葉は、普段なら、ユーモアとセンスにあふれているが、目の前の手紙には、在り来りな言葉ばかりが並んでいる。
「母へ」
手紙は、いつも、この書き出しから始まる。
「お元気ですか。
私は、相変わらず、ラジオ司会者として、元気に働いています。」
ここまで書いた後、アラスターはいつも、便箋をくしゃくしゃにしてしまう。今回だってそうだ。アラスターは、皺だらけになった便箋を、ゴミ箱に入れることもせず、机の下に放り投げた。そして、机の引き出しから、新しい便箋を取り出す。
1296パチパチと音を立てる暖炉の火を横目に、アラスターはペンを手に取った。
毎晩、机に向かって手紙を書こうとすること。
それが、アラスターの就寝前の日課である。
彼は、仕事柄、文字を書くことが多い。
ラジオスターである彼の筆から綴られる言葉は、普段なら、ユーモアとセンスにあふれているが、目の前の手紙には、在り来りな言葉ばかりが並んでいる。
「母へ」
手紙は、いつも、この書き出しから始まる。
「お元気ですか。
私は、相変わらず、ラジオ司会者として、元気に働いています。」
ここまで書いた後、アラスターはいつも、便箋をくしゃくしゃにしてしまう。今回だってそうだ。アラスターは、皺だらけになった便箋を、ゴミ箱に入れることもせず、机の下に放り投げた。そして、机の引き出しから、新しい便箋を取り出す。