砂色 koiSunairo
DONE #けだふれ0904_アフター#けだふれ0904_お題
けだふれ専用新婚さんお題シートより
新居、不意打ち
自分たちでも可笑しくなって時々笑いだしてしまいながら、アーサーとカインは朝から片時も離れずにいた。互いに必ずどこかが触れあっていなければならないという決まりのようなものが自然にできて、とにかく頑なにそれを守っている。カインが料理をする間アーサーはカインの後ろにずっとくっついていたし、食べる間も隣に掛けて腕と腕がふれあう距離にいた。片付けの間も例外ではなく、あちこちに水を飛ばしながら腕を組んで皿を洗った。
ふた手にわかれて家事を片付けたほうが効率がいいのはわかっているし、こんなことが誰かに知られたらきっと恥ずかしい思いをするだろうが、誰に憚ることもない二人きりの家だ。どちらもやめようなんて言い出さず、午後にはなかば意地になってきて取るに足らない遊びを続けた。魔法を最小限しか使えないのは暗黙の了解で、ときには四苦八苦しながらまるで小さな子供のようだ。
2064ふた手にわかれて家事を片付けたほうが効率がいいのはわかっているし、こんなことが誰かに知られたらきっと恥ずかしい思いをするだろうが、誰に憚ることもない二人きりの家だ。どちらもやめようなんて言い出さず、午後にはなかば意地になってきて取るに足らない遊びを続けた。魔法を最小限しか使えないのは暗黙の了解で、ときには四苦八苦しながらまるで小さな子供のようだ。
砂色 koiSunairo
DONE【カイアサ+ラスティカ】アニバ後だいぶ回復して元気なカインと執事をしたいアーサー
※魔女姿のティカさんはメイドをしたいです
#けだふれ0904_アフター
即興曲 既に傷はほぼ塞がったものの、生命力そのものが底をつきかけたカインの療養は、件の誰も知らない一夜から半月が過ぎた今でも続いていた。カイン自身の実感では、よほどの無理さえしなければ怪我をする以前の生活に戻れるほどに回復しているのだが、フィガロにはまだ日中もベッドで過ごすように言われている。正直なところ、カインは既にうんざりしている。仲間たちがいろいろな気晴らしを持ってきてくれるが、生来の気質というものがあるのだ。カードゲームに何時間も興じるより、一周だけでも魔法舎の庭を走った方がカインの気は晴れるだろう。
それに、きっと忙しくしているアーサーが心配だった。大切な会議を控え、彼はきっと無理をしているに違いなかった。それにひきかえ自分はというと十分に回復した体で一日中寝転んで、何の役にも立つことができない。考えても仕方がないのはわかっているが、その不甲斐なさに幾度もため息が出た。
5795それに、きっと忙しくしているアーサーが心配だった。大切な会議を控え、彼はきっと無理をしているに違いなかった。それにひきかえ自分はというと十分に回復した体で一日中寝転んで、何の役にも立つことができない。考えても仕方がないのはわかっているが、その不甲斐なさに幾度もため息が出た。
砂色 koiSunairo
DONE【カイアサ+フィガロ】片恋と若者たちと古い魔法使い
殿下がフィガロ先生に騎士さんを好きになってしまったみたいで苦しいとこぼしてしまったんですが、先生はまったくいつもと同じ調子で
「消すかい?」
っておっしゃいました。
#けだふれ0904_作品
中庭の種++ ++
「消すかい?」
フィガロの声音はいつも通りだった。捨て去るようでもなく、丁寧過ぎることもなく、さりげないままだ。
「消す?」
アーサーはその意味がつかめず、言われたまま訊ね返した。
「うん。患者さんにね、気持ちを消してくれって頼まれたことが何度かあったんだ」
「消すとどうなるのですか?」
「忘れるよ。綺麗に」
「気持ちを?」
「そう。消してあげると、みんな、楽になったとかすっきりしたとか言ってくれてたよ。消すのもそう難しくないし、痛くも辛くもないしね。だけど」
フィガロは薬棚からいくつかの瓶を取り出すとテーブルの上に並べていった。
「少し、記憶は変えなくちゃいけない」
「記憶……」
「うん。特に恋愛絡みだとね。記憶がそのままだと思い出してまた好きになっちゃって、結局繰り返しになるんだよ」
3321「消すかい?」
フィガロの声音はいつも通りだった。捨て去るようでもなく、丁寧過ぎることもなく、さりげないままだ。
「消す?」
アーサーはその意味がつかめず、言われたまま訊ね返した。
「うん。患者さんにね、気持ちを消してくれって頼まれたことが何度かあったんだ」
「消すとどうなるのですか?」
「忘れるよ。綺麗に」
「気持ちを?」
「そう。消してあげると、みんな、楽になったとかすっきりしたとか言ってくれてたよ。消すのもそう難しくないし、痛くも辛くもないしね。だけど」
フィガロは薬棚からいくつかの瓶を取り出すとテーブルの上に並べていった。
「少し、記憶は変えなくちゃいけない」
「記憶……」
「うん。特に恋愛絡みだとね。記憶がそのままだと思い出してまた好きになっちゃって、結局繰り返しになるんだよ」
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DONE【カイアサ】#けだふれ0904_作品
多忙を極めているアーサーと窓から訪ねてくるカイン
ひかり アーサーはここのところグランヴェル城から出られずにいた。早朝から会議が続き、その合間に来客の謁見があり、さらにその隙間に執務室で書類仕事を行うという忙しさだ。寝室でゆっくり眠ったのはいつだったか、思い出せない日々が続いている。ここのところ、しばらく保留になっていた案件が急に動き始めたのだ。それは喜ばしいことだったのだが、それが偶然いくつも重なってしまった。
「一件片付いてから順繰り次が動き出せばよかったのですが」
「仕方がないよ、ドラモンド。滞ったままよりずっといい」
「しかし殿下、どうかお食事だけでもきちんととっていただきませんと」
「わざわざお前が持ってきてくれたのか」
「他の者では頼りになりません。昨日も一昨日も昼食をお忘れでした」
3111「一件片付いてから順繰り次が動き出せばよかったのですが」
「仕方がないよ、ドラモンド。滞ったままよりずっといい」
「しかし殿下、どうかお食事だけでもきちんととっていただきませんと」
「わざわざお前が持ってきてくれたのか」
「他の者では頼りになりません。昨日も一昨日も昼食をお忘れでした」