ナカマル
DONE⑤ 奏真 様より「もう一回好きって言ってもいいかな…と悩んでいるような二人」成人済み、一度別れた九莇 #ナカマル水産SSスケブ #ナカマルのクアザその小指に誓え◇◆──────────
「オレと、お別れしてください」
消えいるような声で、しかし目線は真っ直ぐこちらを向けて、九門はそう告げた。莇は、縋ることも反論することもなく、「わかった」と返した。そのときに九門が浮かべた安堵の表情が、今でも忘れられない。
九門と莇が「友達」に戻ってから、もう少しで四年が過ぎようとしている。
◇
莇の高校卒業に伴ってルームシェアをすると言い出したとき、劇団の仲間はみな九門と莇の「仲良しコンビ」ならきっと上手くやっていけるだろう、くらいの反応しか示さず、さまざまな言い訳を考えていた二人は拍子抜けした。
念願の二人暮らしを始めるに際して、最初に話し合って、生活上の約束を決めていった。まず炊事、洗濯、掃除、その他諸々の家事は交代でこなすことにして、ホワイトボードを使って分担表を作った。それから互いの学校や稽古、アルバイトの予定などはスケジュールアプリを共有して把握できるようにした。
5670「オレと、お別れしてください」
消えいるような声で、しかし目線は真っ直ぐこちらを向けて、九門はそう告げた。莇は、縋ることも反論することもなく、「わかった」と返した。そのときに九門が浮かべた安堵の表情が、今でも忘れられない。
九門と莇が「友達」に戻ってから、もう少しで四年が過ぎようとしている。
◇
莇の高校卒業に伴ってルームシェアをすると言い出したとき、劇団の仲間はみな九門と莇の「仲良しコンビ」ならきっと上手くやっていけるだろう、くらいの反応しか示さず、さまざまな言い訳を考えていた二人は拍子抜けした。
念願の二人暮らしを始めるに際して、最初に話し合って、生活上の約束を決めていった。まず炊事、洗濯、掃除、その他諸々の家事は交代でこなすことにして、ホワイトボードを使って分担表を作った。それから互いの学校や稽古、アルバイトの予定などはスケジュールアプリを共有して把握できるようにした。
ナカマル
DONE④ 匿名希望 様より 「熱中症ネタ」※後味あまりよくない
#ナカマル水産SSスケブ
#ナカマルのクアザ
朦朧ランデブー◇◆──────────
莇の身体が、ぐらり、と傾いた。
「お、おい! 大丈夫か⁉︎」
九門はすかさず、その身体を支える。
「は、はは…ありがとう…僕は大丈夫だよ、大丈夫…」
真夏の日中にもかかわらず、天鵞絨町の駅前で披露しているストリートアクトには、多くの観衆が集まっている。彼らは九門と莇の即興演技を息をのんで見つめた。
九門は活発な青年、莇は病弱な青年の役、ということしか決まっておらず、あとの設定は演技をしながら考えて、台詞を繋げていく。暑さのせいか莇の頬は普段より赤く、少し息切れしているようだが、それがかえって身体の弱い者が急激に運動をして疲労が出たときの様子に似ていて、劇のリアリティが増していた。
1932莇の身体が、ぐらり、と傾いた。
「お、おい! 大丈夫か⁉︎」
九門はすかさず、その身体を支える。
「は、はは…ありがとう…僕は大丈夫だよ、大丈夫…」
真夏の日中にもかかわらず、天鵞絨町の駅前で披露しているストリートアクトには、多くの観衆が集まっている。彼らは九門と莇の即興演技を息をのんで見つめた。
九門は活発な青年、莇は病弱な青年の役、ということしか決まっておらず、あとの設定は演技をしながら考えて、台詞を繋げていく。暑さのせいか莇の頬は普段より赤く、少し息切れしているようだが、それがかえって身体の弱い者が急激に運動をして疲労が出たときの様子に似ていて、劇のリアリティが増していた。
ナカマル
DONE③ みやき 様より 「男2人、密室、真夏の日。何も起きないはずがなく…(健全)」#ナカマル水産SSスケブ
#ナカマルのクアザ
Pandora◇◆──────────
「九門くん、莇くん! 今、手空いてる?」
「空いてるよ! どしたの、カントク?」
「悪いんだけど、そこにある段ボール箱を倉庫に運んでもらえないかな?」
監督が指差したのは、人が一人入れそうなくらい大きな段ボール箱だった。
「しばらく使わない小道具が入ってるから、壊さないように気をつけてね」
「わかった」
「莇いくよー、せぇの!」
十分に力のある男二人がかりでも、持ち上げるのに少し手間取った。二つか三つに分けたほうがいいんじゃないか、と莇は思った。
「いっちに、さんし、にーにっ、さんし」
九門の掛け声のお陰で、二人は息を合わせて重い段ボール箱を移動させる。前を持つ九門は、後ろ向きに歩かねばならない。後ろを持つ莇は、箱が大きすぎて前が見えない。側から見るとなんとも危なっかしい光景に違いない。
2632「九門くん、莇くん! 今、手空いてる?」
「空いてるよ! どしたの、カントク?」
「悪いんだけど、そこにある段ボール箱を倉庫に運んでもらえないかな?」
監督が指差したのは、人が一人入れそうなくらい大きな段ボール箱だった。
「しばらく使わない小道具が入ってるから、壊さないように気をつけてね」
「わかった」
「莇いくよー、せぇの!」
十分に力のある男二人がかりでも、持ち上げるのに少し手間取った。二つか三つに分けたほうがいいんじゃないか、と莇は思った。
「いっちに、さんし、にーにっ、さんし」
九門の掛け声のお陰で、二人は息を合わせて重い段ボール箱を移動させる。前を持つ九門は、後ろ向きに歩かねばならない。後ろを持つ莇は、箱が大きすぎて前が見えない。側から見るとなんとも危なっかしい光景に違いない。
ナカマル
DONE② なん様リクエスト「どっちかのクラスメイトのモブ男視点」#ナカマル水産SSスケブ
#ナカマルのクアザ
LOVEが止まらない!◇◆──────────
「なぁなぁ、お前、最近彼女ができたって本当?」
クラスメイトの兵頭九門が、いきなりそう話しかけてきた。俺は、なぜお前が知っているのかと聞き返そうとしたが、九門が再び口を開くほうが早かった。
「しかも、幼なじみなんでしょ⁉︎」
「ま、まぁ…幼なじみっつーか、小学校が同じだったんだけど…」
「ってことはさ、元友達ってことだろ?」
ものを訊ねるときに、語尾が上がる癖があるのだな、と思った。
俺に最近彼女ができたのは本当のことで、その子が九門のいう通り「元友達」なのも事実だ。ただ、俺は小学生の頃から彼女のことが好きだった。
「…何か聞きたいことでもあるのかよ」
「大いにある…」
俺が小声で返したのを察してか、九門も声を顰めた。俺は彼女から、「付き合っていることは他の友達には内緒にしようね」と約束されている。だからあまり大きな声で言いふらされたくないのだ。
2097「なぁなぁ、お前、最近彼女ができたって本当?」
クラスメイトの兵頭九門が、いきなりそう話しかけてきた。俺は、なぜお前が知っているのかと聞き返そうとしたが、九門が再び口を開くほうが早かった。
「しかも、幼なじみなんでしょ⁉︎」
「ま、まぁ…幼なじみっつーか、小学校が同じだったんだけど…」
「ってことはさ、元友達ってことだろ?」
ものを訊ねるときに、語尾が上がる癖があるのだな、と思った。
俺に最近彼女ができたのは本当のことで、その子が九門のいう通り「元友達」なのも事実だ。ただ、俺は小学生の頃から彼女のことが好きだった。
「…何か聞きたいことでもあるのかよ」
「大いにある…」
俺が小声で返したのを察してか、九門も声を顰めた。俺は彼女から、「付き合っていることは他の友達には内緒にしようね」と約束されている。だからあまり大きな声で言いふらされたくないのだ。
ナカマル
DONE① 老婆 様より「水泳の授業前に更衣室で莇くんの落とし物を拾った九門くん」#ナカマル水産SSスケブ
#ナカマルのクアザ
真夏の大罪 今日の最高気温は、三十五度に達するらしい。
そんなのほぼ体温じゃん、と九門は思う。いくら夏生まれでも、暑いものは暑い。
「クソ暑いな…」
隣を歩く莇が悪態をつく。日傘で影になっていても、顔を顰めているのがわかる。
「ほんと、あっついね〜…」
暑いけれど、九門は嬉しかった。莇と「暑い」を共有できていることが。兵頭九門という男は、活発な印象とは裏腹にナイーブな一面があり、些細なことにも傷つきやすい心を持っているが、それは小さなことでも幸せを感じることができるという長所でもあった。
「一年は今日、水泳何時間目?」
「一時間目」
「えーっ! いいなぁ」
「いいだろ」
莇が得意げに笑った。
「じゃ、また昼に」
「じゃあね!」
3196そんなのほぼ体温じゃん、と九門は思う。いくら夏生まれでも、暑いものは暑い。
「クソ暑いな…」
隣を歩く莇が悪態をつく。日傘で影になっていても、顔を顰めているのがわかる。
「ほんと、あっついね〜…」
暑いけれど、九門は嬉しかった。莇と「暑い」を共有できていることが。兵頭九門という男は、活発な印象とは裏腹にナイーブな一面があり、些細なことにも傷つきやすい心を持っているが、それは小さなことでも幸せを感じることができるという長所でもあった。
「一年は今日、水泳何時間目?」
「一時間目」
「えーっ! いいなぁ」
「いいだろ」
莇が得意げに笑った。
「じゃ、また昼に」
「じゃあね!」