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    ナカマル

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    ナカマル

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    ② なん様リクエスト「どっちかのクラスメイトのモブ男視点」
    #ナカマル水産SSスケブ
    #ナカマルのクアザ

    LOVEが止まらない!◇◆──────────

    「なぁなぁ、お前、最近彼女ができたって本当?」
     クラスメイトの兵頭九門が、いきなりそう話しかけてきた。俺は、なぜお前が知っているのかと聞き返そうとしたが、九門が再び口を開くほうが早かった。
    「しかも、幼なじみなんでしょ⁉︎」
    「ま、まぁ…幼なじみっつーか、小学校が同じだったんだけど…」
    「ってことはさ、元友達ってことだろ?」
     ものを訊ねるときに、語尾が上がる癖があるのだな、と思った。
     俺に最近彼女ができたのは本当のことで、その子が九門のいう通り「元友達」なのも事実だ。ただ、俺は小学生の頃から彼女のことが好きだった。
    「…何か聞きたいことでもあるのかよ」
    「大いにある…」
     俺が小声で返したのを察してか、九門も声を顰めた。俺は彼女から、「付き合っていることは他の友達には内緒にしようね」と約束されている。だからあまり大きな声で言いふらされたくないのだ。
    「放課後、マック奢ってくれんなら、相談乗ってやってもいいぜ」

     そして放課後、山盛りのポテトを前に、九門は真剣な顔をしていた。──指先は塩だらけだが。
    「…ってことはさ、小学校の時から片思いしてて、中学から離れて、今オレら高3じゃん? いち、に、さん…五年ちょっとの間はどうしてたの?」
    「どうって…普通に疎遠だったけど」
    「その間もずっと好きでいたの?」
    「お、おう…まぁ…」
     とんだ羞恥プレイである。しかしてりやきチキンフィレオまで奢ってもらってしまったからには、こいつの相談を聞いてやらねばならない。高校生の三七〇円は大金なのだ。
    「九門お前さ、質問には答えるけど、目的を言えよな」
    「あ…そっか、ごめん!」
    「まぁ大方、お前の好きな女の子がお前のことを友達としか思ってない、っつーことだろうけど」
     コーラをストローで吸っていた九門が、ゴボ! と音を立てて盛大に咽せた。俺は紙ナプキンを大量に差し出す。
    「ゴホッ! ゴホッ! ありがとゔ、あ〜、器官に入った、ゲホッ」
    「当たり?」
    「ま、まぁ、おおむね? あらかた? ほぼ、当たり…ゲホッ」
    「っかー、そんなこったろうと思った」
     九門がまだ咽せ続けているので、俺は質問責めのせいで手つかずだったハンバーガーを頬張った。相変わらず美味いが、男子高校生の口ならものの数分で無くなってしまう。
    「ハンバーガー、ごち。で、あと聞きたいことは?」
    「あー、うん、あのさ、こっちは向こうのことを好きなんだけど、向こうは友達としか思ってないって状態でさ、告白とかすんの、怖くない?」
     怖くなんかねーよ、と強がろうと思ったが、彼女に気持ちを告げたとき、手も膝も声も震えてしまったことを思い出した。
    「怖いに決まってんだろ」
    「じゃ、じゃあなんで」
    「これ以上耐えられなかったからだよ」
    「何に?」
    「隠すことに。そのー、気持ちを?」
     九門は口を開けて、目を大きく見開いた。
    「な、なるほど〜⁉︎」
    「いや、リアクションそれかよ」
     俺のツッコミが聞こえなかったのか、九門は頷きながら「なるほど、なるほどね」と何度も繰り返した。
    「言わずにはいられなかったと、そーいうこと⁉︎」
    「そ、そーだよ。つまり耐えらんねーくらいに達してないってことは、お前の気持ちは俺の彼女に対する愛のデカさと比べたらもうこんな、こーんな、ミジンコみてーな」
    「いやいやいやいや、そんなわけない! オレのあの子への気持ちはお前と同じくらい、いやお前の数十倍、こーんな、いやもっと」
    「誰への気持ちだよ」
    「へ⁉︎」
     俺と九門がくだらない言い争いを始めたとき、三人目の声が聞こえた。九門は両腕を大きく広げたまま、声のしたほうを見た。
    「莇!」
     莇、と呼ばれたのは俺たちと同じ制服を着た、背の高い生徒だった。同級生ではなさそうだから、つまり彼は二年か一年、ということになるが、歳下であるなんて言われなければわからないくらい、大人びた顔立ちだった。
     「莇」が現れた途端、九門は元々大きな瞳を目一杯開いて、もうそいつのほうしか見ていない。
    「なんでいるの⁉︎ 誰かと一緒⁉︎」
    「いや、一人。お前今日一緒に帰れねーっていうから…あ、ども」
     一応「センパイ」である俺に、初対面の「莇」君はペコリと頭を下げた。その間も九門の目線はずっと彼へ向いていた。
     外から見るとわかるものだな、と思った。俺も彼女を見るとき、こんな感じなのだろうか。尻尾を振っている犬のような。なんとも格好が悪く、情けなく、しかし世界一幸福そうな。
    「わり、九門。そろそろデートの時間だから、俺行くわ」
    「デッ⁉︎」
    「あー‼︎ 了解! 付き合わせてごめん! ま、また明日な!」
    「おう。莇君? この席使いなよ」
    「えっ、あ、どうも…」
     俺は席を立った。柄ではないが、キューピッドにでもなった気分だ。しかしながらあそこまではっきりと態度に出している…というか漏れ出しているのに、「莇君」は気づかないのだろうか。

     明日の朝、九門に会ったら、からかってやろうと思う。

    ──────────◆◇ おわり
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    ナカマル

    DONE #九莇版ワンドロワンライ一本勝負 ( @kuaza_dr_wi_1 )様のお題「犬」「イタズラ」「スニーカー」をお借りしました。大変遅刻してしまいすみません…………
    く(自覚あり)→←あざ(自覚なし)だと思って読むと楽しいかもしれない
    ⚠️くもんくんが🏍を購入する捏造要素あります
    #ナカマルのクアザ
    お前と居るとお題「犬」「イタズラ」「スニーカー」

    ◇◆──────────

     九門が靴を買いたいと言ったので、俺たちは地下一階からエスカレーターに乗った。売り場のフロアは七階だから、ここからは少し遠い。けれど、奥のエレベーターはどうせ混んでいるだろう。
     俺は九門の二段後ろに立った。すると流石に九門の方が目線が高くなる。紫色の髪と、ピアスのぶら下がった耳が見えた。
    「買うものあんなら、俺のこと待ってないで行ってきてよかったのに」
    「えっ、全然待ってないよ!」
     話しかけると、九門はすぐに振り返って目を合わせてきた。その振り返り方があまりに急なので、パーカーのフードが一瞬宙に浮いた。

     俺のコスメフロアでの買い物は、短くても小一時間はかかる。フロア中の商品を買い占めることなんてできないから、じっくりと吟味しなければならないのだ。待たせてしまうのは悪いと思うが、こればかりは仕方がない。
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