noa/ノア
vẽ nguệch ngoạc[慕扶と風南✈] 玄真と南陽のダブルペア、空港で出会うの巻。マリモさんのゲリラ豪雨にやられた慕情機長の絵から。
「くそッ……なんでよりによって……!」
唸るように罵る慕情を、扶揺はちらりと見た。
慕情の周りに漂う空気は、殺気などというマイルドな言葉では物足りないほどだ。玄真航空の者なら半径百メートルには近づかないだろう。
「あの、機長、よかったら使ってください」
扶揺が差し出したタオルを慕情は唸りながら受け取った。
運が悪かったとしか言いようがない。
この空港は飛行機から空港の建物まで外を歩かねばならない。それなのに、操縦を終えた二人が降機した途端に、大粒の雨が猛烈な勢いで降り出したのだ。まさに突然のゲリラ攻撃に襲われたかのようだった。傘を出す間もなく駆けぬけた二人が建物に着いた時には、二人とも見事に全身ずぶ濡れになっていた。
2335唸るように罵る慕情を、扶揺はちらりと見た。
慕情の周りに漂う空気は、殺気などというマイルドな言葉では物足りないほどだ。玄真航空の者なら半径百メートルには近づかないだろう。
「あの、機長、よかったら使ってください」
扶揺が差し出したタオルを慕情は唸りながら受け取った。
運が悪かったとしか言いようがない。
この空港は飛行機から空港の建物まで外を歩かねばならない。それなのに、操縦を終えた二人が降機した途端に、大粒の雨が猛烈な勢いで降り出したのだ。まさに突然のゲリラ攻撃に襲われたかのようだった。傘を出す間もなく駆けぬけた二人が建物に着いた時には、二人とも見事に全身ずぶ濡れになっていた。
noa/ノア
vẽ nguệch ngoạc[風信&南風✈️] 8/21はバニーの日ということで、風南の二人に巻き込まれてもらいました。 自分はだいぶ疲れているのだろうか。
オフィスの部屋に入ったところで、風信の脚が止まった。気配に気づいたかのように、視線の先に立っている背中が振り返る。
「あ、やっぱり、風信機長。足音が聞こえた気がしたんです」
風信は眉を寄せた。
「南風、いったい何をふざけてる」
嬉しそうな南風の顔が、風信の厳しい表情を見て曇る。
「えっ……と、フライト用のデータを待っているんですけど」
風信は南風の頭、厳密に言えばその頭の上を凝視していた。
いつもの南風の黒髪は、少しばかり跳ねていて、そしてその上に──
立派なウサギの耳がついていた。
仮装用か何かだろうか。だが、パイロットの制服に身を包み、このオフィスに入ったら、ふざけた真似は許されない。
2200オフィスの部屋に入ったところで、風信の脚が止まった。気配に気づいたかのように、視線の先に立っている背中が振り返る。
「あ、やっぱり、風信機長。足音が聞こえた気がしたんです」
風信は眉を寄せた。
「南風、いったい何をふざけてる」
嬉しそうな南風の顔が、風信の厳しい表情を見て曇る。
「えっ……と、フライト用のデータを待っているんですけど」
風信は南風の頭、厳密に言えばその頭の上を凝視していた。
いつもの南風の黒髪は、少しばかり跳ねていて、そしてその上に──
立派なウサギの耳がついていた。
仮装用か何かだろうか。だが、パイロットの制服に身を包み、このオフィスに入ったら、ふざけた真似は許されない。
noa/ノア
LÀM XONG[風信&南風✈️] 南風の顔が好きな風信機長。事故チューをそえて… なぜだかわからないが、目が離せなかった――目の前のその顔から。
日付が変わる頃にやっと業務が終わり、帰宅の前にひとつ調べものを片付けようと寄った資料室。その隅からなにやら気配を感じて覗き込んだ視線の先に見つけた姿に、不思議と驚きはしなかった。頭のどこかで予感していたのかもしれない。
テーブルに投げ出された腕の横に、目を閉じて口を半開きにした南風の顔が横を向いている。頭の横に転がっている空の飲み物、だらりと下に垂れたもう片方の腕。
これはまるで――ミステリーにでてくる殺人現場だ。館の主の死体の隣に赤ワインの瓶が転がっているあれだ。もっとも、視線の先の顔は静かな寝息をたてており、転がっているのはエナジードリンクの缶だが。
2329日付が変わる頃にやっと業務が終わり、帰宅の前にひとつ調べものを片付けようと寄った資料室。その隅からなにやら気配を感じて覗き込んだ視線の先に見つけた姿に、不思議と驚きはしなかった。頭のどこかで予感していたのかもしれない。
テーブルに投げ出された腕の横に、目を閉じて口を半開きにした南風の顔が横を向いている。頭の横に転がっている空の飲み物、だらりと下に垂れたもう片方の腕。
これはまるで――ミステリーにでてくる殺人現場だ。館の主の死体の隣に赤ワインの瓶が転がっているあれだ。もっとも、視線の先の顔は静かな寝息をたてており、転がっているのはエナジードリンクの缶だが。
noa/ノア
LÀM XONG[風信&南風✈] 風信機長の手が好きでたまらない南風。 風信機長の手が好きだ。
南風自身にも、なぜかはわからない。
確かに大きくてしっかりした手だが、モデルのように綺麗だとか、長年の積み重ねを感じさせる職人のような手だとかいうわけでもなく、いうなれば普通の大人の男性の手だ。なんなら、扶揺の手のほうがすらっと滑らかで「綺麗」かもしれない。だが、扶揺の手には惹かれたこともなかった。他人の手がやけに気になるような癖もない、と思う。
それなのに、風信機長の手は、どうしようもなく南風の視線と心を惹きつけるのだ。筋肉質な力強い腕から流れる脈動を宿す手首、そして大きな掌から指先まで。
フライトの前後にコックピットの前から上まで並ぶスイッチの小さなつまみを操作するとき、人差し指で流れるように操作していくパイロットも多い。だが、風信機長はいつも、親指と人差し指でその小さなつまみを軽くつかんで、カチカチと切り替えていく。一切無駄のない素早い動きに滲む丁寧さ。その指先はとてつもなくクールだ。
2168南風自身にも、なぜかはわからない。
確かに大きくてしっかりした手だが、モデルのように綺麗だとか、長年の積み重ねを感じさせる職人のような手だとかいうわけでもなく、いうなれば普通の大人の男性の手だ。なんなら、扶揺の手のほうがすらっと滑らかで「綺麗」かもしれない。だが、扶揺の手には惹かれたこともなかった。他人の手がやけに気になるような癖もない、と思う。
それなのに、風信機長の手は、どうしようもなく南風の視線と心を惹きつけるのだ。筋肉質な力強い腕から流れる脈動を宿す手首、そして大きな掌から指先まで。
フライトの前後にコックピットの前から上まで並ぶスイッチの小さなつまみを操作するとき、人差し指で流れるように操作していくパイロットも多い。だが、風信機長はいつも、親指と人差し指でその小さなつまみを軽くつかんで、カチカチと切り替えていく。一切無駄のない素早い動きに滲む丁寧さ。その指先はとてつもなくクールだ。
smtk_msr
TANG CHẾ銀飾りの音にクローズアップした銅炉山キスらくがきフォロワさんとお話ししてて、殿下が嵐のような口付けと法力の熱に浮かされながらも、ずっと響く銀飾りの澄んだ音とその冷たさに冷静さ取り戻して花城を助けようとしてたらいいよねっていう余白妄想
noa/ノア
vẽ nguệch ngoạc[✈風信&南風] 8月10日はハートの日ということで。公園のモブカラス視点です。
いつも人間でにぎわっている公園も、こんなに暑い日の昼下がりともなると閑散としている。
だが太陽の光が届かない低めの枝でじっとしていると、下から人の声が聞こえてきた。
「ほんとに暑いですね、機長」
男性の二人組だ。
「ああ。今日は39度らしいぞ」
年上で明るい色の髪をした方が答える。
「39度……それもう高熱じゃないですか」
二人は木の下のベンチに腰かけた。どうやらこの暑いのに、ここで座ってすごそうとしているらしい。物好きな人間もいるものだ。
「温度もだが、この湿気がたまらんな」
「ここがこんなに暑いなんて」
「ちょっと前まではそれほどじゃなかったぞ」
二人は話しながら、ベンチに置いた白い袋をゴソゴソと漁った。
2205だが太陽の光が届かない低めの枝でじっとしていると、下から人の声が聞こえてきた。
「ほんとに暑いですね、機長」
男性の二人組だ。
「ああ。今日は39度らしいぞ」
年上で明るい色の髪をした方が答える。
「39度……それもう高熱じゃないですか」
二人は木の下のベンチに腰かけた。どうやらこの暑いのに、ここで座ってすごそうとしているらしい。物好きな人間もいるものだ。
「温度もだが、この湿気がたまらんな」
「ここがこんなに暑いなんて」
「ちょっと前まではそれほどじゃなかったぞ」
二人は話しながら、ベンチに置いた白い袋をゴソゴソと漁った。
noa/ノア
LÀM XONG[✈慕情&扶揺] 8月9日はハグの日、ということで。はたしてこの二人はハグするのか…?
努力が報われるとは限らない――そんなことは扶揺もよくわかっている。いや、他の人以上によく知っているかもしれない。
だがそれでも期待してしまうのは、報われることもあると知っているからだ。
そう、ちょうど今のように――口元に抑えられない笑みが浮かぶ。
操縦技術以外で国際線のパイロットがさけられないもの、それは英語だ。
パイロットとしての技術には自信がある扶揺も、実は英語だけは少しばかり苦手だった。もちろん定期的な試験で必要なレベルはしっかりクリアしている。だが、いくつかあるレベルの一つ上を取得するのに、ここ数年ずっと苦労していた。
フライトで通信に必要な単語や言い回しを覚えるのはまだいい。だが一応、会話力もいる。レッスンに通ってみたりもしたが、自分の気持ちや意見をすべて言葉で主張せよと求められる英語の世界がどうにも苦手だった。いちいち言わなくても理解してほしいものだ。
2157だがそれでも期待してしまうのは、報われることもあると知っているからだ。
そう、ちょうど今のように――口元に抑えられない笑みが浮かぶ。
操縦技術以外で国際線のパイロットがさけられないもの、それは英語だ。
パイロットとしての技術には自信がある扶揺も、実は英語だけは少しばかり苦手だった。もちろん定期的な試験で必要なレベルはしっかりクリアしている。だが、いくつかあるレベルの一つ上を取得するのに、ここ数年ずっと苦労していた。
フライトで通信に必要な単語や言い回しを覚えるのはまだいい。だが一応、会話力もいる。レッスンに通ってみたりもしたが、自分の気持ちや意見をすべて言葉で主張せよと求められる英語の世界がどうにも苦手だった。いちいち言わなくても理解してほしいものだ。
ℕ𝕖𝕚_𝕜𝕦
LÀM XONG記念すべき日本語版第1巻の発売(2022/07/15)も併せてお祝いしたいな、と思って描きはじめた1枚でした。気付けば三年かかってた…😂
今年もお誕生日おめでとう殿下!💝 2
noa/ノア
LÀM XONG[✈フォンチン(未満)] 相手に付き合ってケーキを食べに来た付き合ってない機長ズが、お互いの可愛い副操縦士とは別に付き合ってないと言い張るだけのお話(?) 天井からぶら下がっている枯れた花はドライフラワーというらしい。店に一歩入った瞬間に、風信は一人で来なくてよかったとひっそり安堵した。
キャビンクルーたちが、ケーキが絶品だと話しているのを聞いてから気になっていた店。だが、こじゃれたカフェは一人だと気後れするような雰囲気なこともある。そうして頼ったのは結局――
『付き合ってやらんでもないが』
肩を竦める絵文字付きで返ってきた返信からいくらかの応酬を経て、いまこうしてテーブルに向き合っているというわけだ。
「まったく、南風でも誘えばいいのに」
まんざらでもない表情をしておきながら、呆れたような声音で言う慕情が眉を上げる。
「南風もあんまり付き合わされるのは嫌だろ」
2533キャビンクルーたちが、ケーキが絶品だと話しているのを聞いてから気になっていた店。だが、こじゃれたカフェは一人だと気後れするような雰囲気なこともある。そうして頼ったのは結局――
『付き合ってやらんでもないが』
肩を竦める絵文字付きで返ってきた返信からいくらかの応酬を経て、いまこうしてテーブルに向き合っているというわけだ。
「まったく、南風でも誘えばいいのに」
まんざらでもない表情をしておきながら、呆れたような声音で言う慕情が眉を上げる。
「南風もあんまり付き合わされるのは嫌だろ」
noa/ノア
vẽ nguệch ngoạc[風信&南風✈] アイスの食べ方がアレな風信機長というネタが聞こえたので落書きしました。健全に食べてるだけ……な、はずなんですけど……。
「ふぅ……あっつい……」
申し訳程度に椅子が置かれた狭い休憩スペースにやってきた風信は、腰を下ろすと手の甲で額の汗を拭った。一つ息をつくと、片手に持っていたアイスクリームバーの袋を破る。
「あ、風信機長」
タイミング良く現れるその声にはもう風信は驚かない。「おう南風。休憩か?」
「はい」
風信の向かいの席に腰を下ろした南風も暑そうに手でゆるく扇いでいる。
「アイス、いいですね」
風信が袋から取り出したバニラアイスのバーを見て南風が笑う。風信も笑って返す。
「やらんぞ」「わかってますよ」
サイズも濃厚さも従来品よりアップという宣伝文句に偽りはないらしい。うっすらとクリーム色がかった乳白色のバーはしっかりと太さがある。
2106申し訳程度に椅子が置かれた狭い休憩スペースにやってきた風信は、腰を下ろすと手の甲で額の汗を拭った。一つ息をつくと、片手に持っていたアイスクリームバーの袋を破る。
「あ、風信機長」
タイミング良く現れるその声にはもう風信は驚かない。「おう南風。休憩か?」
「はい」
風信の向かいの席に腰を下ろした南風も暑そうに手でゆるく扇いでいる。
「アイス、いいですね」
風信が袋から取り出したバニラアイスのバーを見て南風が笑う。風信も笑って返す。
「やらんぞ」「わかってますよ」
サイズも濃厚さも従来品よりアップという宣伝文句に偽りはないらしい。うっすらとクリーム色がかった乳白色のバーはしっかりと太さがある。
noa/ノア
LÀM XONG[慕情&扶揺✈] お題をいただいていた、酔っぱらった玄真航空のふたり。こっちはちょっと展開が早いです(※健全)
※前半と後半に分けて投稿したものの全体バージョンです
休日の前の夜ほど良いものはない。
なかなか読めずにいた本を手に、慕情は部屋のソファに身を沈めた。だが、三行も読まないうちに、テーブルに置いた携帯が震えた。
ちらりと画面を見る。表示された送信人を確認した慕情の視線は、何事もなかったかのように本へ戻った。
しかし、苛つくかのように携帯は何度も振動音を響かせる。歯ぎしりしたい気持ちで忌々しく視線をやる。
『今、家か?』
『どこにいる?』
風信──なんでアイツは慕情が邪魔されたくないときを見計らったように連絡を寄越すのだ。身じろぎせず、火がつきそうなほど画面を睨みつける。だが、次に現れた名前に思わず眉が動いた。
『扶揺が困ったことになってるらしいぞ』
扶揺が? しばし逡巡したのち、短く返す。
6295なかなか読めずにいた本を手に、慕情は部屋のソファに身を沈めた。だが、三行も読まないうちに、テーブルに置いた携帯が震えた。
ちらりと画面を見る。表示された送信人を確認した慕情の視線は、何事もなかったかのように本へ戻った。
しかし、苛つくかのように携帯は何度も振動音を響かせる。歯ぎしりしたい気持ちで忌々しく視線をやる。
『今、家か?』
『どこにいる?』
風信──なんでアイツは慕情が邪魔されたくないときを見計らったように連絡を寄越すのだ。身じろぎせず、火がつきそうなほど画面を睨みつける。だが、次に現れた名前に思わず眉が動いた。
『扶揺が困ったことになってるらしいぞ』
扶揺が? しばし逡巡したのち、短く返す。
noa/ノア
LÀM XONG[風信&南風✈] 7月4日は、なんふぉんの日ということで、風信機長視点の南風。アメリカ西海岸の浜辺でくつろぐ二人。
西海岸のカラリと温かい空気は、気持ちまで軽くする。ロサンゼルスへのフライト明けの休息日、昼下がりの海岸沿いを軽くジョギングしていた風信は、ふと速度を緩めた。
視線の先、歩道脇の柵に腕を置いて軽く寄りかかりながら下に広がる砂浜と海を見つめているのは──南風だ。
見慣れているはずのその姿が、少しいつもと違って見えるのはラフな格好のせいか、それとも明るい陽射しのせいか。
サングラスをかけていない横顔は、鼻筋がくっきりとして端正な輪郭を描いている。膝丈のチノパンから覗くふくらはぎは、遠目にも、過不足なく鍛えられ力強さを秘めているのがわかる。操縦席でペダルを緻密に踏むだけではもったいないほどに。
ゆるりとしたTシャツを着たしっかりした上体。いつもはつい可愛い後輩として見てしまうが、こうして見るとやはり間違いなく大人の男性なのだと、そんな当然のことを感じてしまう。
2777視線の先、歩道脇の柵に腕を置いて軽く寄りかかりながら下に広がる砂浜と海を見つめているのは──南風だ。
見慣れているはずのその姿が、少しいつもと違って見えるのはラフな格好のせいか、それとも明るい陽射しのせいか。
サングラスをかけていない横顔は、鼻筋がくっきりとして端正な輪郭を描いている。膝丈のチノパンから覗くふくらはぎは、遠目にも、過不足なく鍛えられ力強さを秘めているのがわかる。操縦席でペダルを緻密に踏むだけではもったいないほどに。
ゆるりとしたTシャツを着たしっかりした上体。いつもはつい可愛い後輩として見てしまうが、こうして見るとやはり間違いなく大人の男性なのだと、そんな当然のことを感じてしまう。
noa/ノア
LÀM XONG[FengQing] フォンチンのウェディング企画参加作品。お題:指輪、誓い現代に暮らす神官の二人。街の真ん中で愛を叫ぶ二人を書きたかっただけですが、残念ながら二人は結婚する事ができない国にいますので、そういう話が苦手な方はそっ閉じで…🙏
結婚しないか──そう言い出したのはどっちだっただろう。
天界を下り、人間界で暮らし始めて、なし崩し的に一緒に暮らすようになり──もはや腐れ縁も来るところまで来た、そんな半ばヤケっぱちめいたところもあったかもしれないが、勢いがついてしまえば、そんな結論にまで達してしまうところは二人とも似通っているかもしれない。
「別に結婚式やら仰々しいことをしたいわけじゃないから安心しろ」
そう言った風信に、慕情は冷たく鼻で笑う。
「お前にそんな願望があるかもしれないなんて、これっぽっちも思ってない」
ああそうかいと、風信も慣れた様子で聞き流す。
「だが──」慕情が言い淀むのを見て風信が片眉を上げる。
「まあしかし──」
4367天界を下り、人間界で暮らし始めて、なし崩し的に一緒に暮らすようになり──もはや腐れ縁も来るところまで来た、そんな半ばヤケっぱちめいたところもあったかもしれないが、勢いがついてしまえば、そんな結論にまで達してしまうところは二人とも似通っているかもしれない。
「別に結婚式やら仰々しいことをしたいわけじゃないから安心しろ」
そう言った風信に、慕情は冷たく鼻で笑う。
「お前にそんな願望があるかもしれないなんて、これっぽっちも思ってない」
ああそうかいと、風信も慣れた様子で聞き流す。
「だが──」慕情が言い淀むのを見て風信が片眉を上げる。
「まあしかし──」
noa/ノア
vẽ nguệch ngoạc[慕情&扶揺✈️] ご機嫌最悪な慕情機長にお呼び出しされる扶揺。 そわそわと幾度となく確認した携帯電話の画面は沈黙している。小さく息を吐き、のろのろと帰り支度を始めた扶揺は、後ろから声をかけられて振り返った。
「ああ、扶揺、まだいたか」
疲れた顔でやってきたのは少し年上の副操縦士だ。
「今到着ですか? 遅かったですね。慕情機長とのフライトでしたよね」
「ああ」
彼の顔の疲労感が濃くなる。
「なんか南陽航空の飛行機が滑走路から出る時にミスったとかで着陸が渋滞して、上でぐるぐる待機だよ」大きくため息をつく。
「おかげで慕情機長のご機嫌は最悪。待たされると機嫌悪くなるけど、今日は過去に類を見ないほど苛ついてた」
へぇ、と適当な返事を返す扶揺に彼が言う。
「で、そんな慕情機長からお呼び出しだぞ、扶揺」
1877「ああ、扶揺、まだいたか」
疲れた顔でやってきたのは少し年上の副操縦士だ。
「今到着ですか? 遅かったですね。慕情機長とのフライトでしたよね」
「ああ」
彼の顔の疲労感が濃くなる。
「なんか南陽航空の飛行機が滑走路から出る時にミスったとかで着陸が渋滞して、上でぐるぐる待機だよ」大きくため息をつく。
「おかげで慕情機長のご機嫌は最悪。待たされると機嫌悪くなるけど、今日は過去に類を見ないほど苛ついてた」
へぇ、と適当な返事を返す扶揺に彼が言う。
「で、そんな慕情機長からお呼び出しだぞ、扶揺」
akipon228
TANG CHẾ前髪アップ城主の加工有りバージョンです。これはこれで雰囲気あってイイ感じなんですけど色味がはっきりしていた方が城主の格好良さが際立つ気がしてこちらはボツになりました😌
noa/ノア
vẽ nguệch ngoạc[風信&南風✈] ふぉんしんさんの🥧を求めるお声が聞こえたのでちょっと焼いてみました…裸で一緒にベッドに入るようになってる時空(?)の✈風南です。
※事故の描写が少しでてきます
体がガタガタと震えているのは機体の振動なのか、自分の恐怖なのか。
視界で点滅し続ける警告サイン。異常を知らせる警告音は止めたはずなのに耳の奥で耳鳴りのように響き続けている。
どれだ。何が原因だ。どうすれば――。
あらゆる可能性を取捨選択するのに与えられるのは数秒。
思いつく限りの操作を試す南風を嘲笑うかのように、機体はもうどんな操作にも反応しない。
割れた氷に覆われた海面がみるみるうちに迫る。操作しようとする腕ももう動かない。固く目を瞑る。
もうだめだ――。
どうして――。
耳をつんざくような音は自分の口から出た悲鳴だろうか。
頭がぐらりと揺れ、その向こうから声が聞こえ――
「南風、夢だ、それは夢だ、目を覚ませ……」
1891視界で点滅し続ける警告サイン。異常を知らせる警告音は止めたはずなのに耳の奥で耳鳴りのように響き続けている。
どれだ。何が原因だ。どうすれば――。
あらゆる可能性を取捨選択するのに与えられるのは数秒。
思いつく限りの操作を試す南風を嘲笑うかのように、機体はもうどんな操作にも反応しない。
割れた氷に覆われた海面がみるみるうちに迫る。操作しようとする腕ももう動かない。固く目を瞑る。
もうだめだ――。
どうして――。
耳をつんざくような音は自分の口から出た悲鳴だろうか。
頭がぐらりと揺れ、その向こうから声が聞こえ――
「南風、夢だ、それは夢だ、目を覚ませ……」
noa/ノア
vẽ nguệch ngoạc[風信&南風✈️] マリモさんの絵から、寒い日にブレザーを忘れて、風信機長に貸してもらう南風です。「さむっ……!」
ドアから一歩出た瞬間、吹き抜けていった湿った冷たい風に、半袖シャツ一枚の体がぶるりと震えた。
昨日の夜は汗でまとわりつくシーツを蹴るようにして寝たのに、今日のこの寒さはいったいなんだ。空の心変わりの早さはわかっているはずなのに、ここ数日暑い日が続いていたから、上着のブレザーはロッカーにしまいこまれている。
だが寒かろうが、フライト前の飛行機の外部点検を任された以上、中に逃げ戻るわけにはいかない。凍り付いたような体で、抱えた両腕をごしごしとさする。
「南風」
首と耳も凍り付いていたのか、突然後ろから聞こえた声に一瞬遅れて振り返る。
「ブレザー、ないのか?」
驚いたような――いや、呆れたと言ったほうがいいかもしれない――風信機長の顔を見ながら曖昧な音を返す。
2217ドアから一歩出た瞬間、吹き抜けていった湿った冷たい風に、半袖シャツ一枚の体がぶるりと震えた。
昨日の夜は汗でまとわりつくシーツを蹴るようにして寝たのに、今日のこの寒さはいったいなんだ。空の心変わりの早さはわかっているはずなのに、ここ数日暑い日が続いていたから、上着のブレザーはロッカーにしまいこまれている。
だが寒かろうが、フライト前の飛行機の外部点検を任された以上、中に逃げ戻るわけにはいかない。凍り付いたような体で、抱えた両腕をごしごしとさする。
「南風」
首と耳も凍り付いていたのか、突然後ろから聞こえた声に一瞬遅れて振り返る。
「ブレザー、ないのか?」
驚いたような――いや、呆れたと言ったほうがいいかもしれない――風信機長の顔を見ながら曖昧な音を返す。