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    noa/ノア

    @eleanor_dmei

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    noa/ノア

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    [風信&南風✈️] 南風を押し倒してしまう(※事故)風信機長というネタが聞こえたのでやってみてもらいました。
    健在。何も起きません。

    #天官賜福
    Heaven Official’s Blessing
    #風信
    windGod
    #南風
    southerlyWind
    ##パイロットAU
    ##風南

    「そんなに美味しいんですか、キャプテン」
    「ああ、ここら10キロ、いや20キロ圏内で一番旨いラーメンだな」
     風信と南風は、顔をほころばせて言う機長を見つめた。
    「一度行ってみるといい」
     おつかれ、と手を上げて去っていく背中を見送った二人は顔を見合わせた。
    「俺はこれであがりだが……行ってみるか? その、予定がなかったら…」
     風信が言うと南風は笑顔で答えた。
    「予定は、今できました」
     
    「大きな車ですね」
     シートベルトを締めながら南風が運転席の風信に言う。
    「そうか?」
     風信はカーナビを操作しながら上の空で答える。
    「あれ?……なんでだ」ぶつぶつ言いながら液晶画面を操作する風信は、コックピットで山ほどのスイッチや電子機器を手際よく操作する姿とはかけ離れていて、南風には意外だった。
    「機長、ひょっとして機械苦手ですか?」
    「いや、そうじゃないんだが、久しぶりで」
    「久しぶり?」
    「いつもはナビ使わないからな。適当に行けばまあ六割くらいの確率で着く」
    「……低くないですか?」
     南風の言葉に、風信が「かもな」と笑う。「でも今日はちゃんと迷わず着かないとな」
     今日は、という言葉を噛みしめながら南風は座席に身を埋めた。手伝おうかと思ったが、思い直す。走り出してしまえば、店に着くまでのカウントダウンが始まってしまう。こうして機長と車内で一緒にいる時間は長ければ長いほどいい。そんなことを思いながら、南風は車内を見回した。
     後ろには広い座席とゆったりとした後部スペース。独り身の機長にはいささか大きい気もするが、いかにもアウトドアに良さそうな車だ。前にはボタンやスイッチが並んでいる。少し操縦席のような見た目は、パイロット心をくすぐられる。
    「座席、リクライニングになるんですか?」
     それらしいマークのボタンを指さしながら南風が言うと、風信はちらりと目をやった。
    「ああ。フルフラットにもなるぞ。たまに車中泊とかするときに便利でな。それがついてる車が良くて探したら大きいのになってしまうんだよな」
    「車中泊……キャンプとかされるんですか?」
    「ああ、たまに。最近はめっきりだが」
    「……お一人で?」
    「ああ、一人で行くこともあるし……ああ、慕情と行ったこともある」
     例の玄真航空の機長の名前に南風の心がざわめいた。彼と風信機長がなにやら親密な空気になっている場面を見たという、この間扶揺から聞いた話がよぎったのだ。一緒にキャンプに行くような仲なのだろうか、と心が揺れる。
     風信の方はといえば、南風の動揺などつゆ知らず、慕情と行った時のことを思い出していた。連れていけと言うから連れて行ってやったのに、夜に車で泊まる段になって、やれ風呂に入りたいだのトイレもないのかだの不平たらたらで、二度と連れていくまいと誓ったのだ。思い出して苦笑いを浮かべながら頭を振り、カーナビとの苦戦に戻った。
    「座席、やってみていいですか?」南風がボタンに指を置いている。
    「ああ」
     南風の指がボタンを押すと、静かに背もたれがリクライニングに倒れる。
    「おお……」何万倍も複雑で巨大なモノを毎日操っていることを忘れて無邪気に感嘆の声をあげる南風の様子に、風信の顔に笑みが浮かぶ。
    「フルフラットにするには、横のレバーで操作するんだ」たしか、と言いたす。その機能で選んだはずなのに、もう久しく触っていない。南風がシートの右横を見る。
    「これ、ですか?」「ああ、それをグッと手前に……」
     だが、南風が操作してもシートはそれ以上動く気配がない。
    「……逆だったかな」
     風信はシートベルトを外し、右側の助手席の方に乗り出した。右手を席の間につき、左手を奥のレバーに伸ばす。
    「けっこう……力がいったかも……」ぐっとレバーを引き上げる。
     その瞬間、がくんと助手席の背もたれが後ろに倒れた。
    「……っ!」体重をかけていた風信の体もそのままバランスを崩して倒れ込む。
    「……だ、大丈夫だったか?」風信は慌てて南風に声をかけた。
    「あ、はい、大丈夫です。あの、車大丈夫でした? 壊しちゃってないですよね?」
     南風は座席の横に目をやりながら恐る恐る聞いた。
    「車は大丈夫だ」風信が首を振る。
    「そんなことより、ほんとにケガしてないか?」と南風の首から肩を見ながら尋ねる風信の心配そうな顔に、南風はもう一度首を振った。
    「よかった」と風信が言う。
     南風は、車の天井がガラス張りのサンルーフになっていることに初めて気づいた。星空を見ながら寝られる仕様だ。
     だが今は、ガラス越しにちょうど太陽が沈んだばかりの空が広がっている。地平線から伸びる太陽の名残の茜色に、雲がピンク色に染まり、夜に近づこうとする上空の濃いブルーに溶け込んでいる。
     マジックアワー。一日のほんの一瞬だけの空のショー。
     そして、地上でしか眺められないその美しい空を背景に、南風を見下ろす顔。
     光を背にしていてもわかる深い目鼻立ち。丸く見開かれた瞳。前髪がその額から垂れて、思わし気に揺れている。
     あまりの光景に南風は瞬きすら忘れた――これほどまでに、目を奪われるという表現でしか表し得ない瞬間を経験したことがあっただろうか。
     風信も座席のシートに横たわる南風の顔を見下ろしたまま、目を離せずにいた。
     見開かれた南風の目は複雑な色を湛え、わずかに潤んでいるように見えた。一瞬、その目に宿っているのが怯えかと思ったが──目上の自分に見下ろされているのだ──だが、そこにあるのは怯えではない気がした。いや、風信の願望がそう思わせているのだろうか。
     その瞳に自分はどう映っているのだろう――風信の頭にそんな考えがよぎる。
     二人とも、互いの間の空気を動かすのを恐れるように動かない。
     少しだけ顔を上げれば――
     少しだけ顔を下ろせば――
     求めてやまないものに届く。だが――
     遠くで車のエンジン音が聞こえ、風信は我に返った。自分が、南風に覆いかぶさる体勢になっていることを思い出す。
     ここは会社の駐車場だ。もし誰かに見られたりしたら──。
    「南風。ベルト、外すぞ」
     風信は南風の肩の横に置かれていた腕を動かしながら言った。
    「え……」腰のほうに動いていく風信の手を南風の目が追う。
    「シートベルト」「あ……」
     南風もあたふたと動く。大きい車とはいえ、大柄の二人が無理な体勢で動くのはきつい。車が揺れる。
    「あっ……」「ッ……大丈夫、じっとしてろ」
     誰かが通らない内に何とかしなければと風信の気が急く。焦ると簡単なこともうまくいかないものだ。パイロットとして、どんな時も焦ってはならないと肝に銘じているはずなのに。
     ようやく、カチッという音とともにスルリと南風のシートベルトが外れた。
     風信はそろそろと体を上げ、南風も体を起こそうとした。だがその途端、突然、南風のシートの背が勢いよく起き上がった。
    「……ぁわっ!」「いッ……!」
     二人の顔が激しくぶつかり、風信はのけぞった。
    「すみませ……大丈夫ですか?」
     南風の歯が当たった顎に思わず手をやる風信を見て、南風が慌てたように言った。
    「ああ…すまん、大丈夫だ」風信は手を離し、運転席のほうに戻って、どさっと腰をおろした。
     二人とも、はあっと息を吐き、ちらりと隣を見た。
    「さて……」「じゃ、じゃあ…」
     気まずさの混じる視線に、なぜか笑いが込み上げてきて二人とも俯く。いったい何をやっているのだろう。
     突然二人の間に無機質な声が割って入った。
    『発進してください』
    「あ」二人の声が重なり、放っておかれていたカーナビを見た。
     少し名残惜しげな気持ちを感じながら、二人はシートベルトを締め、自分の座席に体を固定した。
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