くた煮
PROGRESS隠囚①長めの話になる予定
ルカ・バルサーの居室は呪われている。
そんな話がまことしやかに囁かれ始めたのはいつからだったか。噂の出処も不明、しかし実際誰もルカの部屋に入ったことがないとなれば、噂好きの間から荘園中に話が広まるのはあっという間だった。そうして、「ルカの部屋の呪い」はいつしか誰もが知る噂話になったのだ。
いつだったか、噂好きの中の数人が直接ルカに噂の真相を尋ねたことがあった。渦中の本人は呆気にとられているようだったが、話の全容を聞くと心底おかしそうに笑った。
「本当に呪われているのなら、私が寝起きできるわけがないだろう? 大方、話に尾ひれがついて呪いだなんてことになったんだろう」
言われてみれば確かに、と誰かが頷くのを見て、ルカは続けた。
585そんな話がまことしやかに囁かれ始めたのはいつからだったか。噂の出処も不明、しかし実際誰もルカの部屋に入ったことがないとなれば、噂好きの間から荘園中に話が広まるのはあっという間だった。そうして、「ルカの部屋の呪い」はいつしか誰もが知る噂話になったのだ。
いつだったか、噂好きの中の数人が直接ルカに噂の真相を尋ねたことがあった。渦中の本人は呆気にとられているようだったが、話の全容を聞くと心底おかしそうに笑った。
「本当に呪われているのなら、私が寝起きできるわけがないだろう? 大方、話に尾ひれがついて呪いだなんてことになったんだろう」
言われてみれば確かに、と誰かが頷くのを見て、ルカは続けた。
くた煮
PROGRESS仲良し隠囚まだ隠は出てません
窓から光が差し込んで、部屋の中を照らす。そうして太陽を意識すると思考と視界が広がった気がした。久しぶりに顔を上げて、そうしてやっとルカは師の部屋に赴く時間だと気がついた。時間といっても、特にふたりの間で約束をしたわけでも取り決めがあるわけでもない。互いにゲームへの参加も他者との約束もなく、かつルカの調子が悪くない日は、アルヴァの部屋で共に作業をしたり書籍に目を通すという流れがなんとなくふたりの間で習慣づいただけだった。最近はただ話したりお茶をするためだけに会いに行く、なんてことも増えたが。合理的な理由もなく会うことを許されているというのは、ルカにとって気恥ずかしいような、くすぐったいような気がして思わず浮き足立ってしまうことだった。そんなルカがどれほどアルヴァの部屋に入り浸っているかといえば「ルカ・バルサーと話したければ居室ではなく、談話室か書庫、あるいはアルヴァ・ロレンツの居室に行けば会える」というのがこの荘園内での共通認識になって久しいほどである。当の師弟たちはこの常識を知る由もないが。
809くた煮
PROGRESSOPH時空隠囚まだ隠は出てこない
「はー、お腹いーっぱい!」
「だな。私も少し食べすぎたかもしれない……」
歩きながらリリーとルカが口々に満腹を示す。それを後ろから眺めて、十一とナワーブは顔を見合せて笑う。先ほどの若い二人の食べっぷりは素晴らしかった。少々懐には痛い出費になったが、それは今後の活躍で返すと宣言された。そんな眩しい姿も含めて、奢った甲斐があったというものだ。
何を隠そう、今日は新生した戦隊の決起会と称した食事会だった。ささやかなものではあったが、時間を取ってメンバーで集まったことで、この四人でこれから競技シーンで戦っていくのだと改めて確認することができた。身が引き締まる思いもありつつ、リラックスした空気の中で会が進んだことも大きな成果と言える。これなら親睦を深めるという目的も達することができただろう。せっかくの機会と出会いだ。ゲーム中のチームワークという観点でも、もちろんそれを抜いても、仲を深めるのは大切だろう。
723「だな。私も少し食べすぎたかもしれない……」
歩きながらリリーとルカが口々に満腹を示す。それを後ろから眺めて、十一とナワーブは顔を見合せて笑う。先ほどの若い二人の食べっぷりは素晴らしかった。少々懐には痛い出費になったが、それは今後の活躍で返すと宣言された。そんな眩しい姿も含めて、奢った甲斐があったというものだ。
何を隠そう、今日は新生した戦隊の決起会と称した食事会だった。ささやかなものではあったが、時間を取ってメンバーで集まったことで、この四人でこれから競技シーンで戦っていくのだと改めて確認することができた。身が引き締まる思いもありつつ、リラックスした空気の中で会が進んだことも大きな成果と言える。これなら親睦を深めるという目的も達することができただろう。せっかくの機会と出会いだ。ゲーム中のチームワークという観点でも、もちろんそれを抜いても、仲を深めるのは大切だろう。