aki_cp
MOURNINGこばけ小説続き④紫苑の花言葉を君に④ ~ CODE:BIRD CAGEより~▼▼▼
「約束したんだよ」
二十歳をいくつか過ぎた青年にしては高い声音でマーブルが言う。
「あいつを殺してやるって」
もし、ヨハンが過去に負けて誰かを攻撃しようとしたら。
もうどうしても、これ以上生きてはいけないと思ったら。
そのときは、オレがおまえを殺す。
「けどあいつ、すげえ強いじゃん? だからムカつくけど、生かしてやってんの」
「約束したんですよ」
やわらかく落ち着いた声音が言う。
「アーティに殺されてもいいって」
殺してやる、と言ってくれたから。
死にたがっていた、死ぬしかないと思っていた自分を、強い目線でまっすぐ貫いて。
誰かに殺されるなら、おまえがいい。
「でも悲しいかな、抵抗してしまうんですよね。習性で」
789「約束したんだよ」
二十歳をいくつか過ぎた青年にしては高い声音でマーブルが言う。
「あいつを殺してやるって」
もし、ヨハンが過去に負けて誰かを攻撃しようとしたら。
もうどうしても、これ以上生きてはいけないと思ったら。
そのときは、オレがおまえを殺す。
「けどあいつ、すげえ強いじゃん? だからムカつくけど、生かしてやってんの」
「約束したんですよ」
やわらかく落ち着いた声音が言う。
「アーティに殺されてもいいって」
殺してやる、と言ってくれたから。
死にたがっていた、死ぬしかないと思っていた自分を、強い目線でまっすぐ貫いて。
誰かに殺されるなら、おまえがいい。
「でも悲しいかな、抵抗してしまうんですよね。習性で」
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MOURNINGこばけ小説の続き③。紫苑の花言葉を君に③ ~CODE:BIRD CAGEより~▼▼▼
軍部内で「ハンガー」と呼ばれる戦闘機格納庫には、整備コーナーがある。そこへ向かう少し手前、細い通路を入った先に、なぜか軍には似つかわしくない、ふわふわで愛らしい目をした大きなクマのぬいぐるみが置かれているのだが、それはここイレブンヤードに所属する軍人関係者であれば周知の事実であった。
そこは、マーブルの指定位置でもあった。生活力がないというよりも、「生活すること」を知らなかったらしいマーブルは、コリーンがイレブンヤードに所属する以前はもっとひどい状態だったのだと、ヨハンが笑って語ったことがある。
床で寝ていたり、通路を裸で歩いていたり、一日の終わりにシャワーを浴びる習慣もなく、着替えや毎日の食事すら無頓着で、それでも、指示された戦闘訓練だけは参加していたという。
1749軍部内で「ハンガー」と呼ばれる戦闘機格納庫には、整備コーナーがある。そこへ向かう少し手前、細い通路を入った先に、なぜか軍には似つかわしくない、ふわふわで愛らしい目をした大きなクマのぬいぐるみが置かれているのだが、それはここイレブンヤードに所属する軍人関係者であれば周知の事実であった。
そこは、マーブルの指定位置でもあった。生活力がないというよりも、「生活すること」を知らなかったらしいマーブルは、コリーンがイレブンヤードに所属する以前はもっとひどい状態だったのだと、ヨハンが笑って語ったことがある。
床で寝ていたり、通路を裸で歩いていたり、一日の終わりにシャワーを浴びる習慣もなく、着替えや毎日の食事すら無頓着で、それでも、指示された戦闘訓練だけは参加していたという。
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MOURNING続き。コリーンの視点でマーブルを表現すると、褒めたり貶したりの落差がひどい
紫苑の花言葉を君に② ~CODE:BIRD CAGEより~▼▼▼
「おっせーぞ!」
突然、インカムのスピーカーが叫ぶ。
「むやみやたらに大きな声を出すな! 鼓膜が破れる!」
「どっちが大声だよ!」
「そっちが先に!」
「順番関係あるか!?」
コリーンが「彼」と組んで任務に出ると、これが日常茶飯事である。互いにトップスピードで戦闘機を飛ばしながらと思えないような応酬が続くが、いつものことと誰も止めに入らない。
その中で、イレブンヤードの戦闘アドバイザーでもあるヨハン・イザックが、ひとつ手を打って制止をかけ任務の重要性を懇々と説くが、彼は、はいはいと適当に返事をし、話をまともに聞こうともしなかった。
それどころか、ヨハンの手を煩わせてしまったことに少し肩を落とす(トップスピードを出していたはずの)コリーンのマシンを軽々と追い抜き、コリーンが手こずっていた任務をあっさりと成功させ、デッキからの合図も待たずにさっさと手動でマシンを着艦させてしまう。
1481「おっせーぞ!」
突然、インカムのスピーカーが叫ぶ。
「むやみやたらに大きな声を出すな! 鼓膜が破れる!」
「どっちが大声だよ!」
「そっちが先に!」
「順番関係あるか!?」
コリーンが「彼」と組んで任務に出ると、これが日常茶飯事である。互いにトップスピードで戦闘機を飛ばしながらと思えないような応酬が続くが、いつものことと誰も止めに入らない。
その中で、イレブンヤードの戦闘アドバイザーでもあるヨハン・イザックが、ひとつ手を打って制止をかけ任務の重要性を懇々と説くが、彼は、はいはいと適当に返事をし、話をまともに聞こうともしなかった。
それどころか、ヨハンの手を煩わせてしまったことに少し肩を落とす(トップスピードを出していたはずの)コリーンのマシンを軽々と追い抜き、コリーンが手こずっていた任務をあっさりと成功させ、デッキからの合図も待たずにさっさと手動でマシンを着艦させてしまう。
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MOURNINGこのお話はあくまでもパラレルストーリー(CDドラマのネタバレあり)です。紫苑の花言葉を君に① ~CODE:BIRD CAGEより~「彼がここを去って、五百六十三日が経った」
毎日の任務後に、任務以外について記録することにも慣れた。
軽快な手つきでキーボードを打ち込み、エンターを押す。最後の文言は、この記録をつけ始めた五百六十三日前から一言も変わらない。
「本日も連絡なし」
保存をし、任務についての報告書のみを上官宛に送付すると、パソコンを閉じ、ゆっくりと背をそらして軽く伸びをした。
指定の軍服に隙なく包み込まれたその肢体は、すらりと引き締まっており、肩につく長さの明るい色の髪はきりりとひとつにまとめられ、清潔感のある印象を受ける。まっすぐに見据えるその目線は鋭く真摯でもあり、やわらかくもあった。背が高く、姿勢のいいその姿は一見、線の細い青年にも見えるが、若い女性である。
2941毎日の任務後に、任務以外について記録することにも慣れた。
軽快な手つきでキーボードを打ち込み、エンターを押す。最後の文言は、この記録をつけ始めた五百六十三日前から一言も変わらない。
「本日も連絡なし」
保存をし、任務についての報告書のみを上官宛に送付すると、パソコンを閉じ、ゆっくりと背をそらして軽く伸びをした。
指定の軍服に隙なく包み込まれたその肢体は、すらりと引き締まっており、肩につく長さの明るい色の髪はきりりとひとつにまとめられ、清潔感のある印象を受ける。まっすぐに見据えるその目線は鋭く真摯でもあり、やわらかくもあった。背が高く、姿勢のいいその姿は一見、線の細い青年にも見えるが、若い女性である。