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    #アル蛍

    al-firefly

    もぐ🍣

    DONEアル蛍が手を絡ませるだけの話
    アル蛍 旅人はソファに座る自分の左手に伝わったちょん、という小さな衝撃に大袈裟なほど肩を震わせた。その様子に隣へ腰を掛けたアルベドは小さく笑う。開いていた距離が少しだけ詰められて、自宅故空気に晒されている肌が逃げようか迷う旅人の手を捕らえた。──しかし、捕らえたと言ってもリシュボラン虎のように獰猛に上から喰らい付いた訳ではない。ただ、先ほどと同じようにちょんと中指の先をぶつける。旅人の反応は先程よりも鈍い。縦長の整えられた爪の形を確かめるように撫で、ゆったりアルベドの手は旅人の一回り小さな手を覆っていく。はふり、と我慢するような吐息を聞きながらアルベドは包んだ手のひらとソファの間に自分の指を食い込ませた。最初は頑なで、中々開かない隘路。いや、入り口が完全に塞がれた洞窟だったが指の腹がやさしく隙間を撫でているうちにそこは口を開けた。いいこ。それは普段はクレーに使う褒め言葉だ。告げながらアルベドは緊張からか少ししっとりとしている手のひらを一本、二本と間に滑り込んだ指で押し上げる。ソファに押し当てていた手のひらはもういつの間にかアルベドのものだ。ふるり、と旅人の身体が小さく揺れた。何も言わずに四本の指でただ支えていたのを少しずつ変えていく。アルベドだけが旅人の指の間へ絡みつき、その谷間へ深く沈み込んだ。隙間など無いように強く沈んだものに捉えられた旅人の指先は初めてピンと伸びていたのに、第二関節がかくんと動いて垂れ下がる。何度か抗うようにまた上向いて、……そうしていつしかゆったり力無く倒れ始めた。アルベドの肌に旅人の指の腹がぶつかる。さり、と爪はかけずに引っ掻いているのを見下ろさず、アルベドが星海の瞳で覗き込むのは潤んだ蜜色だ。
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