落書き
REHABILI极博♂ 統合#3の殴り書き とても短いとても寒い朝 恐らくこれが最後の夜になるだろう。
ドクターはとっておきのワインの封をあけ、ふたつのグラスに並々と注ぎ、軽やかな硝子の触れる音が響くや否やその縁に口を付けた。けれどもそれは、ちっとも美味くなかった。にもかかわらず、ドクターは微笑みを浮かべて、グラスを傾ける手を緩ませることなくあっという間に葡萄酒を飲み干してしまった。
私室の窓からは星々が一望できた。暗闇の中の輝きが鏡合わせに煌めいている。地平線を境にして、空の星は相も変わらず眩しいが、水面に浮かぶ月は虫食いにでも遭ったのか歪んでいる。瞬きする間にその形を変えるのは、海より来たりしあれらに眠りが必要ないことの証左でもあった。恐ろしさを紛らわせるために瓶を傾け、再びグラスを満たすと、もう一つの杯がちっとも減っていないことに気付く。だからドクターは悲しくなってしまった。共に夢に浸かりたかったが、そうはならないことを悟ってしまったからだった。
1902ドクターはとっておきのワインの封をあけ、ふたつのグラスに並々と注ぎ、軽やかな硝子の触れる音が響くや否やその縁に口を付けた。けれどもそれは、ちっとも美味くなかった。にもかかわらず、ドクターは微笑みを浮かべて、グラスを傾ける手を緩ませることなくあっという間に葡萄酒を飲み干してしまった。
私室の窓からは星々が一望できた。暗闇の中の輝きが鏡合わせに煌めいている。地平線を境にして、空の星は相も変わらず眩しいが、水面に浮かぶ月は虫食いにでも遭ったのか歪んでいる。瞬きする間にその形を変えるのは、海より来たりしあれらに眠りが必要ないことの証左でもあった。恐ろしさを紛らわせるために瓶を傾け、再びグラスを満たすと、もう一つの杯がちっとも減っていないことに気付く。だからドクターは悲しくなってしまった。共に夢に浸かりたかったが、そうはならないことを悟ってしまったからだった。
落書き
MOURNING极博♂ 統合戦略3が実装される前なので好き勝手しました灰の海のたびごころ 極東ではリコリスを指して彼岸花と呼ぶこともあるらしい。秋の夜長、暗闇の中にあってもはっきりとそうだと分かるほどに鮮やかな赤い花を咲かせ、夏に枯れる多年草である。害獣除けとして田の畦道に敷き詰めるように植える農家も少なくないとかで、秋めくにつれこれらが一斉に花開くさまは壮観の一言に尽きる。
「君にも本物を見せてあげたかったな。本当に凄いんだよ。初めてあれを見たとき、ミノスの神話を思い出したもの。エリュシオン、死後の楽園、英雄の魂だけが逝ける場所」
まったく縁起でもない。それとも冗談だろうか? ジョークのセンスがいいとは言えないだろう。そのうえ、
「その話は前にも聞いた」
「あれ? そうだっけ」
ああでもやっぱり、惜しいなあ。茫然とした口ぶりで、それは前方に視線を投げた。この辺りは岩場も多く、街は遠く、輝く砂浜もなく、退屈な光景が広がっている。灰色の空を鏡に映し出したかのように水面は暗い。そこに揺蕩う水草たちはただ潮風に揺られるばかり。放射状に咲く花弁が波に呑み込まれては顔を出して、そのたび、生まれ変わったかのように白く洗われる。
4343「君にも本物を見せてあげたかったな。本当に凄いんだよ。初めてあれを見たとき、ミノスの神話を思い出したもの。エリュシオン、死後の楽園、英雄の魂だけが逝ける場所」
まったく縁起でもない。それとも冗談だろうか? ジョークのセンスがいいとは言えないだろう。そのうえ、
「その話は前にも聞いた」
「あれ? そうだっけ」
ああでもやっぱり、惜しいなあ。茫然とした口ぶりで、それは前方に視線を投げた。この辺りは岩場も多く、街は遠く、輝く砂浜もなく、退屈な光景が広がっている。灰色の空を鏡に映し出したかのように水面は暗い。そこに揺蕩う水草たちはただ潮風に揺られるばかり。放射状に咲く花弁が波に呑み込まれては顔を出して、そのたび、生まれ変わったかのように白く洗われる。