suzuro
DONE虎日。虎君と別れた後の🌻のお話。箱庭のペトリコール 鈍色の空から雨粒が細い針のように降り注ぐ。コロニーにも雨は降るのだなと疲れ切った体をビル壁に寄りかからせながら天を仰ぐ。陽が昇り夜が来るのだから至極当然の事なのだが。
この天候時に付き物の埃っぽい独特のアスファルト臭が立ちのぼる。雨の匂いはどこか懐かしく嫌いではない。だが晩秋の肌寒さは体温を徐々に奪っていく。着衣で風呂に浸かってみた時は我ながら馬鹿な事をしたと後悔した。あの日。虎杖悠仁と相見えた時だ。
こちらを見据える瞳が眩いと思った。一回目の裁判ではしれっと虚偽を述べていた癖に大量殺人の疑いには躊躇いなく罪を認めたあの少年。
無罪にも関わらず自分自身の弱さを理由に償いの道を選ぶ、たった十五歳の子供の姿に俺はいたく恥じ入った。本来ならば虎杖に請われるまま行動を共にして助けるべきだったのだろう。だが俺は逃げた。己の弱さ情け無さをこれ以上彼に晒す事に耐えられなかった。
3586この天候時に付き物の埃っぽい独特のアスファルト臭が立ちのぼる。雨の匂いはどこか懐かしく嫌いではない。だが晩秋の肌寒さは体温を徐々に奪っていく。着衣で風呂に浸かってみた時は我ながら馬鹿な事をしたと後悔した。あの日。虎杖悠仁と相見えた時だ。
こちらを見据える瞳が眩いと思った。一回目の裁判ではしれっと虚偽を述べていた癖に大量殺人の疑いには躊躇いなく罪を認めたあの少年。
無罪にも関わらず自分自身の弱さを理由に償いの道を選ぶ、たった十五歳の子供の姿に俺はいたく恥じ入った。本来ならば虎杖に請われるまま行動を共にして助けるべきだったのだろう。だが俺は逃げた。己の弱さ情け無さをこれ以上彼に晒す事に耐えられなかった。