いとう
DONEタペストリの続きです。モブのグロとかあるので苦手な方にはオススメできないです測量する子供たち甘い甘いキャンディを口の中転がしながら、談話室のソファに身を沈める。柔らかに受け止めてくれるこの感触がいつも好きだった。曖昧で、緩や かで、どこまでも浅ましい自分を優しく受け入れてくれる。
思わず鼻歌を小さく歌ってしまうほどだ。
噛み砕いたキャンディからは苦みと甘み、両方を兼ね備えたコーヒーの味と香りが広がった。あまり買わなかったキャンディだったが、思った以上に滑らかな舌触りと甘やかしてくれるばかりではないところが気に入った。
誰も存在しないこの場所は幸福の匂いがした。
耳に無駄に大きな足音が響いた。空気を吸いこみながら音のする方向を見て、期待した姿でないことにも薄ら寒い笑みを浮かべた。
「まーたお前ここにいんの?」
6722思わず鼻歌を小さく歌ってしまうほどだ。
噛み砕いたキャンディからは苦みと甘み、両方を兼ね備えたコーヒーの味と香りが広がった。あまり買わなかったキャンディだったが、思った以上に滑らかな舌触りと甘やかしてくれるばかりではないところが気に入った。
誰も存在しないこの場所は幸福の匂いがした。
耳に無駄に大きな足音が響いた。空気を吸いこみながら音のする方向を見て、期待した姿でないことにも薄ら寒い笑みを浮かべた。
「まーたお前ここにいんの?」
いとう
DONEフェイビリコールタールに沈む顔 遠くには排他的な姿の高い建物が立ち並んでいる。同じような無機質な顔をして無口に佇む姿は無個性の極みのような、そんな物が集まってるのは一種の約束事であるのか、個では不安なために繋がりを求めているようでもあった。
容器を傾けてコーヒーを口に含む。入れ物を離した後も手のひらには温かさが残った。雑誌のページを捲ろうとすると、ページの端が指の皮を切り裂いた。特に血は出てはいないが、曖昧な白い皮が心もとなさそうにしている。開かれた紙面の女性は健康的な笑みを浮かべていた。
「それで、何の用?」
振り返りもせずそう告げる。背中に浴びせかけられるしつこいくらいの視線。先程から気づいてはいたが、わざわざこちらから声をかけてやる必要もないだろうと放置していた。しかし、さすがに座りが悪くなってきたので短く言葉にする。
7951容器を傾けてコーヒーを口に含む。入れ物を離した後も手のひらには温かさが残った。雑誌のページを捲ろうとすると、ページの端が指の皮を切り裂いた。特に血は出てはいないが、曖昧な白い皮が心もとなさそうにしている。開かれた紙面の女性は健康的な笑みを浮かべていた。
「それで、何の用?」
振り返りもせずそう告げる。背中に浴びせかけられるしつこいくらいの視線。先程から気づいてはいたが、わざわざこちらから声をかけてやる必要もないだろうと放置していた。しかし、さすがに座りが悪くなってきたので短く言葉にする。
いとう
DONEフェイ→←ビリ正しい棺 うだるような暑さの中で大きく伸びをした。当たり前のように太陽が人をかき乱す。こういう時は屋内で情報収集に勤しんだ方が楽だ。そうは思ってもこの職業も他者の信頼を得るには最高の仕事であるので手は抜かない。舌で口内にある人の怠惰さを集めたような重くるしい甘さの塊を転がした。溶けて小さくなったその味があまり好みではなくて、奥歯で噛み砕いて小さな欠片にしてしまう。
空腹は嫌い。優しさは好き。口寂しいのは苦手。無言で慰めてくれるキャンディが欲しくなる。
自分より背の高いその後ろ姿に向かってとびきりの笑顔を向ける。
「グレ~イ! 今日もお疲れ様!」
落ち着いた暗めの髪色を持った彼は、腕で額の汗を拭っている途中の姿勢のまま振り返った。暑さで少し頬が赤らんでいるが、それは健康そうな色合いを持っていた。
7017空腹は嫌い。優しさは好き。口寂しいのは苦手。無言で慰めてくれるキャンディが欲しくなる。
自分より背の高いその後ろ姿に向かってとびきりの笑顔を向ける。
「グレ~イ! 今日もお疲れ様!」
落ち着いた暗めの髪色を持った彼は、腕で額の汗を拭っている途中の姿勢のまま振り返った。暑さで少し頬が赤らんでいるが、それは健康そうな色合いを持っていた。
いとう
DONEフェイビリまぶたの隙間 橙色にきらめく髪が視界に入ると、ひっそりとゆっくりとひとつ瞬きをすることにしている。
そうしている間に九割以上向こうから「ベスティ~!」と高らかに響く声が聞こえるので、安心してひとつ息を吐き出して、そこでようやっと穏やかな呼吸を始められるのだ。
それはずっと前から、新しくなった床のビニル独特の匂いを嗅いだり、体育館のメープルで出来た床に敷き詰められた熱情の足跡に自分の足を重ねてみたり、夕暮れ過ぎに街頭の下で戯れる虫を一瞥したり、目の前で行われる細やかな指先から紡がれる物語を読んだり、どんな時でもやってきた。
それまでの踏みしめる音が音程を変えて高く鋭く届いてくるのは心地よかった。
一見気性の合わなさそうな俺たちを見て 、どうして一緒にいるの?と何度か女の子に聞かれたことがある。そういう時は「あいつは面白い奴だよ」と口にして正しく口角を上げれば簡単に納得してくれた。笑みの形を忘れないようにしながら、濁った感情で抱いた泡が弾けないようにと願い、ゴーグルの下の透明感を持ったコバルトブルーを思い出しては恨むのだ。俺の内心なんていつもビリーは構わず、テンプレートで構成された寸分違わぬ笑みを浮かべて大袈裟に両手を広げながら、その後に何の迷いもなく言葉を吐く。
8533そうしている間に九割以上向こうから「ベスティ~!」と高らかに響く声が聞こえるので、安心してひとつ息を吐き出して、そこでようやっと穏やかな呼吸を始められるのだ。
それはずっと前から、新しくなった床のビニル独特の匂いを嗅いだり、体育館のメープルで出来た床に敷き詰められた熱情の足跡に自分の足を重ねてみたり、夕暮れ過ぎに街頭の下で戯れる虫を一瞥したり、目の前で行われる細やかな指先から紡がれる物語を読んだり、どんな時でもやってきた。
それまでの踏みしめる音が音程を変えて高く鋭く届いてくるのは心地よかった。
一見気性の合わなさそうな俺たちを見て 、どうして一緒にいるの?と何度か女の子に聞かれたことがある。そういう時は「あいつは面白い奴だよ」と口にして正しく口角を上げれば簡単に納得してくれた。笑みの形を忘れないようにしながら、濁った感情で抱いた泡が弾けないようにと願い、ゴーグルの下の透明感を持ったコバルトブルーを思い出しては恨むのだ。俺の内心なんていつもビリーは構わず、テンプレートで構成された寸分違わぬ笑みを浮かべて大袈裟に両手を広げながら、その後に何の迷いもなく言葉を吐く。
いとう
DONE上手くいかなかったフェ→←ビリの話。多分続きはある。モブ1号モブ2号が登場しますタペストリ激しい衝撃はは何の苦痛も無い。置いてきぼりにされたそれはオイラを捉えることはできない。
もう一度足を踏み出して、糸を手繰り寄せながらグレイが囲まれている場所目掛けて重力に任せた蹴りをかます。
イクリプスと一緒に思ったより地面が抉れたが、もちろん体も痛くない。埃っぽい手を音を立てながら払う。吹っ飛んだイクリプスはその場を動けないまま沈黙していた。目標は全て殲滅。減点対象はどこにもない。安心のあまりひとつ大きく息を吐いたオイラをグレイは心配する意図を持って瞳を向けてきた。
「ビリー君、大丈夫?!」
開口一番放たれたそれに、オイラは視線を外して簡単に頷く。
倒れてから幾ばくもないイクリプスを検分していると、ふいに背後から声が聞こえた。
9630もう一度足を踏み出して、糸を手繰り寄せながらグレイが囲まれている場所目掛けて重力に任せた蹴りをかます。
イクリプスと一緒に思ったより地面が抉れたが、もちろん体も痛くない。埃っぽい手を音を立てながら払う。吹っ飛んだイクリプスはその場を動けないまま沈黙していた。目標は全て殲滅。減点対象はどこにもない。安心のあまりひとつ大きく息を吐いたオイラをグレイは心配する意図を持って瞳を向けてきた。
「ビリー君、大丈夫?!」
開口一番放たれたそれに、オイラは視線を外して簡単に頷く。
倒れてから幾ばくもないイクリプスを検分していると、ふいに背後から声が聞こえた。