たまにはこんな日も。命は無限だと、勝手に思っていた。
それは若き日の幻想だった。
「ジェイド、フロイド……」
そう呼ぶアズールの声はとてもか細かった。
「はい。」「んー?」
名を呼ばれた二匹のウツボは嬉しそうに返事をする。
そして、声の主の手を大事そうに握り締める。
皺が深く刻まれた彼の手を取ると、随分と小さく感じた。
我々の頭を潰せるのではないかと感じるほどに強かった握力はもう無い。
それでも、ジェイドとフロイドは『彼』と一緒に居続けていた。
だって、アズールはずっとアズールでしかなかったからだ。
身体の方が先に衰えを迎えてしまったものの、商売にかける情熱は健在であった。
また負けん気も健在で、そんな彼を愛しいと思い続けていた。
学生の頃はこの正体が分からず、また照れもあり素直な気持ちを伝えられなかったが、今なら分かる。
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