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    sakikuryo

    @sakikuryo
    たまに進捗を上げてどうにか自分を奮い立たせるかもしれないところ。ほぼ下書きです。ちゃんと書いたものや整えたサンプルはぴくしぶに置いてます。

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    sakikuryo

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    高杉社長について書きたい咲紅さんはあの川の土手にいっせいに彼岸花が咲く頃、国道にかかるしろい歩道橋の上で認めざるを得なかった変容についての話をしてください。

    #さみしいなにかをかく #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/595943

    #高杉晋作(Fate)
    shinsakuTakasugi
    #FGO

    社長+ぐだ謎の時空の謎のレイシフトだと思ってふわっと読むことを推奨
    社長+ぐだ
    ぐだの性別はふわっと不問

    ==
     股の下をくぐって大型車が何台も行き来するというのは、ことによると吹っ飛ばされそうな心許無さを感ずるものらしいが、その点、高杉は状況をいくらでも楽しむ度量があった。酔狂と言い換えてもいい。直接触れたわけでもないのに、アスファルトの振動が柱を伝って、片側二車線道路を大きく跨いだ歩行者用の橋を震わせる。
     歩道橋のさびた手摺を掴み、うわあ、と小さく呟いたマスターはと言えば、ワイバーンに追われている時よりも、ともすると、危機感めいたものを横顔に湛えている。おかしなやつだ。高杉はそう思って、しかしふと、よく知っているからこそ怖いこともあるのだろうと思い直した。ピストルを不用意にべたべた触るのはピストルが何なのか知らないからだ。絵巻の中の妖怪にできることだってたかが知れている。高杉にとっては呪いの類よりも刀のほうが、生々しく死を感じさせるものだったし、あるいは畳に敷かれた布団のほうがおぞましく生を鈍らせるものだった。自分より百年か二百年、後の世に生まれたマスターなら、巨大なイソギンチャク以上にお四トントラックが恐ろしいことだってあるのだろう。
    「しかし、君」
     西から陽の差すバイパスに、いかめしい装飾の貨物自動車ばかり、大層な列をなし、北へ進路を取る。これが単なる渋滞であるとか、交通政策の過ちとか大富豪の引っ越しだとか言うのなら、黙って見送るのもかまわないのだが。
    「方法としちゃ、コレしかないぜ」
    「……やっぱり?」
    「坂本君が言うんならそうだろう、癪だけどな」
    「その坂本さんは」
    「供給元を調べに飛んで行ったさ!まったく毎度毎度僕より黒幕みたいな働きをして、ちょっと許せないぞ」
     そうまくし立てて高杉が唇を尖らすと、ようやくマスターはほっとした顔つきになり、まあまあ、と高杉を宥める素振りまで見せた。
    「僕が言うのもなんだけど君、よくあの男を信用できるよな」
    「信頼してるんですよ。坂本さんが暗躍してるうちは大丈夫だろう、って」
    「へえ? 坂本君に限ってないだろうが、裏切られるかもとは思わないのかい」
    「あんまり。……疑っていても信じていても、事は、起こるときには起こるから」
     言葉の途中で二人の足元を、トラックが強風に煽られるようにして走り抜け、あっという間に道路の先へ見えなくなった。時速一五〇キロはゆうに超えて、大型車が弾丸の如く走り抜ける光景は、さながら砲台からの一斉射撃のようだ。あるいは魚雷。彼らがレイシフトするに至った事のあらましを知るためには、この魚雷さながらの貨物自動車の列に紛れ、荷台の中身と、行き先とをあらためる必要があるらしい。
     ビルだ、崖だ、満天の星空だと、さんざっぱらいろんなところへその身を投げ出されてきた歴戦のマスターは、それでも高速移動する鉄の塊に足がすくむらしかった。一歩間違えれば後続車のフロント部に突っ込まれて、エアバックの実験用の人形みたいになってしまう。高杉は自分が奇兵隊に与えた鎧の耐久実験に用いたマネキンの、見るも無残なバラバラっぷりを思い出し、鎧の改良までに四百九十二体の尊い犠牲を払った話をしようとして、止めた。
    「悪いね」
    「何についての謝罪ですか」
    「僕が着地を任せてもらえるようなアーチャーじゃないってことについて、だよ」
     高杉は身を乗り出すようにして歩道橋から、高速で走り抜ける車の列を見下ろし、ひゅう、と口笛をひとつ吹いた。生身で乗り込むアトラクションとしちゃ、十分すぎるスリルだ。長い髪が下からの風に晒されて無作為な方向へと流れる。
    「てっきり何かまた悪いことでもしてたのかと」
    「またってなんだよ。僕が毎回悪いことをしているみたいだろ。黒幕を疑われるのも最初は面白かったが、こう続くとさすがに飽きてくるな。いや逆に突き詰めれば面白くなるのか……?」
    「止めてください。というか、任せないなんて言ってないですよ」
     ぱちり。高杉は手摺の錆を見つめていた目を瞬かせてから、若干飽きたように首を傾けた。
    「言っておくが前回は状況が状況だったし僕も弱っていたし」
    「はい」
    「魔力供給も不十分だったからああなっただけだ」
    「はい」
    「…………なんてことは無いとまでは言わないが、筋力Dを舐めるなよ」
    「わかってます。でも一人だとちょっと飛びにくいから」
     意図を理解するのに高杉はたっぷり二秒かかった。それからにいーっと目を細めると、「そういうのは勝算がないと面白くないんだぞ」と喜色を滲ませてマスターの襟をむんずと捕まえた。相手の首を自分のもとまで引き寄せて、足元を覗き込ませるようにする。なるほど着地点はスピードこそあるものの、落下距離はさほどでもないようだ。適切に車の荷台に降りることさえできれば、あとは礼装がどうにかしてくれるレベルだろう。
    「なるほど坂本君には任せられない大役だな」
    「正直社長ならやると思ってました」
    「おいおい人聞きが悪いぞ。コレはあれだろ、いわゆる幇助ってやつだろ」
     起訴されるのは会社の体面的にまずいからしっかり生き残っといてくれよ。言いながら高杉は礼装の襟を掴み直す。マスターは歩道橋の柵にあたる部分をしっかりと握ると上半身を乗り出した。ぐらりと傾いた太陽が妙に光る車体を照らしている。履物の裏から、アスファルトを揺らす振動が伝わってくる。逸る心臓とどっちがドコドコ鳴っているのだか、高杉にはちょっとわからなかった。どうせもう一度は止まった心臓だけれど。
    「目をつむったほうが良くはないかい」
    「ちゃんと平らな場所へ落ちないといけないんで」
    「肝が据わっているんだか、いないんだか」
    「社長に任せるくらいなんだから、据わってますよ」
    「自分で言うか? フツー」
     任せます、と持ち上がった口の端に乗った音はエンジンの唸り声に紛れ、高杉の耳にははっきり届かなかった。そのまま突き落とされたマスターは結局、絶叫をあげてしまったし。あっという間に小さくなる荷台の上の人間を見、帰ったら奇兵隊の装備を静音タイプに改良しよう、と高杉は決意した。それから世の中と正義の味方ぶったやつらが戻ってこないうちに、自分もいま来たトラックの荷台に落っこちて、生きる人間の後を追いかけた。自動車事故も横行しない時代の英霊だから、こんなのは夢の乗り物にしか見えなかった。
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    sakikuryo

    REHABILI高杉社長について書きたい咲紅さんはあの川の土手にいっせいに彼岸花が咲く頃、国道にかかるしろい歩道橋の上で認めざるを得なかった変容についての話をしてください。

    #さみしいなにかをかく #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/595943
    社長+ぐだ謎の時空の謎のレイシフトだと思ってふわっと読むことを推奨
    社長+ぐだ
    ぐだの性別はふわっと不問

    ==
     股の下をくぐって大型車が何台も行き来するというのは、ことによると吹っ飛ばされそうな心許無さを感ずるものらしいが、その点、高杉は状況をいくらでも楽しむ度量があった。酔狂と言い換えてもいい。直接触れたわけでもないのに、アスファルトの振動が柱を伝って、片側二車線道路を大きく跨いだ歩行者用の橋を震わせる。
     歩道橋のさびた手摺を掴み、うわあ、と小さく呟いたマスターはと言えば、ワイバーンに追われている時よりも、ともすると、危機感めいたものを横顔に湛えている。おかしなやつだ。高杉はそう思って、しかしふと、よく知っているからこそ怖いこともあるのだろうと思い直した。ピストルを不用意にべたべた触るのはピストルが何なのか知らないからだ。絵巻の中の妖怪にできることだってたかが知れている。高杉にとっては呪いの類よりも刀のほうが、生々しく死を感じさせるものだったし、あるいは畳に敷かれた布団のほうがおぞましく生を鈍らせるものだった。自分より百年か二百年、後の世に生まれたマスターなら、巨大なイソギンチャク以上にお四トントラックが恐ろしいことだってあるのだろう。
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    sakikuryo

    DOODLE高杉社長について書きたい咲紅さんはおおよそ五分の夕立のあと、様々な蜂蜜を取り扱う洒落た店で嘘みたいな味のりんごを食べたことの話をしてください。

    #さみしいなにかをかく #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/595943
    面白きこともなき周回を面白く高杉社長を書いてみようとした
    途中で切れます

    ===

     あたりが焼け野原になったのを見届けてから、高杉は手近なカフェーへ入った。銅だか真鍮だかを叩いてのしたような看板に、甘たるい西洋菓子の名が焼き付けてある。店の名前なのだろう。食べたことはない菓子だったが、横文字の響きだけで十分に胸やけがする。引いた扉の蝶番はやけに重い。ベルが尖った音でちりんと云い、対して店員は、蚊の鳴くような応対で客を出迎える。
    「二名様ですね」
     お好きなお席へどうぞ、と言われて初めて高杉は、自分の後ろにもう一人居たのだと気が付いた。カルデアのマスターだ。白っぽい衣服と頬は煤だらけで、とてもじゃないが洒落たカフェーで一服する格好ではなかろう。人のことは言えないが。振り返る視界で、高杉は自分の髪の、ほどけて赤く、爛れたように黒いのをとらえた。こんな血でべとべとの人間を、よくまあ客として迎え入れたものだ。
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