持ち帰ったカタログをめくりどれが良いかと聞いても彼女の返事は今一つ、女性に人気で海外のセレブも愛用してるという高級アクセサリーショップと聞いていたのに彼女はお気に召さない様だ。どうしたもんかと悩んでいたら件の彼女は部屋に飾っていたクリスタルを掲げた。それは自分の地元でよく採れる鉱石で透明度が高く太陽の光を浴びてきらきらと輝く、一つ違うのは自室に飾っていたのはこの鉱石にしては珍しく色がついた代物で、エメラルドグリーンに太陽の光が当てられ湖面の様に輝く。だからと言って特別高価な物でも無い、学生がアルバイトをして貯めたお金で買える程度である。それを空に掲げると、クリスタルから発せられる煌めきに目を細め彼女は自分に微笑んだ。
「うん、私はこれが良いな」
「は?」
「私はこのクリスタルが良いと言っているんだ、そんな高価なものじゃなくていい」
「それは分かった、せやけど何でそれなん?」
「ん? いつでも思い出せそうだから、かな?」
「なんやそれ、答えになってないやんけ」
「ふふっ、まぁあれだ、秘密だ」
そう言うと彼女にしては珍しく悪戯が成功した様な顔で笑った。
「ようわからんけど、メレフがええならそれでええか」
余程嬉しいのか、彼女は目尻を下げて『ああ』と笑った。愛する人の花が綻ぶ様な笑顔と太陽の暖かい光が眩しい、絵に描いた様な幸せとはこの様な事を言うのだなと改めて実感する。
今日も彼女の淹れたコーヒーが美味い、立ち上る湯気を見ながらいつ地元の加工屋に行こうかと脳内のスケジュール帳を開いた。