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    どろろん

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    どろろん

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    厄黙/リンクに女装させてお友達ごっこを楽しむ姫様

    書きかけ放置シリーズ4「とっても可愛いですリンク!」
     試着室から出たリンクはゼルダの頬を上気させた笑顔に迫られ、気乗りしないものの、その楽しそうな顔に免じて頭を掻いた。
     街の一角にある可愛らしい洋服屋での出来事だ。本来ならリンクが関わり合いになることのない若い女性のための愛らしい洋服が並んでいる。その一着を着せられ、リンクはうーんと頭をひねるくらいで微々たる抗議を訴えてみたが、楽しそうにリンクの周りをくるくると回って可愛い可愛いと誉めそやすのに忙しいらしいゼルダが気付く素振りはなかった。
    「どれも可愛くて困りますね。リンクは何を着ても似合ってしまいますから」
     ゼルダが着るならともかく、ピンクのリボンとフリルだらけのワンピースを着た軍人などお笑い種だ。筋肉だってそれなりにはあるつもりだし、ゼルダに比べればゴツゴツとした手先の傷は隠し切れない。そう思うのに馴染みになってしまった店員まで「とてもお似合いです」なんてゼルダを調子づかせてしまうのだ。

     こんな罰ゲームじみた女装を延々と続けているのには理由があった。原因はミスヴァーイ決定戦で優勝してしまったことにある。リンクはゼルダ姫の護衛なのだ。姫が参戦しているとなれば近くで見守るためにリンクも参戦しなければならなかった。運悪く対戦となれば女装姿を見せるのに怯みはしたが仕方ない。姫を随分と驚かせてしまったが、姫と対戦となれば護衛が情けなくも姫に負けるわけにはいかなかったので傷つけることなくちょちょいと勝ってしまった。そこからは容赦なく優勝を果たした。姫にいいところを見せたかった、なんて思っていない訳でもなかった。普通ならば姫に華を持たせ、負けてあげるのが護衛の役目だなんて一兵卒から運良くゼルダの護衛になって日も浅い、まだまだ少年らしさを残したリンクは思い付かず、つい自分の力を誇示してしまったのだ。
     それからゼルダはリンクが女装が好きなのだと思い込んでしまった。リンクとしてはゲルドに入るために仕方なくしていた格好にすぎない。しかし楽しそうにリンクに自分のドレスを着せようとしてくるので、ゼルダの服を着れるという下心に負けて袖を通してしまって以来このザマである。

    「困りました。選べません。全部いただくのもいいかもしれません」
    「これにしましょう」
     もう何度も着替えさせられてヘトヘトだった。うんうんと唸るゼルダの独り言を遮るように迅速に返事をする。こんなことに無駄遣いをさせるのは忍びないしリンクにはそもそも必要ない服である。
    「分かりました。こちらの色違いはありますか?」
     店員が持ってきた簡素なデイドレスといった風貌の揃いのワンピースをゼルダは見比べた。
    「私にはこちらで……リボンも少なめにした方がいいでしょうか。取り外せるものですか?」
     ゼルダが選んだのは揃いの中でも一番地味な色合いの紺のワンピースだった。リンクには何かとピンクだ黄色だとパステルカラーの可愛らしい少女趣味な服を選んでおいて、自身にとなると急に気後れするらしいのがリンクには不思議でたまらなかった。どう考えても逆が正解である。
    「お揃いなんですよね」
     リンクに選ぶくらいだ。嫌がらせでなければこういう流行の可愛らしいデザインも好きな筈だった。普段はオートクチュールの選び抜かれた素材で職人が作り上げた上品な服ばかり着ているゼルダだったが、街角でのお遊びなのだから好きな服を着ればいいとリンクは思う。
    「そうでしたね」
     リンクの言葉で覚悟を決めたらしいゼルダが試着室に向かう。その間にリンクは会計を城付けで済ませ、着替えたゼルダと共に街へ繰り出した。

     フリルのついたスカートの裾を翻し、アイスクリームを買って公園の噴水の側でベンチに座る。食べ歩きなんて品のない真似はゼルダはしないのだとリンクは学んでいた。
    「リンク。足を広げて座ってはいけませんよ」
     くすくす笑われながらスカートの上から膝をそっと押しやられ、閉じるよう命じられるのにリンクは素直に従った。この格好をしているとゼルダによく触れてもらえるのがせめてもの役得である。
    「君たち可愛いね。服、お揃いなんだ?」
     早々に食べ終わって視線を泳がせていたリンクに声をかけてきた二人組の男に目を伏せ、ふう、と息を吐く。
    「去れ」
     再び上げられたリンクの眼差しは厳しく据わっており、男を射殺さんとする殺気が込められていた。これでも大厄災をゼルダ姫と共に討ち取った勇者である。歴戦を越えた護衛騎士は眼差し一つで有象無象を追い払えるようになっていた。
     リンクの眼力を浴びせかけられ、ジリジリと後退し、スタコラ逃げ出してしまった男達の軽薄な背中をくすくすと笑ったゼルダがリンクに微笑みかける。
    「リンクは人気者ですね。いつも声をかけられます」
    「姫様が目当てです」
     長い金髪を編み込み、町娘に扮した姿は美しく、明らかに目立つものだった。しかしゼルダの顔を直に見たことがあったとして、年に数回も機会がないのでまさか誰もこんなところで護衛も連れずに姫が街をうろついてるとは思わないものだ。傍目には友人と遊んでいる美しい町娘としか映らないだろう。実際は一騎当千どころか一騎当万でも言い過ぎではないリンクが側についているのだが、当然誰もワンピース姿で化粧をした愛らしい少女をリンクだと思う者はいないのだった。
     要はゼルダ姫が飛び抜けて可愛いのでナンパ男に声をかけられる。いつものことだ。リンクはこれまで何度もその手の輩を追い払っている。

     しかしリンクの言葉を聞いたゼルダは真顔になり、リンクの耳元に顔を近づけた。
    「私の行動が漏れていますか?」
     ゼルダ姫を狙った犯行かと危ぶみ、小声で真面目に囁かれるのにお姫様らしい頓珍漢ぶりが可愛い人だとリンクは思う。
    「姫様がお可愛らしいので男が声をかけてきたんです」
    「まあ! ありえませんよ、リンクったら。やっぱり貴方目当ての人達だったんですね」
     本気で言っているらしいゼルダの様子にリンクは言い返すことが出来なかった。
     ゼルダには悲しい経験の蓄積があるのだ。
     ゼルダを美しい、綺麗だと誉めそやしたその口で裏では平気でゼルダを嘲る。大厄災前のゼルダとの付き合いはそう長くないリンクでさえそんな場面に幾度か遭遇していた。ゼルダの力が目覚め、大厄災を越えてからはそういった輩が軽々にゼルダを罵るようなことは無くなっていたが、こうしてふとした時にゼルダの心の傷を感じることがあった。
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