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    shin1189

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    shin1189

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    ジュゲムジュゲ夢vol.3企画 テーマ縛りプチオンリー
    「秋の夜長もユメみていたい」
    無配だったもの
    アキレウス×男夢主

    #FGO夢
    #アキレウス
    achillesHeel
    #夢小説
    dreamNovel
    #BL夢#BLD

    アキレウス×男夢主「マスター、道満の奴からこんなの貰ったんだけどよ」
    「呪符……ですかね」
     アキレウスさんが差し出したのは、何やら書かれたお札だった。
    「ん、何でも、これを枕の下に敷いて二人で眠ると、同じ夢を見られるんだそうだ」
    「それは、何というか、」
    「ああ」
     ――怪しい。そう、俺達はハモった。
    「呪いとかついてそうじゃね?」
    「滅茶苦茶そう思います。紫式部さん辺りに見てもらいましょうか」

    「呪いはついておりませんね。法師様の仰った通り、同じ夢を見られるという効能だけのようです」
    「マジか……」
     アキレウスさんも俺も驚きを隠せなかった。呪符を検分した紫式部さんも似た反応をしていた。全ては蘆屋道満氏の今までの行い(彼は知らぬ存ぜぬとするがリンボの分も)が悪いので……。
    「見た夢を、奴も覗き見れるとかそういうのも?」
    「無いようですね。ご安心下さい」
     尚も疑うアキレウスさんだったが、紫式部さんのお墨付きを頂いて、唸るように納得――するしかなかった。

    「不穏な効果が何も無いなら使ってみるか。せっかくだしな。一応、俺はそれほどヤバい予感はしてない」
    「俺もまだ少し疑ってますけど、アキレウスさんとなら何とかなると思います」
     アキレウスさんの声音はまだ信用しきっていない様子で、それでも好奇心の方が勝って試したくなっている――そういうことだろう。何と言うか無性に微笑ましく、場違いにも笑ってしまいそうになる。
     万が一のことがあっても、これだけ警戒しているアキレウスさんが一緒なら心強い。アキレウスさんは分割思考もできて魔術にも通じているから(本人が使いたがらないだけで)、本当に何とかなりそうなのである。
     念のためと、マイルームに目隠しの魔術を掛ける。
    「お休みなさい」
    「ああ、お休み、我がマスター。つっても俺達英霊は基本夢は見ないもンだから、マスターのそれになるのかねえ」
     そうだった。英霊は基本的に睡眠を必要としないし、夢も見ない。それなのに、「同じ夢を見られる効果」は発動するのだろうか? しかも発動した場合、それは恐らく俺の見ている夢――うわ、緊張して寝付けないかもしれない。
     アキレウスさんの腕の中で身動ぐと、大英雄にカラカラと笑われた。むむ、さっきまでは呪符を疑って渋い顔をしていた癖に、なかなか余裕じゃないですか。……まあそういう所が頼もしいんですけど。
     なんて思っていたら、すんなりと俺は眠りに落ちていった。


     時計塔。世界の魔術師の学舎であり、研究機関。
     カルデアに来る前に数年間通った機関である。懐かしさすら感じるその廊下を歩く俺。その隣にはアキレウスさん。鎧ではなく、先日獲得した夏の霊衣のようなラフな服装だ。その服装は周りに溶け込んでいるような、いや時計塔にしてはカラーリングがヤンチャというか、そもそも本人の存在感が魔術師とは異なる方向で断トツにある。
     そのアキレウスさんは霊体化したり実体化したりしている。それやパスの感覚から判断するに、どうやらアキレウスさんは受肉はしておらず、所謂「使い魔」として俺によって魔力を供給され続けているようだ。
     その俺は――他の魔術師と交わす会話から判断するに、時計塔の末端、郊外の都市で講師をしているようだ。これは夢なのだとすぐに分かる。以前時計塔にいた時の俺は学生でしかなかったのだから。
     一癖も二癖もある――悪い言い方をすれば魔物のような魔術師達との、一言一言が駆け引きのようなやり取り。それにすらすらと言葉の出てくる自分に驚く。コミュニケーションの苦手な自分が良くできるな……。
     意識は自分の身体にあるのに、俯瞰した目線でも眺めている、夢特有の不思議な感覚である。
     時計塔へは、異端魔術師の捕獲についての報告で訪れたようだった。未来……なのかどうかは不明だけれど、ここの俺はそういうのも生業にしているのか。カルデアでの諸々を経て、俺が戦闘慣れしたと時計塔内で見なされたのかもしれないが、最大の原因もとい戦力として頼りにされているのはアキレウスさんだろう。
     用が済み出口へ向かっていると、新所長――いやこの場合は新所長ではなく魔術師ゴルドルフさんだろうか――が視界に入ってきた。
     ホムンクルスを従えたゴルドルフさんと挨拶を交わすと、キャンプへのお誘いを受けた。
     さて、今度こそ本当に時計塔を後にする。
     そういえば、アキレウスさんは上位の魔術師と対面した時等に現界していた。戦闘態勢を取っている訳ではないのに、存在するだけで相手の魔術師へ与えるプレッシャーが凄まじかった。わざわざ現界しなくてもと苦笑いすれば良いのか、むしろマスターとしてふんぞり反れば良いのか、俺は何とも言えない顔を浮かべていたっけ。
    「そりゃ、俺のマスターが嘗められちゃあたまらんからな」
     本人はそう宣うのであった。

    「今日はロンドンの部屋で。明日帰れば良いでしょう」
     俺達の本拠地は教室のある郊外なのだろうが、ロンドンにも部屋を持っているらしい。
     俺は慣れた足取りで食材の買い出しをしていく。ついでに、大型書店やらでここぞとばかりに買い込んでいた。勿論というか何というか、申し訳ないことに、アキレウスさんは優秀な物持ちだった。役割分担にはお互い慣れている様子で、もう長くこういう生活を送っているのだろう。
     無論、アキレウスさんは実体化しているから何処でも人目を引いていた。
     簡素なアパートの一室に着き、鍵束からシンプルなものを選び出し、入室する。
    「少し埃っぽいですね」
     指を鳴らすと一陣の風が吹き、掃除が完了した。
     部屋は1LDK程しかなく、あまり使い込まれていない家具が必要最低限に揃えられ、テーブルには置き去りにされた本が積まれていた。ロンドンに留まる機会は少ないらしい。
     俺はやはりテキパキと調理をしていく。アキレウスさんはソファに座りテレビを点けて伸び伸びと過ごしていた。やがて、二人分の食事をテーブルに準備し、向かい合って食べて、時々談笑する。
     一般的な日常そのもの――いや食事は今も食堂で一緒に摂っているから似たような光景のはず。なのだけど。
     ここは俺とアキレウスさん二人だけの空間なのだと思うと、幸福感のようなものを抱いてしまう。
     そうこう感慨を抱いている内に、夢の中の俺達は眠りについていった――――

     次に気が付いた時には、俺達はやけに白くて四角い小部屋にいた。
     別の夢に移動したのか? 夢の中で更に夢を見ているのか?
     疑問はあれど、何と無くだが身体は元の自分のそれである気がする。
    「で、ここはどこなんだ」
     警戒心を露にするアキレウスさんと共に部屋を見渡すと、壁に掛けられた一つのプレートが目に入った。というか、それしか部屋になかった。

    『互いの不満点を一つずつ述べるのですぞ。でなければ何時迄経っても此の部屋からは出られませぬ』
     近付いて読み上げたプレートの文章は、誰の仕業か即座に分かるもので。いやいやそんな露骨な仕込み……ある?
    「ちっあの野郎……そんなこったろうと思ったぜ」
     低く吐き捨てたアキレウスさんは、プレートもろとも壁を破壊しようと試みる。武器は出せなかったようで、素手で殴りに掛かる。
     物凄い衝撃音が響いたのに、壁はびくともしなかった。プレートは粉々に砕け散っていたというのに。
    「ちっ、結局奴の思う壺かよ」
     怒りを発散しきれなかったアキレウスさんは、眉間に皺を寄せたまま、床に胡座を掻いた。俺もその隣に正座する。床すら不気味に真っ白い。
    「――マスター、手っ取り早く済ますぞ」
    「、はいっ」
     アキレウスさんの声音は不機嫌なままだったが、ここからの脱出方法は一つしかないと捉えた様子。即ち、不承不承でも蘆屋道満の指示に従うことに決めた、ということだ。

    「不満点、だったな……不満……マスターは控え目過ぎるな、うん。さっき見た夢でも、魔術の講師になって頼りにされてたんだろ? ゆくゆくはロードって奴じゃないか。それだけ今実力を磨いているんだ、もっと前に出て良いと思うぜ。俺に対しても、カルデアでもな」
    「あれは、都合の良い夢かもしれないですし、ああいう地位に着けたのはアキレウスさんがいて下さるからに違いないです。それに、流石にロードにはなれっこないですよ。俺程度の魔術刻印じゃあ分不相応過ぎます」
    「ほーらまた卑下してる」
     間髪入れずに返答が来てしまい、俺は少し言葉に詰まった。
    「こ、これでも自分の実力を正しく測っているつもりなんですけど……」
    「いいや、測れてないっ。マスターの実力はサーヴァントの俺が一番知ってる」
    「う……」
     サパッと返されて思考が困るやら、しかもその内容が俺を……俺の実力を高く買って下さっているというものだから、尚の事俺は混乱してしまう。
     でも、俺は本当に大したことのない魔術師で……。うう、アキレウスさんの言葉は嬉しいけれど、素直に受け取る訳には、訳には……!
    「、~~~~もう! アキレウスさんは大英雄だからそんなに自信たっぷりに言えるんですよ!」
    「おう! 言い返してきたじゃないか! いいぞ、その調子だマスター!」
     俺は、爆発した!
     アキレウスさんは多少虚を突かれたような顔をしたが、喚き出した俺に対してむしろ喜び、更には発破をかけてくる。
     何で……何でそういう返し方するんですかー!?
     もう駄目だ。目の前どころか頭もグルグルする。頭に血が昇るようで、思考がままならないようで。緊張で身体中がピリピリして。
    「アキレウスさんはそりゃ強いし賢いし何でもできるしカッコいいんですけど! 何でもできるからって、そこに着いていくこちらの身にもなって下さいよ! それに夏の特異点とかでもサラッとフラグ立てて自覚もないし! 俺がっ、俺が、いつもどれだけハラハラドキドキしてるかっ、分かって下さい……!」
     俺は爆発しきってしまった。八つ当たりをしてしまった。ついでと言わんばかりに先日のレイシフトでの勝手な嫉妬まで露にしてしまった。
     泣けてくる。自分の卑屈さに。惨めさに。子供っぽさに。
    「お、おう……」
     さすがに今度はアキレウスさんも驚いた様子――
    「まあそりゃあ仕方無いか。俺は確かに強いからな!」
     だったのは、一瞬だけのことで。すぐに呵々大笑してきた。
    「そういう、ところ……!」
    「だがまあそんな俺のことを尊敬しているし好いてるんだろ? マスターは」
     かと思えば、次にはサラッと真実を突いてくる。
    「うう、はい……」
    「なら着いてくるしかないよな? っていうか着いて来れてンじゃあないか」
     俺はもはや涙声で頷く他になく。だって、アキレウスさんのことを尊敬しているし、大好きなのだから。反論も何も本当にない。
     わしわしと頭を撫で回される。アキレウスさんの大きな掌の温もりと感触を噛み締めてしまう俺は、どうしようもなくアキレウスさんを好いている。
     ついさっき頭に昇っていた熱さはどこへやら。
    「……俺そのうち禿げるかもしれません」
     心労で。絞り出せたのはその程度の恨み言だった。
    「はっはっは大丈夫だろ、さっきの夢では変わってなかったし」
     アキレウスさんの調子は変わりはしない。
    「いやでもあの外見は認識上の俺なのでは」
    「だから、大丈夫だって、全部。俺はマスターのそういう性格も全部ひっくるめて好いてるようなもンだし。泣き言ぶつけてくれて大歓迎だから。もっと自分を出してぶつかって来いよ」
     っていうか、大英雄サーヴァントの俺がこれだけ言っても信じないのか、我がマスターは。
     「大英雄」「サーヴァント」「マスター」の部分を強調して言いながら、不貞腐れたような、しょげたような顔も向けてくるのは、ずるいと思う。
    「し、信じます信じます! 未だちょっと大分、アキレウスさんにとっての俺の存在感に自信が無いですけど。そういう所も含めてアキレウスさんのお世話に、ええと、これからもなります……」
    「ん、良かった」
     慌てて甘受の旨を口にすると、アキレウスさんの表情は満足そうな笑みに変わった。
    「……アキレウスさんてそれ天然なんですか? やっぱり天然タラシなんですか?」
    「お、早速ぶつかって来たな。で、俺のどこが天然だって?」
    「もう、そういう所ですっ。時々すごーく弟成分出すの、他所では止めて下さい」
     アキレウスさんは無自覚な分、質が悪いのか、逆にフラグを立てても幸い何事も無く済むのか。いずれにしても、俺は色々な意味でハラハラするのだ。
    「俺に弟成分だあ? はっはっは悪い悪い。良く分からんがまぁ俺に振り回されるのは仕方無いと思え」
    「うう…光栄と思ってますけど……」
    「そうそう。マスター冥利に尽きるって奴だな」
    ――――…………

     アキレウスさんの声が遠くなった気がしていたら、目が覚めた。
     見回すと、あの変に真っ白い部屋ではなく、マイルームだった。今度こそ本当に夢から目覚めたというので間違いなさそうだ。
     結局、あの部屋のあの変なルールは何だったんだ……夢の中の自分達は脱出できたのか否か、あやふやな気がする。それも夢らしい、ということか。
    「んー、お早う、マスター」
     アキレウスさんも起きて伸びをした所で、互いに見た夢を確認する。やはりと言うか何と言うか、同じ夢のようだった。
    「これが未来だとしたら、なかなか慌ただしい日々だろうな」
     アキレウスさんは相変わらずカラッとした調子のままだったが、未来(仮)で俺の使い魔に甘んじていて良いのだろうか。
     言い合いをしておいてアレだが、やっぱり未だに俺には分不相応な気がしてならない。口に出せば夢の中での応酬が繰り返されそうだから、心に留めておくけれども。
    「ん、こう見ると未来のマスターは成長してたみたいだな。少し身長伸びてた気がするぞ。雰囲気も頼もしくなってたしな。うん、これからの成長が楽しみだ」
    「プレッシャーです……」
     身長は確かにそうだったかもしれないけれど。将来ああなると分かっても、内面はこれから磨かなくてはいけないのだ。いや未来が確定した訳でもないのだし……。
    「ま、いくつになってもマスターは可愛いな」
     ぺしぺしわしゃわしゃと雑っぽく頭を撫で回されている内に、悩んでも仕方がないと思えてくる。目の前の白紙化を解決しない事には未来も何も無いのだし。
    「そういえば、何だかあまり寝た気がしないというか……」
    「ああ、分かる。途中すげぇ苛々したしな。アイツの狙いは結局良く分からないが、こうモヤモヤさせることだったんじゃねえか?」
     やや苦々しい表情をしながらアキレウスさんが呪符を弾くと、それは掻き消えるように消失した。
     寝転がったアキレウスさんに倣い、俺も今度は普通に睡眠を取るのだった。

     ちなみに、数日が過ぎても特に変な効果もなく、安心したような、肩透かしを喰らったような俺達だった。
                                    了
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