尾月原稿喉から絞り出した声は酷いもので、それに顔を顰めた月島はぽすりと尾形の背中を軽く叩いた。その衝撃で、溶け出していた自我をかき集めることが出来た。
「大丈夫か、顔真っ青だぞ」
そんな声に縋りたくて、指先が白む程に月島のシャツを握りしめる。行かないで。声に出さずとも尾形は雄弁に訴えていることを、月島は悟ってしまって気まずくなる。生白い肌の男は、騒がしいネオンの光に照らされて今にも立ち消えてしまいそうな気がした。
「あの、貴方は……」
突然現れた強面の男に困惑した勇作はそう問いかける。
「ああ、すみません。私、金神商事の月島と申します。尾形と同部署で働いておりまして」
「そうでしたか。いつも兄がお世話になっております。花沢勇作と申します」
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