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    chiocioya18

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    chiocioya18

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    妖異譚時空 本編の少し前の時間帯
    全ては妄想の産物です
    ラスティカとアーサー編。ほぼ歌って踊ってるだけです。

    #まほやく
    mahayanaMahaparinirvanaSutra

    月花前日譚 五桜雲街。初めて訪れるこの地は名前の通り至る所に桜の木が咲き誇る街。風に舞う花弁に誘われるまま、ラスティカは気がつくと広く立派な庭の中に辿り着いていた。
    さて、ここはどこだろう。

    「困ったな。クロエと待ち合わせしていたのに」
    「誰だ? 」

    きょろきょろと辺りを見回していたら声をかけられた。天狗の少年が縁側からこちらを見ている。警戒と困惑がその表情に表れていた。

    「おや。こちらにお住まいの方かな?」
    「そうだ。来客の予定は聞いていないが、此処に何用だろうか」

    聡明で朗々とした話し方。もしかして身分のある方なのかもしれないが、それにしても聞いていて心地が良い。途端にラスティカの心が弾む。うきうきしたまま、微笑んで挨拶した。

    「こんにちは。僕はラスティカ。道に迷って困っているところです」

    *...*...*............

    「あまりに素敵なお庭で見蕩れていたら、迷ってしまいました」
    「そういうことだったのか。オズ様たちの城は庭も素晴らしいから、見蕩れるのも仕方がない」

    烏天狗の少年はアーサーという名を教えてくれた。ラスティカはアーサーに導かれて一緒に城の出口へと向かっている。生い茂る桜と玉砂利の敷かれた庭も美しいが、真っ白な塗籠に花弁が映える城も優美なものだ。

    「こちらのお城の主はオズ様と仰るのですね。できればお会いして感動をお伝えしたいな。あと、勝手に入ってしまった非礼も詫びなければ」
    「すまないがそれは難しい。オズ様たちは大事なお話し中なのだ」

    アーサーは言いながら自らも少し気落ちした様子だ。オズと呼ばれる人物を大変敬愛しているようでもある、少しでも長く一緒にいたいのだろう。

    「ラスティカが城を褒めてくれたことは後で伝えておこう。だから今は…」
    「では、歌はいかがでしょう?」
    「歌?」

    アーサーの大きな瞳がぱちくり瞬いた。ラスティカが柏手をひとつ叩くとどろん!と鼓が現れる。

    「直接伺ってはお話し中の邪魔になってしまいます。しかしお庭からお話しの妨げにならない程度に歌うだけなら背景音楽としてお楽しみいただけるのでは?」
    「なるほど。いいかもしれない。歌は私も好きだ」
    「では、よろしければご一緒に」

    ポン、ポン、と鼓を打って高らかにラスティカが歌い出す。一小節後からアーサーの歌声も加わっていく。庭の桜も紙吹雪のように二人の周りで踊っている。鼓の拍子に下駄を蹴る音が重なって、即興ながら楽しい曲が作り出されていた。

    「素晴らしい!お上手です、アーサー様」
    「ラスティカの歌も見事だ!これならきっとオズ様も喜んでくださる!」

    互いを褒めあったついでに手を取ってくるくる回っていると、とてつもなく存在感のある妖気が急接近してきた。

    「アーサー!」
    「オズ様!」

    鬼気迫る様子で長い黒髪を振り乱した人物にアーサーが顔を輝かす。ラスティカはひとつ頷くとおっとりとお辞儀をしてみせた。

    「はじめましてオズ様。僕はラスティカ。丁度今、オズ様に歌をお届けしようとしていました」
    「歌だと…」

    挨拶をしてもオズからはビリビリとした敵意がラスティカに向けられたままだ。「オズ様、こちらは…」と説明しようとするアーサーを遮って後ろへ庇おうとしている。
    話を聞いてくれそうにない相手にさすがのラスティカもどうしたものか考えあぐねていると、屋敷の方からオズと同じ角の生えた青年が現れた。

    「ああ良かった。オズがやっちゃう前に間に合った」
    「おや、はじめまして。僕はラスティカと申します。こちらのお城の方ですか?アーサー様やオズ様のご家族でしょうか」
    「やあどうも。俺は竜族のフィガロ。まぁ、同じ家に住んでるから家族みたいなものかな?」

    にこにことしたフィガロはラスティカにも愛想よく挨拶を返してくれた。そして笑顔のままラスティカに問いかける。

    「で、ラスティカは何の理由でこの城に入り込んだのかな。場合によっては痛い目をみてもらうことになるけれど」
    「はい。僕はアーサー様と歌うために…。あれ、違ったかな。ええっと…」

    合唱会が楽しすぎて忘れてしまった。
    アーサーが助け舟を出すまで、オズとフィガロの奇異な視線を受けつつラスティカは苦笑しながら困り果てていた。
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