目が覚めたら朝だった。そんな当たり前の事実が受け入れがたく、漣は目覚めた体勢のまま暫し呆然としてしまった。タケルの家、タケルのベッド。それはいい。目覚める前は夜だったはずで、風呂上がりだったはずだ。準備を済ませてベッドの上でタケルが風呂から出てくるのを待っていたところから、記憶がない。
つまり、漣はそこで寝落ちたのだ。
むくりと起き上がって辺りを見回す。ベッドには漣ひとりしかおらず、寝室にも他の部屋にもタケルの姿はなかった。寝落ちした漣に愛想をつかして出ていったかと考えがよぎるが、そもそもタケルの家だ。漣が追い出されるならまだしもタケルから出ていくのはおかしい。なんにせよ、置いていかれたと悟った漣は言いようのない焦りを覚えた。
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