Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    吉良の作業ログ

    尻叩き用。
    ご一読ください:https://twpf.jp/kira_soko

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 6

    吉良の作業ログ

    ☆quiet follow

    後編の最初を核心突かない程度に。ケツ叩きです。

    ##FT

    シオンの花の咲く丘で【後編】

    「一応確認するが、おまえたちはギルドメンバーとして来たのではなく、グレイの友人として話を聞きにきたんだな?」
     早天の寒風が頬を吹き付けるなか、ぶっきらぼうに投げ掛けられたそのリオンの問いに、ナツは矢庭に首肯した。思考を挟む余地もない様子のそれに思わず眉根を寄せたリオンだったが、どこか納得を含む諦めた表情を浮かべると、ナツの隣に立つエルザに視線を向ける。ナツの返答を保証するように一度ばかり頷いてみせた彼女を認めると、リオンは再度口を開いた。
    「……なら、オレがこれから教えるのは詳しい話を知ってる知人の情報で、教えてやるのはヤツの腐れ縁の誼としてだ」
    「わかっている。面倒をかけてすまない」
    「なんだよ、意味わかんねぇな」
     そう言いながらリオンはギルドから続く街路を歩き出し、エルザたちは言われるまでもなくその後に続いた。委細承知といった体で謝辞を述べるエルザに対し、リオンの確認の意図を把握でいないナツが首を傾げる。その後ろで話が読めずにいるルーシィやハッピーもまた、ナツと似たような困惑の表情でリオンの背中を見つめていた。
    「知人というのはあの村の長のことだ。……今は元、と言うべきか。移住の手伝いが依頼としてきたことがあって、そのときに知り合った」
     歩みを続けたまま振り返らずに答えるリオンの言葉に思うところがあったのか、ルーシィは手を顎に遣って考え込むように目を伏せた。その肩に乗るハッピーがその顔を覗き込むと同時に、はっとした様子でルーシィが背筋を伸ばしたので、驚いたハッピーがあわや落ちそうになる。咄嗟に服にしがみついたことで辛うじて落下を免れたハッピーの文句を聞き流しながら、ルーシィは白い背中に問い掛けた。
    「それってもしかして、ヴァイオレット・アスターさん?」
     彼女の口から飛び出した名前に驚いたのか、やや目を見張ったリオンが振り返る。感心したように肯定した彼だったが、その目からにじみ出る疑念にルーシィは空笑いを浮かべた。もごもごと「図書館で調べたの」と言えば、あなと納得してルーシィから視線を外す。そのまま何も言わずに角を曲がる彼に続きつつ、ルーシィは小声でナツに話し掛けた。
    「つまり、蛇姫(ラミア)の一員として知り得た過去の依頼主の情報を、利害目的に渡すわけじゃないってことね」
     するとナツは足を止めてルーシィを素早く振り返り、「ったりまえだろ!」と声を張り上げた。その反応にルーシィが苦笑するのを余所に、彼は昨日のリオンの発言を思い返したのか、ようやっと合点がいったという表情で独り言ちる。
    「って、あー……だから交渉じゃねえって言ってたのか」
     納得を顕わにしたナツがしきりに頷く
    隣で、ルーシィはため息混じりに苦言を洩らす。リオンの言い分はほとんど方便に近く、決して悪用ではなくとも、グレーゾーンに片足を突っ込んでいると彼女は言う。当然、彼にそうさせているのは紛れもなく自分たちである自覚があるため、その表情にはわかりやすい罪悪感が滲んでいた。すると、神妙な様子のルーシィの肩口からずいと顔を出したハッピーが、通りの良い朗らかな声を発する。
    「引っ越しの手伝いの依頼とか受けるの、なんか意外だね」
     出し抜けに飛び出したその発言はやや慇懃無礼だったが、ハッピーがもつ愛らしさのためか、リオンの気を損ねることはなかった。相も変わらず足早に歩みを進めるリオンが、あくまで簡潔に事情を述べた。
    「荷運びは動の造形魔法を使えば一人で済む。払う報酬額が最低限で済むなら、それに越したことはないだろう」
     淡々とした調子で続けられたリオンの言葉に、一同は思わず押し黙った。非の打ち所がないその回答に、エルザが甚(いた)く感心したのか目を細める。はたと、ルーシィが質問を続けた。
    「廃村になったのは財政難が原因ってこと?」
    「いや、まあそれもあるんだろうが……過疎化も要因の一つだろう」
     リオンはそう言いながらいささか怪訝な表情を浮かべると、断定はできないとしながらも、主要な原因はほかにあるのではないかと語った。財政難や過疎化が原因なのであれば、もっと早くに廃村になっていたはずだ、と彼は言う。「ほかに何か、明確なきっかけがあったんじゃないか?」と言い終えたところで、淀みなく動き続けていた彼の足がぴたりと止められた。
     見れば、一同の目前には一軒の二階建てアパートメントがあった。レンガ造りのその建物は、ところどころに経年を感じさせるものがありながらも、真新しさを感じる玄関扉や花壇に植えられた花の瑞々しさから、人の手によってよく管理されていることが窺える。リオンは迷いなく右手に設えられている階段を上ると、三つあるうちの中央の部屋の前で立ち止まった。ようやっと振り返った彼が、真っ直ぐと視線を向けながら口を切る。
    「話は通してある。だが、詳しい話が聞けるという保証はないぞ」
    「構わんさ、感謝している。……今後もし困ったことがあれば、必ず力になると約束しよう」
     ありがたがって微笑んだエルザがすっと手を差し出すのに、リオンはわずかに目を見張った。一度彼女の目を見ると、ふっと相好を崩して握り返す。その様子を黙して眺めていたナツは、握手を解いたリオンが踵を返そうとするのを認めると、この日だけで見飽きたであろうその背に向かって声を投げ掛けた。
    「おまえも話聞いてけばいいじゃねえか」
     そう大きくはなかったはずのそれは、妙に芯をもってその場に響く。図らずも足を止めたリオンに、ルーシィが追い討ちをかける。
    「そうよ、ここまでしてくれたのって、グレイの……」
     彼女が言い終える前に、素早く半身だけ振り向いたリオンが言葉を被せた。自分たちは腐れ縁でしかないのだと、感情の読めない声が言い含めるようにそう告げる。納得のいかない表情のルーシィが、身を乗り出して食い下がった。
    「兄弟弟子でしょ」
    「元、な。それもオレにしてみれば二十年近く前の話だ」
     そのつっけんどんな物言いに、もどかしげな面持ちのルーシィが歯噛みした。彼の道程のなかで彼らが兄弟弟子であった事実がどれほどの比重を担うのかを知らず、人生における幼少期のほんの数年間がそう大切ではないのだと言われてしまえば、反論ができなかった。理屈にできないものがあることだけを理解して、しかしそれを言葉にできず言い淀む彼女の背後から、強い声が飛ばされた。
    「ただの腐れ縁ってだけなら、なんでここまでできんだよ」
     どうやらナツにはこのままリオンを帰すつもりがないらしく、それに気付いたエルザが洩らしかけたため息を噛み殺す。しばらく静黙を貫いたリオンだったが、ナツの一切逸れない視線に観念したのか、身体の正面をナツたちに向けた。呆れたように、ともすれば困ったようにひそめられた眉を緩めると、とうとうリオンは腹のうちを晒す。存外、やわらかな声音だった。
    「あいつの自滅願望を放っておくのは気分が悪い。だが、オレはあいつの元兄弟子で、本当にそれでしかないんだよ」
     その言葉が表す諦観を、リオンの表情から感じ取ることは叶わない。それは彼が諦念に屈していないことの証左なのか、はたまたとうに呑み下してしまったことの証明なのかを、ナツたちが知る由はない。ただリオンの弁に耳を傾けているばかりの彼らの両目が、真っ直ぐ自らを見据えたままでいるのを理解すると、リオンは息を吐いて言葉を続けた。
    「……勘違いしているようだからはっきり言っておくが、オレはここまでしか手を貸さないんじゃない」
     はたと、ルーシィが瞠目する。今にも踵を返しそうな様子とは裏腹の発言に、どうにもその意図を理解しあぐねているようだった。想定通り、リオンは言い切らぬうちに身を翻す。手を伸ばしかけたナツをエルザが制したところで、冷えた鋭い声が空気を震わせた。
    「ここからはおまえたちに任せるんだ。ことが済んだら教えろ、たとえ結果が芳しくなくてもな」
     それだけ言って、彼は階段を下りていった。遠ざかる足音を呆然と聞き流していたルーシィたちは、音が聞こえなくなった頃に我に返って顔を見合わせる。慈しむような微笑みを浮かべているエルザを除けば、皆一様にひどく間抜けな顔を晒していた。
    「…………訂正。わかりにくさはグレイの比じゃなかったわ」
    「あい…………」
     思い付いた言葉を口まで素通りさせたようなルーシィの発言に、呆けた顔のままハッピーが首肯する。その背後から聞こえたくく、というくぐもった声に三人が振り向けば、エルザが口角を吊り上げながら肩を小刻みに震わせていた。軽い調子で謝罪を入れると、何事もなかったかのように姿勢を正す。
    「昨日言うだけ言って何もせずに帰ったのも、つまりそういうことだったんだろう。行動だけを考えれば、むしろわかりやすいくらいなんじゃないか?」
    「お手上げだっつって帰ったんじゃなかったのか!?」
     エルザの言い分にナツが噛み付く。というよりも、信じられない、という気持ちが強いその反応に、またもエルザが唇を噛みしめる。どうにも、ナツの反応がよほどおかしいらしかった。
    「先入観って怖いわねえ」
     心底から感心したようにルーシィがそう呟くのに、ハッピーだけが深く深く頷いていた。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    吉良の作業ログ

    MAIKINGストーカーネタの導入。少しグロいかもしれない。サバイバーズ・ギルト

     人体がひしゃげる音を聞いたことがある。息をするのがやっとな程の苦痛を味わいながら、原型のない足を引きずって地を這い回ったことがある。
     燃える故郷の光景を今も覚えている。傍で真っ赤に身を染め上げた兄弟の体温の生温かさも、瓦礫から飛び出る手の薬指にはまった指輪が見慣れた母のものであったことも、眼前でうつ伏せに転がる父の身体に深々と突き刺さる鉄柱も、まるで昨日のことであるかのように。
     長い長い歳月を経てもなお、こびり付いたままの記憶が風化することはない。毎夜見る夢がそれを許さなかったのだ。真っ白なはずの故郷は赤く色付き、整えられていたはずの街並みは無惨にも崩れ去り、深く積もった雪がもたらす静謐にまどろんでいたはずの人々は皆、厄災によってその息を永遠に止めてしまった。なんの因果か一人息を続けていた自分だけが瓦礫の海で溺れていたのを、救援に来た軍の先遣隊が引き上げてしまったのが運の尽きだったのだと、今でも思っている。
     潰れた右足が元に戻ることはなく、けれどそれだけで済んでしまった自分は、かれこれ二十年弱もの間、ほとんど死んだように生きてきた。家系図の端っこにいるか 4932

    吉良の作業ログ

    PROGRESS後編の最初を核心突かない程度に。ケツ叩きです。シオンの花の咲く丘で【後編】

    「一応確認するが、おまえたちはギルドメンバーとして来たのではなく、グレイの友人として話を聞きにきたんだな?」
     早天の寒風が頬を吹き付けるなか、ぶっきらぼうに投げ掛けられたそのリオンの問いに、ナツは矢庭に首肯した。思考を挟む余地もない様子のそれに思わず眉根を寄せたリオンだったが、どこか納得を含む諦めた表情を浮かべると、ナツの隣に立つエルザに視線を向ける。ナツの返答を保証するように一度ばかり頷いてみせた彼女を認めると、リオンは再度口を開いた。
    「……なら、オレがこれから教えるのは詳しい話を知ってる知人の情報で、教えてやるのはヤツの腐れ縁の誼としてだ」
    「わかっている。面倒をかけてすまない」
    「なんだよ、意味わかんねぇな」
     そう言いながらリオンはギルドから続く街路を歩き出し、エルザたちは言われるまでもなくその後に続いた。委細承知といった体で謝辞を述べるエルザに対し、リオンの確認の意図を把握でいないナツが首を傾げる。その後ろで話が読めずにいるルーシィやハッピーもまた、ナツと似たような困惑の表情でリオンの背中を見つめていた。
    「知人というのはあの村の長のことだ 3788

    吉良の作業ログ

    MAIKING風邪ネタでナツグレの冒頭。グレイが風邪をこじらせる話。ざっくり時間軸。39.7℃

     起床と同時に確認した時計の短針が左上を指し示していたので、グレイはおやと目を見張った。次いで己の身を襲った悪寒に思わず身震いすると、何事かを理解するよりも早く起こしたはずの上体が後ろへと傾いていく。かろうじて機能した腹筋が衝撃を軽減するも、頭部が枕に押し付けられた途端小さく呻き、強く目を瞑った。
     こめかみを押さえれば、指先には浮いた血管から常らしからぬ脈動が伝わる。拍動に合わせて痛む頭に手を当てながらゆっくりと起き上がると、カーテンの隙間から差し込んだ陽の光に視界が眩んだ。ベッドから抜け出し、足先がカーペットに着いたところに再び沸き起こった凍える感覚で、ようやく自らの身に起こるの異常に理解が及ぶ。茹った頭ではまともな思考が働かず、ずいぶんと遅れた把握であった。
     ベッドサイドに備え付けられた棚の引き出しをひどく緩慢な動作で開くと、ろくに中身に目も向けることもなく手を突っ込んで何かを探す。程なくして引き抜かれた手には体温計が一本握られていた。小さな画面の隣のあるボタンを一度押し込むと、襟首を引っ張って脇に差し入れる。二の腕を押さえ付けながら検温が終わるのを待つ間、グレイ 3536

    recommended works

    p33UczD0G2lwReE

    MEMOドラスレ5人が永遠の眠りについた話(死では無い)。
    設定が色々なところに飛んでいるため(?)深追いはせずに…
    永遠の眠り(ドラスレ5人)ナツ・ドラグニル
    どこかの世界の果てに存在する、炎に纏われた屋敷の最奥に眠っている。ピンク髪の少々幼げな顔が特徴的な青年。傍らにはもう何色か判断できないマフラーが置いてある。いつから眠っているのかは不明だが確実に400年間はたっていると推定される。また、眠ることで魔法の影響により彼の存在を知るものは居なくなった(忘れた)。寝具は焼け焦げた箇所が沢山あるボロボロの布切れが集まってできており、寝具の周りには永遠に消えることの無い黒い炎が燃え盛っている。目を覚ます条件は、彼の事を誰か思い出すことである。

    ガジル・レッドフォックス
    鉱石で覆われた深い谷底で眠っている。黒い長髪で身体の至る所にある鉄製のネジが特徴的な青年。彼同様いつから眠っているのかは不明だが、どのくらい眠っているのかの推測をたてることはできなかった。眠ることで魔法の影響により、誰も彼の居場所を突き止めることが出来なくなった。寝具は表面が凸凹した巨大な鉱石で出来ている。深い谷底に居るが周りの鉱石によって寝具諸共囲まれており、光は僅かにしか入らない。目を覚ます条件は、本当に愛する者の口付けである。
    1290