憧れと後悔「はぁっ!」
ほんの少し早く目が覚め、朝食に向かうまで散歩しようかなと中庭へ足を向けた晶は、ふと立ち止まった。勢いよく何かを振り下ろす音と、気迫の込められた声は、早朝の寒さなどものともせずに繰り返される。
(この声は…カイン?)
中央の国の騎士として、そして賢者の魔法使いとして、晶の手を真っ先に取った男。
立ち去るのも忍びなく、声のする方へと足を向けると、予想通り、カインが居た。
(うわぁ、これはモテる…)
薄着のランニングシャツのような物を着ていて寒々しく感じるはずなのに、肌を伝う汗がそれを否定する。晶は剣術のことは、からきしだ。けれども彼の動きが、剣を向ける先が、立ち姿全てが、晶の目を引きつけて止まない。
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