蝶よ花よ「憧れで蝶が殺せるかって話だよ」
驚いて隣を見ると、きらきらとした瞳はそのままに、みのりさんは微笑んだ。
「他人だからいいんだよ。アイドルって」
俺はまた彼の知らない一面を見てしまい、なんと表現したらいいのかわからない動揺を飲み込んで、机の上のコーラを見る。グラスが汗をかいている。パーティだもんね、これはパーティだよ、と言いながら注いだ彼は口をつけていない。
ピエールを見送って、そのままいつものようにコンビニに行き、いつものように俺の家に来たみのりさんは、今日はいいものがあるんだよとライブBlu-rayを取り出した。俺は作詞作業の続きをするもんだと思ってたからノートを取り出していたけれど、大人しく引き下がることにする。みのりさんがいなければ、こういう勉強は自分から出来ない。「ここだけでいいから」という部分まで慣れた手つきで飛ばされ、「ここだけ見て」と強調してきたその画面の向こうのアイドルはたおやかに笑っていて、アイドルが「偶像」に振られるルビだということを思い出す。作り上げられた神のようだ、と思った。
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