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    新刊のどこかに入る予定 若リゾプロ ふたりともちょっとかわいすぎ問題が発生

    #リゾプロ
    lipoprocessing

    (仮題)Jet Lag狭く埃っぽいホテルの部屋に、大きくはないベッドがまずふたつ。その間に鎮座しているものとは別にもうひとつローテーブルとソファがあるのは、安宿においてその事実だけ取ってみればラッキーだ。小さな不幸は、そのローテーブルがリゾット・ネエロには少し低すぎることだろう。そこに置かれた古い電話機から彼の手元まで、受話器のコードは目一杯に伸びていた。プロシュートも最近気づいたことだが、この男は電話しながらつい立ち上がる癖がある。



    「部屋は簡単に見つかった、とりあえず一週間だ。金は払ってある。仕事自体はもう少しかかるだろうが……あぁ。状況次第だな」
    片側だけの会話を聞くと人は苛立ちやすいらしい。でも、リゾットの声によるそれは特段プロシュートの機嫌を損なうことはないようだった。相手がチームの誰かだろうとわかってから後は完全に聞き流して、プロシュートはベッドに広げた地図を見るのに集中しようとする。対象者にとって重要な場所と市街地と駅、最低限の地理だけでも頭に入れておきたかった。
    入れておきたかったが、目蓋にへばりついた睡魔が邪魔をする。
    「東海岸だから時差は六時間だ、到着は朝方になるから寝ておくといい」
    「いきなり寝ろって言われて眠れるかよ」
    プロシュートの文句にまぁそうだが、と返していた男も寝不足のはずなのに、その様子は見て取れない。だいたいこいつがテーブルを占領するから悪いんだ。代わりにオレはベッドに追いやられて、寝転がって地図なんて見てたら眠くなるに決まってる。当然だ。ふああ、と欠伸をするとリゾットがこちらを向いたのに気付いたが、もう気にしていられないほど、眠い。
    プツッと軽い手応えがあった。ペンの先が地図に刺さっている。
    そこで何かが切れて、プロシュートはベッドに突っ伏した。もう知らねぇ。あいつの声が無駄に眠気を誘うのが悪い。
    「おい、プロシュート……」
    リゾットが言いかける。
    ガチャン!
    「VAFFANCULO」
    悪態はプロシュートに向けられたものではない。コードを引っ張られすぎた電話機がついにローテーブルから落ちたのだ。
    しかし、電話口に伝わったのはリゾットの悪態だけだ。受話器越しに大音量で返ってくる数か国語にわたる悪態で、相手がソルベだったことが判明した。
    「落ち着け、お前に言ったんじゃあない。アクシデントだ」
    リゾットの渋い顔にうっかり吹き出してしまって睨まれる。『座って喋れよ』と声を潜めてソファを指差すと、渋い顔のまま彼は従った。拾った電話機は膝の上に乗せて。窮屈な体勢のまま、何かメモを取りながらリゾットはまた話し込む。
    笑った勢いでプロシュートもすこし目が覚めた。地図を眺めるのは諦めて上体を起こし、ウーンと伸びをする。身体を解そうとベッドサイドで軽くジャンプすると、サイドテーブルがガタガタと揺れた。これは良くない。ストレッチするような場所もないから、適当な壁に向かって逆立ちしながらプロシュートは考える。このまま寝てしまっては時差を引きずって後が辛くなる、地図なんか眺めているよりそこらを回ってきた方が手っ取り早い。リゾットには適当にメモでも渡して出るか、と思ったところで長い電話が終わった。

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