白いリボンかもしれない。点と点が線になるように。
思い返せば、点になり得る出来事はずっと前からあったはずだ。今湧き上がったこの感情の原点が何処にあるかは正直分からないが、きっと佐倉と出会った頃とかだと思う。
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「プリントを!!!回して欲しいです!!!」
クラスメイトについての参考実験中。
キラキラした笑顔で佐倉に出された要望、恋と何も関係無さそうな行為だった。
変な事を言うな…と思いつつ、別に佐倉の頼みを断る理由もないので普段通りにプリントを回してみる。
なんてことはない、ただ後ろへ回すだけ。
いつもと同じ様に振り返ってプリントを渡す。
だが「後ろへ回して」の一言を添えた所で手が止まってしまった。手だけじゃない。呼吸も、時間も、全てが止まってしまったようだった。満面の笑みでプリントを受け取る佐倉に、俺は今何を感じたのだろうか。
もう一度、もう一度とせがまれる度にプリントを回す。回す度に嬉しそうに笑う佐倉を見ていると、どうにも心がそわそわして落ち着かない。
こんなにそわそわしていたら授業に集中なんてできるわけがないな…などと何処か他人事のように考えていると、いきなり背中をつつかれ、驚いた身体が小さく跳ねた。
「前に回して」
内緒話のように顰められた声に思わずたじろいでしまう。俺と佐倉、二人だけの隠し事をしているような妙な気持ちになってしまった。別に佐倉にそんなつもりはないだろうに。こくり、と喉が鳴る。
声は裏返っていないだろうか。
変な顔になっていないだろうか。
手は震えていない?
ちゃんと佐倉の目を見れていた?
途中からぐるぐると考えすぎてしまっていたのか、正直最後の方はあまり記憶が無い。ただ、プリントを受け取った時に微かに触れた指先や、つつかれた背中がなんとなく熱いような気がしてしまう。
クラスメイトだったら。こんな小さな動揺が積み重なって恋に発展するのではなかろうか。テスト用紙や学級通信を後ろへ行き渡らせる行為の一つに織り交ざる小さな好意が積み重なって、「恋」という感情になっていくんじゃないか。
そして、今日感じた動揺は多分きっとそういう事なんだろう。この「点」が繋がって「恋」という線になるとしたら。
原点はきっと、