Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    ほなや

    腐ってる成人。何とか生きてる。気ままにダラダラしたりゲームしたり。
    気の向くままにはまったものを投稿してく。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 34

    ほなや

    ☆quiet follow

    小説18作目。FCゲーム『スiクiウiェiアiのiトiムi・ソiーiヤ』ハック×トム。
    ※キャラ捏造、年齢操作有

    #腐向け
    Rot
    #BL小説
    blNovel

    このまま、ずっと村の収穫祭で盛り上がる人々の群がりから抜け出し、ハックは急いで森の中へと入っていった。
    夜闇に包まれた森は文字通り視界が利かず、前に歩くことすらままならない。多い茂る木々に包まれた異様なまでの静けさも、人々に恐怖を植え付けるには十分過ぎるほどだった。
    だが、物心付いて間もなく1人でこの森に住んでいたハックは勝手知ったると言わんばかりに、足の速度を落とすこと無く森の奥へと進んでいく。勿論、微塵も恐怖は無かった。
    川のせせらぎの音が聞こえてくる。足を進めると、ミズーリ川が見えてきた。ハックは川流れに沿って道を進み、鬱蒼とした木々を掻い潜っていく。掻い潜った先に、周囲の木々より太く大きい1本の木が立っている。足を一旦止め、息を吸い、吐いた。そっと大木に近付いていくと、微かにだがずずっと鼻を啜る音が聞こえてきた。籠った音ではあるが、ハックの耳にはしっかりと聞こえた。そして今、ここに誰がいるのかも─
    大木の左側へと歩き、身体を右に向けると、垂れ下がった蔦の向こう─幹の真ん中に大きな裂け目によって出来た、人1人なら十分入れる穴があった。顔を近付けて蔦越しから見ると、誰かがいた。ハックはそれを見た瞬間自分の中にあった焦燥が消えていくのを感じた。ほっと息を吐き、苦笑を浮かべながら、右腕で蔦を乗せるように退けて目の前の人物に声を掛けた。

    「トム」

    ハックの目の前には、膝を抱え蹲っている青年─トムがいた。
    トムは名前を呼ばれ、一瞬肩を僅かに震わせた。だが顔を上げることはなく、時々喉を引き攣らせてはずびずびと鼻を啜っていた。

    「トム」

    覗き込むように顔を近付けながら、もう一度、囁くように優しく名前を呼ぶ。
    先程と様子は変わらない。その場を動かずじっと見守っていると、重い麻袋を慎重に持ち上げるかのように、鼻を啜りながらゆっくりと顔を上げていく。
    トムは泣いていた。目は腫れ上がり、蒼の瞳の中に赤が滲み交わっている。ここに来るまで既に沢山の涙を流していたからか、下瞼からの顔の殆どの部分─鼻の下は鼻水も─が濡れていた。
    ハックはそんなトムの顔をじっと見つめ、尻餅は付かずしゃがみ膝を抱えるように両手を回した。そして迷子の子供を見つけることが出来たような、安堵を含んだ目を向けこう言った。

    「やっぱりここにいた」

    その一言に、トムは返事の代わりにもう一度鼻を啜った。
    トムは何かあった時─主に嫌な思いをした時、必ずこの大木の穴の中に駆け込んで今のように蹲ることがある。何よりこの場所は森の中でもより奥へと入り組んでいおり、滅多に人が立ち寄らない。そのため、こうして籠るには打って付けの場所なのであった。
    涙で濡れた瞳をハックに向けるトム。最初は、回りを纏う空気は何処か警戒と困惑があった。だがハックを認識した時には、僅かに困惑を残しつつも安堵を漂わせていた。
    ハックは穏やかな笑みを浮かべながら、膝を抱えるトムに優しく声を掛けた。

    「急にいなくなるから心配したんだぞ?」

    真正面から掛けられた聞き馴染んだ穏やかな声に、トムは悲しい気持ちが僅かに薄れていくのを感じた。だが、その場から動く気配は無かった。外へ出ることを拒否するかのように、更に膝を身体に引き寄せて左手首を掴んでいる右手に力を込める。
    頑なに何も言おうとしないトムに、ハックは困惑するでもなく焦燥感に駆られるでもなく、ただじっと見守っていた。トムの口から、何かを発するまで。
    しばらくそうしていると、ぼそりと声が発せられるのが聞こえてきた。

    「…てた」

    極々小さな声。よく聞き取れず、ハックはん?と喉から発し首を傾げた。耳の後ろに手を添え、何とか聞き取ろうと耳をトムの方へと近付ける。そうすると。

    「ハックと、トレーシーが、すごく、お似合い、だって」

    しゃくり上げながら、トムは懸命に言葉を紡いでいく。口が膝で隠れているため籠った声ではあったが、それでもしっかり聞き取ることが出来た。
    ようやく理解した。何故トムがここへ逃げ込んできたのか。そして、こんなにも泣きじゃくっているのかも─

    「すごく、ひっ…楽しそうに、ひぐ、話してるの…見て、うぇっ、みんなも、そう、言ってて」

    嗚咽を交えながらも吐露されていくトムの心情。もしこれを他の村の住民が聞けば、それがどうしたというのだろうという内容。だが、ハックにはこれがどういうことなのか察することが出来た。それと同時に、心の中に溢れんばかりの愛しさが込み上がっていくのを実感した。

    「だから、おれっ…」

    尚も言葉を続けようとするトムに、ハックは手を伸ばした。濡れた頬に手を添えられ、ごつごつした手の平の感触でびくりと震えるトム。ハックは落ち着かせるように、親指で頬を一撫でする。すると、トムは恐る恐る俯かせていた瞳をハックに向けた。ハックは潤んだ蒼の瞳を真っ直ぐに見つめ、唇を開いた。

    「聞いてくれ、トム」

    穏やかな、そして真摯を含ませた声でそう言って、トムははっと息を呑む。数刻間を置き、ハックは言葉を続けた。

    「トレーシーとは何も無い。向こうから話し掛けられて、世間話をしてただけなんだ。それを周りが囃し立ててある事ない事言って盛り上がっちまって…」

    一言一句漏らさないように、目の前の青年に真実を伝えていく。これ以上、丸い瞳から涙が零れ落ちないようにするために。

    「俺、1秒でも早くトムと一緒に歩き回りたくて。それで会話を切り上げたんだけど、どこにもいなくて。で、トムが行きそうなところを探してったんだ」

    「トムに会いたい。声が聞きたい。いっぱい話したい。それだけを考えてここに来たら、いた」

    「いた」に含まれた心底嬉しそうな声。ハックの表情は声同様に満面の笑みを浮かべていた。
    絶え間なく流れていた涙が止まり、トムはその慈しむような笑みに釘付けになった。これまで幾度とハックの笑顔は見てきたが、こんなにも心が満たされていくのは初めてかもしれない。そして、ぽかぽかと温かくなっていくのも─
    ハックは頬に手を添えたまま、反対の手と両膝を地面に付け、身を乗り出し顔をトムの方へと近付けていく。互いの鼻先が触れ合い、そこでぴたりと止める。覗き込むように1ミリも逸らさずに瞳を見つめるハックに、トムはひゅ、と短く息を吸った。その目が意味するものを悟り、トムもまたハックの瞳を見つめ返した。そして、ゆっくりと瞼を閉じていった。それを肯定と捉え、ハックは右へ首を傾げトムの唇と己の唇を合わせた。
    触れ合うだけのキス。数刻ほどそうしていると、ハックが啄むように唇を食み始めてきた。

    「ん…」

    擦れ合う唇の感触。初めてではない筈なのに、唇から全身へと伝うように心地良くなっていく感覚は相変わらずだった。
    しばらく啄み合い、ちゅぱ、と粘膜の音が徐々にはっきりと耳に入っていく。目を閉じているのもあって、尚のこと身体が火照り興奮が高まっていくのを感じた。そうしてキスを堪能し心地良い空間に浸っていたその時、不意にキスが止んだ。どうしたのかと思い薄らと瞼を開けると、ハックと目が合った。そして、右の親指で上唇を押し上げるように触れられているのが分かった。
    トムはそれがどういう意味なのか察した。心臓が高鳴るのを感じ、ゆっくりと強請るように口を半開きにする。これから起こることを待ち侘びるかのように─
    ハックはトムのその仕草に目を細め、もう一度口付ける。今度は啄みはするものの、先程よりも粘膜音が大きく響いてくる。再び興奮が高まってきたその時、咥内にぬるりと何かが入り込んできた。

    「ふぅ、んっ」

    侵入してきた肉厚の舌が、トムの舌を撫で、絡め取る。ざらついた表面が擦れ合い、全身に快感が駆け巡ってくる。
    もっと感じたい。1秒でも長く、この快感の波に浸っていたい。その思いは増長していくばかり。ならばと、トムはずっと受け身だった舌をおずおずと突き出し、真似るようにハックの舌と己の舌を絡ませた。
    ハックは絡んできたトムの舌に一瞬目を見開いた。だが直ぐに受け入れ、より深く舌を侵入させていった。交わる唇からぴちゃぴちゃ、と響く粘膜の音。森の静けさが、より音を卑猥にさせている錯覚に陥っていく。
    どのくらいそうしていただろうか。実際にはそれほど時間は経っていないだろう。だが、もうずっと前からキスを交わしているような気にさえなってくる位には互いに没頭していた。
    それから幾許の時間が経ち、どちらかともなく唇を離した。下唇から銀色の糸が引き、ぷつりと切れた。は、は、と漏れる熱い息。荒い息を吐き呼吸を整え、互いに見つめ合った。目尻は下がり頬は紅潮し、その表情は正に妖艶の一言だった。
    呼吸が落ち着いてきた頃に、ハックがトムの腕を掴み引き寄せ、包むように抱き締めてきた。宝物のように大事に大事にと包む腕の中で、トムは今しがた堪能したキスとは違う心地良さを感じた。

    「トム、村に戻ろう」

    耳元に、ハックの優しく穏やかな声が囁いてきた。右手の平で頬を添えられ、ブラウンの瞳がトムの蒼の瞳を覗き込む。
    このまま、吸い込まれてしまいそうになる─
    トムはそっとハックの背中に腕を回し、脇を挟むようにして両肩を掴んだ。己より厚みのある胸板に顔を埋め、ぼそりと呟いた。

    「…まで…」

    声が篭って何を言ったのか聞き取れず、ハックはん?と喉を鳴らし首を傾げた。そのままじっとしていると、また声がした。今度は篭ってはいるものの何とか聞き取ることが出来た。

    「もう少し…このままでいたい…」

    表情こそ見えなかったが、耳裏と白い項が熟れたトマトのように紅潮しているのをはっきりと瞳に捉えた。抱き着いたまま顔を埋めたトムの言葉とその仕草に、ハックは一層愛しさを募らせていく。そして、恋人を抱く腕に少しだけ力を込めた。優しく、しかし決して逃がさないように─
    穏やかな風が吹き、覆い茂る木々の葉が擦れ合う。2人の青年は、風や木々に見守られるように抱き締め合っていた。時間の許す限り、ずっと─
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    片栗粉

    DONEうちの子(侍)×うちの子(詩人)のBLです。すけべにいたりそうな雰囲気です。キャラ設定はこちらをご覧ください→https://poipiku.com/8793653/9349731.html
    雨とセンチメンタル 雨は時々、自分を感傷的にさせる。黒衣森は雨が降っていることが多く、必然的に雨の日には嫌な思い出が付きまとう。
     ここラベンダーベッドも例に漏れず雨が多く、まさに小雨が降り出したところであった。
    「少し夜風にあたってこようかな」
    ユリウスはエールの注がれたジョッキをぐいと飲み干して席を立つ。玄関扉を押すと微かに聞こえる雨音。
    「一服したら戻るよ」
    ひらひらと手を振って、扉を閉めた。玄関ポーチで感じる夜の風は、酒を飲んで少し火照った体に心地良い。ふうと息を吐いて煙草に火を点けた。
     たまたま、偶然、こればかりは仕方ないと思っているが、雨の日に母が亡くなったのを思い出しては感傷的になる。
     口にくわえた煙草を吸い、細くゆっくりと紫煙を吐き出す。ユリウスは普段であれば煙草を吸わないが、時々こうして感傷に浸る際に1人で嗜む。冒険稼業の合間に各地で集めた煙草をひとつひとつケースに収めて持ち歩いている。今日のは林檎の甘酸っぱいフレーバーだと店員から聞いていた。林檎の甘い香りと爽やかな酸味が口内に残る。
    2805

    嗟弓@ A29393221

    DONEアテンション
    BLオリジナルストーリー 異世界現代風 小説参考キャラビジュイラストあり
    他サイトに掲載済み
    ね、見て綺麗かつては人間が支配していた青い星。その支配はある日を境に変わってしまった。人間以外の動物が人間と同等の知を持ち、四足歩行を突如として始めたのだ。動物上分類で、自らと種類が異なると相手を他種族と呼び、逆もそう呼んだ。人間の築いた文化は崩れ、元々飼われていた動物の文化と混ざり、新しいものとなった。そこで起きた社会問題についてこの本では解く。
    1〜
    『他種族と混ざってはいけない』これはこの世界に周知されたルール。
    他種族を決して愛しても、恋をしていても。体を重ね、一線を越えることはこの世で社会的に死ぬのに等しい。周囲にバレると死刑は確定する。
    もし、仮に他種族と体を重ね産まれてくる子がいるのなら。その子はまず死に至る。有名かつ常識的な話。自らの持つ種族遺伝子とパートナーの持つ種族遺伝子が別である…つまり他種族同士場合。その遺伝子同士は決して結び付くことはない。ゲイやレズ…同性同士では子が孕めないことに似ている。ところが、それらと違うのは腹を大きくできるところだ。しかし残念ながら、腹を痛めて産む子は生物ならざる姿、形で産まれる。そして半日もすれば死に絶える。肺も、エラもなく心臓どころか、脳も骨もない体で産まれ息もできず死ぬ。
    6629

    recommended works