想いを探していつもと変わらない煌びやかで楽しいセカイ。
そんな所にも暗くて狭い、何も無い時間が存在するらしい……
セカイの主と限られた者しかしらない…知る特別な時間が…。
そしてどこからともなく流れるピアノの音。
ピアノが知らせる主の危機。
そこが存在するようになったのはいつからなのか……?
そして、暗い底に堕ちたこのセカイの主を彼は救うことができるのか。
……オネガイ……オレヲ……
┈┈タ ス ケ テ ク レ( コ ワ シ テ ク レ )┈┈┈
最近、司は眠気を感じなくなってきていた。
特に寝すぎてる訳でもない、むしろ床につくが一向に寝れず、目を瞑ってもすぐ目が冴えてしまい、結局朝まで起きている事が多くなってきていた。以前はそんな事たまにしか無かったのだが最近は更に多くなっていた。
司は気づいたらセカイへと足を踏み入れていた。
今日は天気が良く、空気も澄んでいたので、
司はいつも通り屋上へ行き、類と昼ご飯を食べていた。
他愛もない会話をしながら過ごしていたが、
ふと隣の類の顔を見た。なぜだか分からないが最近、彼を見ると心がポカポカしてくる。
友達とこんな会話をするのは司にとってそう多くはない。いや、ないかもしれない。
確かにクラスメイトには好かれているし、司のキャラクター性のお陰で話しやすいということもあるが、ここまで楽しく話してない。
こんなに楽しく話せるのは彼しか居ない。
ショーの事を話すことが多いが、それでも司はこうやって類と2人で話すのが嬉しいし楽しい。だからこそ彼が他の人(クラスメイト)と話しているとなんかモヤッとすることがある。
オレだけを見て欲しいと思ってしまう。
でも、この感情は持っていてはいけないと司は思った。これは類に迷惑をかけてしまう邪魔な存在なんだと。すぐに捨てるべき、忘れるべきモノだ。……どうすればいいか……KAITOあたりにでも相談してみようと考えていると、
「?…司くん?どうかしたのかい?」
眉間に皺を寄せ考え込んでいた司に彼が話してかけきた。
『む…何かあったか?』
「いや、司くん眉間に皺を寄せ考え事してたからどうしたのかなって思ってね?」
『そんなに酷かったか?…単に今日の夕飯なににするか考えていただけだぞ!』
「そうかい??それならいいんだけど…?
で、それでね…」
軽く誤魔化すと、類は何も言わず話の続きを始めた。とても楽しそうに演出の話をしている類の事をみて司は改めて自覚した。
自分が恋をしているのだと。
それと同時にそれは今すぐに捨てなくてはならないんだと。
その晩、いつも通り寝れなかった司は昼間、類に抱いた感情をどうするべきかセカイへ向かった。
曲を再生してすぐ目に入ったのはいつものセカイではなかった。
いや、いつものセカイではあるが賑やかで楽しい雰囲気は感じられず、むしろ静か過ぎてビックリする暗い。
ふと観覧車の方を見ると、
いつもなら無いはずのグランドピアノがポツンと置いてあった。
『何故、あんなところにピアノが?…っ!』
段々と近づくとピアノの音が聞こえてくる。
司は引き寄せられるかのようにピアノに近づく。
流れてくる曲は恋の歌。
……どうやら探していたKAITOが弾いていたようだった。
「…おや、司くん。今日も来てくれたんだね?」
『あぁ、眠れなくてな…それより今の…』
「うん、なんか弾きたくなってね。
…それより司くん、用があったんじゃないのかい?」
『うん…あのな…』
司はKAITOに類に持ってしまった恋という感情をどうすればいいのかと相談した。
それを聞いたKAITOはウーンと考え込んでいた。そのまま黙ってしまった。
『KAITO??』
「方法は……」
『…その様子からしてあるんだな?言ってくれないか?』
KAITOは首を横に振る。
理由を聞いてみようとしたが、その瞬間司の足元に空いた穴へと司が落ちる。
「司くん!!!」
驚いたKAITOは司の手を掴み引き上げようとしたが掴みきれず、彼はそのまま奈落へと落ちていった。
意識がなくなる前に聞こえたのは、KAITOの叫ぶ声と
先程 KAITOが弾いていた恋の歌だった。