8.B(side:H) 季節が進むのは早いものでそろそろ冬至をむかえつつあった。距離は離れているものの共に気候が温暖で冬にあまり雪の降らない地方出身であるヒルダとクロードは襟巻や手袋が手放せないがファーガス出身の学生たちは標高の高いガルグ=マクで冬を迎えているのにまだ薄着で修道院内を闊歩している。時期が時期だけに士官学校の学生たちの話題は自然と白鷺杯や舞踏会のことが中心になりつつあった。金鹿の学級はクロードをはじめとして舞踊に興味がない者が多いが前節ルミール村で地獄のような光景を目にしたこともあり皆、気分を変えたがっている。ヒルダのように楽しみにしている者も舞踏会という行事に対し拒否感を示す者もいるが考えが違う者同士ありやなしやと語り合い盛り上がることで必死に前節の恐ろしい記憶に抗っていた。
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