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    Kk_moon2307

    @Kk_moon2307
    お題SSや人目を憚る小話置き場です。たまったらまとめでpixivにもっていくかもです~(_ _)

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    Kk_moon2307

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    忘羨ワンドロワンライ(@1hour_mdzs)のお題『傘』を拝借いたしました😊
    R指定で考えた話だったのに辿り着きませんでした💦
    雨に濡れる魏嬰を藍湛が迎えに行く話です。

    #忘羨ワンドロワンライ
    wandolowanRai
    #忘羨
    WangXian

    雨に濡れれば「……これは参ったな」

     魏無羨は降り頻る雨に、ひとつ息をつき空を見上げた。
     雲深不知処を出たときには晴れていたのに。
     この時期は雲の動きがはやく、急に天候が変わることもある。
     とはいえ、あまり荷物を増やしたくないがために笠を用意してこなかったことは己の過失で、雨を恨んでも仕方ない。
     屋台の軒下で雨足の勢いが収まるのを少し待ってはみたものの、当分その気配はない。

    「藍湛、帰ってきてないといいんだけど」

     頼まれた仕事で朝はやく出た藍忘機は、日が暮れる頃には戻ると言っていて、魏無羨は特に用事もないから留守番をしていると彼に告げていたのだ。
     しかしじっとしていることが苦手な魏無羨が、遊び相手もいない雲深不知処で一日時間を潰せるはずもなく、彩衣鎮で目的もなく屋台巡りに繰り出していたわけだ。
     半炷香ほど留まっていたが、やはり雨が止む気配はない。
     これ以上遅くなれば、日暮れまでに雲深不知処に戻ることは難しい。
     藍忘機が帰ってきて留守番をしているはずの魏無羨がいなければ、過保護な彼は心配するかもしれない。

    「行くか」

     魏無羨は意を決して軒下を飛び出し、雨中を駆けた。
     すぐに全身ずぶ濡れになり、晩秋の冷たい雨に濡れた衣が肌に纏わりつき、じっとりと体を冷やしてゆく。
     冷泉で冷たい水に慣れてはいても、自分から入るのと浴びせかけられるのとでは体感が違う。
     走っても結局は雨に晒されることに諦めた魏無羨は、歩調を緩めて顔に張り付く前髪を掻き上げる。
     すると突如雨粒が肌を打たなくなり見上げれば、白い傘が魏無羨の頭上に掲げられていた。
     魏無羨は振り向き様、傘の柄を握る手を取り軽く引いて傘を少しばかり傾けると、その持ち主の唇をちゅっと啄んだ。

    「こんなとき傘だと便利だよな、藍湛?」

     雨天で人通りも疎らとはいえ往来で、しかもここは雲深不知処の膝元で、藍忘機の顔も知られているはずだ。

    「……魏嬰」

     やや困ったような声で名前を呼ぶもそれほど動じず、空いた手に持った布で濡れた顔を拭いてくれる藍忘機に、魏無羨はさせるがままで尋ねた。

    「もう帰っていたのか?静室にいないから迎えに来てくれたんだ」

    「うん」

     魏無羨の言葉に藍忘機は頷く。
     雲深不知処にいなければ彩衣鎮にいるだろうと踏んだのだろう。
     いまは至って平穏だし、いる場所の見当がついているのであればわざわざ迎えに来るまででもないだろうが、雨に降られてしまったからか。

    「助かった。さすがに帰るまで雨に当たるのかと思ってたら辟易してき……っ、くしゅん!」

     首を竦め苦笑する魏無羨の嚔を聞いた藍忘機は、一瞬眉間に皺を寄せるがすぐに彼の手を取り歩き始める。

    「藍湛?どうしたんだ?帰り道はそっちじゃないだろう」

     藍忘機は魏無羨の声を聞いているのかいないのか、答えずにただただ歩き進めてゆく。
     こういったときの藍忘機は何を言っても返答しないので、魏無羨も引かれるままついていくしかない。
     そうして辿り着いたのは宿だった。
     含光君の突然の来訪に女将は驚いたようだったが、傍にいる濡れ鼠の魏無羨に察したようですぐさま一部屋用意し、風呂桶と湯も用意してくれる手際のよさだった。

    「しっかり温まって」

     藍忘機は魏無羨の濡れた衣を引き剥がす勢いで脱がせ、風呂桶にぐいぐい押し込む。

    「判ったから押すなって。濡れるのくらい大したことなかったのに」

    「冷たい雨に濡れた衣は体の熱を奪うし気の巡りによくない」

     頭を風呂桶の淵に乗せ、寝そべるように湯に浸かる魏無羨の手の届く場所に天子笑の甕を置いた藍忘機を眺めながら、魏無羨は足で軽く湯を蹴った。

    「酒を呑みながらもいいんだけど、一緒に入らないか?」

    「私は後でいい。きちんと温まりなさい」

     にべもなく断られ、仕方なく天子笑を呑みつつ暫くぱしゃぱしゃと湯のなかを揺蕩い、沈んだところで藍忘機の腕が伸びてくる。
     上半身を起こされたところで、待ってましたと云わんばかりに両腕を藍忘機の首に巻き付け、風呂桶に引き摺りこもうとした魏無羨だったが、すでにその企みは見破られていた。

    「……君は大人しくしていられないのか」

     体幹がしっかりしている藍忘機は、魏無羨の行動を先読みしていたこともあり、足腰にぐっと力を入れて堪えたのだ。
     溜息をつく藍忘機に、魏無羨は彼に絡めた腕を解放することなく、艶を含んだ瞳を細めて笑む。

    「もう十分温まったよ。……確かめてみる?」

     魏無羨が藍忘機の口角に唇を寄せ舌先で突けば、閉じた唇がうっすらと開いた。
     魏無羨はするり、とその隙間に舌を滑り込ませ、口腔内で横たわる藍忘機のそれを掬い上げると、眠れる獅子を起こしてしまったようだ。
     藍忘機の片方の掌は魏無羨の後頭部をがっしり掴み、自身の領域に踏み込んできた酒が香る舌に食らいつく。

    「ん……っ、んん……」

     舌を絡み取られ吸われ、いつしか逆に口腔内に侵入されて粘膜を舐られてしまうと、魏無羨は息苦しさと首筋から背に沿っておりていく痺れに堪らず藍忘機の抹額の端を引いた。
     すると、藍忘機は唇を放さぬまま外衣を開き、その内側に風呂桶から上げた魏無羨の肢体を包んで寝床へと運んだ。

    「……温まっていただろ?」

    「まだ足りない」

     魏無羨が口吻の合間に囁けば、藍忘機は己の衣を脱ぎ捨てつつ僅かに掠れた声でそう答える。

    「だったら、お前が満足するまで俺を温めて。なあ、藍……」

     魏無羨の言葉は、藍忘機の唇の奥へと消えていった。
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