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    ku_row3

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    ku_row3

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    ※金光瑤の独白
    ※捏造死後の話
    ※ほんのり曦瑤気味
    ※仄暗い雰囲気
    大丈夫な方のみお読み下さい。

    #金光瑤
    jinGuangYao
    #MDZS

    独り路タン、タン、タン
    男は真っ直ぐな一本道を、真っ直ぐ進んでいき、その足音が反響した。彼が歩いた道の後の脇には真っ白な花が咲いていたが、それら全てが真紅に染まっていく。

    男にはここが何処か解っていた。
    同時に、自分が何故ここにいるのかも理解していた。
    (何もない、ただ真っ暗な道。...地獄という所は、存外つまらない所だな。)

    生前自分がしてきた事は悪と罵られてきたが、そこには何の後悔もしていない。為すべきことをしたのだ。思えば、己が運命はどこまでも負の感情に満ちていた。救いようのない父親、どれほど誠実を尽くしても出生の身分差で自分という存在を絶対に認めなかった大勢の人間達。初めて得られた信頼はやがて疑念へと変わり、いつしか嫌悪へと変わり果てた義兄弟。病の元になるモノは放っておくわけにはいかない。それはいずれ全身を巡り、死に至る。己の体を蝕む病に対して自分がすべき事は『元となりえる可能性を全て取り除く』ことだ。

    けれど最後の最期に切り離せなかった想いがあった。
    それは今更彼に届くことはないけれど、確かに自分の中にずっと大切に仕舞っていたもの。大切な宝物のようなもの。

    あの日、自分の着飾った仮面が剥がれ、そこに隠されていた焼け爛れた悍ましい傷痕を見てしまったかのようなあの人の心底傷付いた表情。初めてとうに捨てたはずのものがズキリと痛むのを感じた。
    (失望しましたか?これが私ですよ。これが人間の本質です。こうなるまで貴方には見せなかった、本当の『私』です。)
    世の全ての悪事にはいずれ終焉が来て、それ相応の報いが来るのは分かっていた。分かっていて、それを最後までやり遂げるつもりでいた。だから今更何をしたところで、帰るべき場所など何処にもない。振り返ることを許される時はとうに過ぎていて、二度と取り戻せないと気付くのも遅過ぎたのだ。

    (だからこれが、私にとって相応の結末なんだろう。)
    自分の歩いて来た道が血塗れのことくらい、自分が一番よく分かっていた。だからこそ、唯一彼だけには知られたくなかった。自分の歩んだ道を見えないように見せかけの道を用意し、その道を共に歩むように誘導していたのだ。
    彼と過ごしたあの夢のような大切なひと時、それだけは『無かったこと』にはしたくなかったのだと死の間際に嫌と言うほど思い知らされてしまった。

    (まぁ、あの人とこちらで会うことなどありはしないでしょうから、せめてここで想いを引き摺るくらいは許されるだろう。)

    男は僅かに寂しげな笑みを浮かべると、ここが地獄ならばきっとどこかであの悪童と会う事もあるだろうと、とある少年のことを思い浮かべた。



    そうして、男はまるで自分の庭を歩くような優雅な足取りでボタリボタリと血を滴らせながら暗闇の中を進んでいくのであった。
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