0.睡眠導入話題 ユウキが上手く眠れなくなったのは、突然のことだった。
何の前触れもなく、夜に長い時間眠れなくなってしまったのだ。
上手く寝付けない、すぐに目が覚める、昼間は眠くて行動が鈍くなる、と言った感じで、それはそれはよろしくない兆候だ。
快活にしていたユウキがやや塞ぎがちになったことに、いち早く気が付いたのは、驚くことに、ここしばらくは遠距離の付き合いになって疎遠になってしまっていたツワブキ・ダイゴだった。
話すつもりはなかったのだが、何故かダイゴの口車に乗せられて、ユウキはダイゴに近況を詳しく話してしまっていた。それもハルカやミツルには隠し通していた体調不良の発端も含めた、全てを。
「自己管理がなっていない」と怒られると思ったユウキだったが、意外にもダイゴは休養と睡眠導入方法を提案した。
「薬やポケモンに頼るという方法もあるけど、それをしていないということは、ユウキくんはまだ自力で眠れそうだと思っているわけだよね。それなら、睡眠リズムをもう一度作ってみるというのも、良い方法だと思うんだ。」
「睡眠リズム……」
「そう、だから、ボクの家で暫く、睡眠合宿のようなものをしてみないかい?」
「えっと、そこまで頼るのは悪い気が……」
「しばらく会ってなかったら、君が調子悪そうにしているんだから、すごく気になっているんだよね。まあ、お試しで一晩やってみないかい?」
困り顔でそう言われてしまうと、ユウキは断れる気がしなかった。
「わ、わかったよ……じゃあ、お世話になります。」
「決まりだね。」
ダイゴの表情は、心なしか嬉しそう見えた。