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    グラシス的救いを加筆して②

    #シス
    sister
    #捏造
    hoax

    シス過去捏造(ネハン独白)郷の技術を悪用し幹部となった俺には、ある程度の裁量が認められた。斯くして俺は郷帰りを果たした。

    恐恐と足を踏み入れたその場所は、意外にも整えられていた。一見伸び放題に見える草は、要所が刈り込まれ、郷で生育していた毒草や魔物はきちんと管理されていた。

    それは彼なりの贖罪の一つだったのだろう。

    当時の俺は、どの面を下げてと激昂したものだが。



    顔見知りや知らぬ者の家をまわる。何処も人の気配はなく朽ちているが、惨劇の痕跡は年月に洗い流されている。



    カルムの郷は、暗殺を生業とし栄えた一族が、覇空戦争以来団結して身を隠していた集落だ。

    覇空戦争が集結して、数百年。その間ずっと、外界から隔絶していた。つまり、一族間での交配が進んで、血は濃くなり、それ故に、いわゆる奇病や奇形、そういった者が増え、しかし既に郷は、外界と交わる事を選べなくなっていた。



    どの道滅びるしかなかったのだ。





    彼が産まれた日のことは、記憶していない。俺はまだ、自我を獲得するか否かという程幼かった。

    けれど両親等から当時の話を聞く機会はあった。



    郷長の子が産まれた、しかも跡継ぎとなる男児だった。喜ばしい筈のその出来事は、彼の母親の死という厄事に上書きされてしまった。

    彼の父――新しい郷長は入婿で、彼の母は、彼以外で唯一の郷長直系の人間だった。



    郷長の家系は、郷を興した当時から郷長を務めていた者の子孫だ。

    彼がまだ影も形もない頃――彼の母が若い娘である時分に、人格者であったという郷長一家は、その末娘を残して、揃って絶命してしまった。

    事故であったという話だが、その原因となったのが、彼の父だったとも聞いた。



    カルム一族は暗殺稼業で身を立てていた。人を殺すこの仕事は、報復が常に傍にある。

    彼の父は幼い頃に身寄りを亡くし、郷長の一家が世話を引き受けた。その時点でも、彼の父を――簡単に殺される様な、所謂暗殺一族の面汚しの一家を――疎む声は多かったと聞いた。しかし今思えばそれは前後即因果の誤謬であった可能性は否めない。

    しかして、事故は起こり、そして、厄事が起こった。



    公正世界仮説というものがある。世界は公正で、正しく生きていれば正しい結果がかえってくる、酷い目にあった人間は、被害者自身、もしくは類する者に、なにかの問題があったのだという考え方だ。

    人格者であった筈の郷長一家を襲う度重なる悲劇の理由を、そして郷に増える奇病や奇形の理由すらを、郷の者は彼の父を通して、産まれたばかりの彼に求めた。彼が生まれ持った力を見せる程、それが全ての証左であると言うかの様に、彼への当たりは強くなった。



    年端も行かぬ幼兒を、忌み子と呼び隔離し、偶に姿を見かければ揃って石を投げつけるような集団は、仮に公正な世界であったとしても、否、そうであったからこそ、滅びて当然の者達だった。

    元より暗殺という闇を糧として栄えた一族だ。滅びるしかなかったのだと、今ならば理解できる。

    他人事であれば、迷いなくそう言えるが、俺自身当事者の一人であるから、そうはいかない。

    記憶の中で優しく笑う父も、母も、姉も、彼に石を投げたのだろう。

    それは当然の報いだったのだろう。

    彼を迫害した者たちは、郷は、俺の家族は、皆死に絶えた。



    そして、俺も、彼に全ての理由を求め、怪しげな男の計略に乗り、石を投げつけた。

    正しく俺も、郷の人間であったという事だ。

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