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    pk_3630

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    #曦澄ワンドロワンライ
    開催ありがとうございます。お題「喧嘩」お借りしました。
    現代AUで同棲中の二人です。季節感はスルーでお願いします。
    ※蜜柑の食べ方への考えはあくまで創作上のことで何かを否定するものではないことをご承知おきください。

    #曦澄

    喧嘩「いい加減にしろ!曦臣!」
    炬燵をバンッと叩いて突然恋人が怒り始めた。曦臣からすれば何が何やらよくわからない。食後に二人でお茶をすすりながらテレビを見て寛いでいただけだ。
    「阿澄?突然どうしたの」
    口を開けたまま小首を傾げてしまう。何に怒ることがあるのか見当もつかない。
    「突然じゃない。俺はずっと我慢していたんだ。」
    江澄は眉間の皺を深めながら炬燵に置いた手をわなわなと震わせている。今自分は怒ってます、ということがこれ以上なく伝わりやすい表現をしている。
    「同棲するんだったらお互い妥協することだって必要だと言い聞かせてきた。価値観が違うことも受け入れたり慣れていくことだって大事だとわかっているつもりだ。だが、もう我慢できない!」
    まさか破局の危機がこんな時間帯に訪れようとは。
    今は日曜日の夜でこれから毎週楽しみにしていた時代劇が始まるのだ。ついに物語も最終章となり佳境を迎えているため、一瞬たりとも台詞を聞き逃したくない程に楽しみにしていた時代劇だ。江澄には悪いが、我慢できなくなるなら昨日言って欲しかった。そうしたら、今朝までには何とか話し合うなり、改善するなりすることもできただろう。しかし、いかに楽しみなテレビ番組が始まろうと、まずは恋人の主張を優先するべきだ。価値観の違いから別れましたなんて話は世の中いくらでも転がっているのだ。
    江澄に別れを切り出される未来なんて絶対にあってほしくない。
    「阿澄、何をそんなに我慢していたの?」
    「手元を見ろ」
    「手元?」
    何か問題だろうか。炬燵の上には日本茶と蜜柑しかないのだが。
    「曦臣、蜜柑を食べるには大きく分けて二種類の人間がいると俺は思う。白い筋をとって食べたい人間か、白い筋を食べても平気な人間かだ。あなたが白い筋を食べたくないことはわかった。俺が白い筋を食べても平気な人間であったとしても、あなたの食べ方に文句を言うつもりはなかった。けどな」
    曦臣の手元には白い筋を綺麗に剥がしている途中の蜜柑があった。蜜柑の皮の上にはとられた筋がふわりと乗っている。かたや江澄の手前にはすでに三つも蜜柑の皮があった。ほとんど白い筋を取らずに食べているから、その分食べるのも早いのだろう。
    「いつまで蜜柑の白い筋をちょこちょこ取ってるつもりだ!俺がなんで毎回決死の覚悟で炬燵から出て寒々しいベランダまで蜜柑を取りに行ってると思ってる!炬燵で冷たい蜜柑を食べたいって曦臣が言うからだろうが!それを毎回毎回いつまでも手の中で蜜柑を弄りやがって。その蜜柑、とっくに生ぬるくなってるじゃないか!」
    「そんな。白い筋は歯ざわりが悪くて苦手なんです。阿澄もそのことは知ってるじゃないですか」
    「そうだとしてもだ、限度があるだろ!そんっっなに細かくとる必要があるか?多少口に入っても問題ないだろ」
    「嫌です!私は全部取り除きたいんです!」
    多少口に入っても問題ない。その言葉に曦臣もカチンときた。苦手なものは苦手なのだ。蜜柑の食べ方なんて人それぞれで、そんなに怒ることでもないではないか。ついつい曦臣も言い返してしまう。
    「阿澄こそ。いつも気になっていましたが、何故蜜柑を四つ用意するのに、当然のように三つ食べてしまうんですか!?私の分も残しておいてください!」
    「はぁ?あんたがとろとろ蜜柑弄ってるからだろうが。冷たいうちに食べたいから食べてるだけだ。文句があるなら二つ目は自分でベランダに取りにいけ」
    何て可愛げのない恋人だろう。お互いに睨みあいが始まった。テレビの中ではちょうど合戦のシーンが流れているが、殺気なら二人とも負けていないかもしれない。
    「だいたい、阿澄は蜜柑を水分補給でもするかの如くパクパク早く食べ過ぎなんです。ほとんど噛んでないじゃないですか!もっと味わって食べてください!」
    「蜜柑はほぼ水分だろうが。冷たい蜜柑をわざわざ生ぬるくしてる奴に言われたくない!」
    時代劇が終わる時間になっても話は平行線のままだ。食べ物のこだわりとは中々に心の奥深くに根差しているようで、普段は適度に受け流して喧嘩にまで発展させない曦臣も、今回は一歩も譲る様子を見せなかった。
    結局この夜は寝室も別々にして寝ることになったし、朝は挨拶もないままに江澄がそそくさと出社してしまった。一人取り残されたリビングで曦臣はしゅんとしていた。
    「阿澄の分からず屋、あんなに怒ることないじゃないですか」
    家で仕事をしている曦臣はそのまま自室に籠ったが、江澄のことが気になって全く集中できなかった。久々に喧嘩をしてしまったことで落ち込んでいたし、早く仲直りをしたくて仕方ない。けれど蜜柑の食べ方を譲ることも躊躇してしまう。
    (阿澄が帰ってきたら仲直りしよう。それで今後は阿澄の前で蜜柑を食べるのはやめよう)
    蜜柑と江澄なら比べるまでもなく江澄の方がずっと大切だ。蜜柑の食べ方一つで江澄と気まずくなるのは嫌だ。
    昼ごはんの後に寒いベランダに出て蜜柑を箱から取り出す。白い筋を取り除きながら恋人への仲直りの言葉を考えていた。

    「…ただいま」
    「おかえりなさい、阿澄」
    少しぎこちなく言葉を交わせば、するするとお互いに仲直りの言葉が出てきた。価値観の相違による破局は何とか免れそうだと曦臣は安心したし、曦臣のいつも通りの優しい笑顔に江澄もほっとしていた。
    食後に炬燵で寛いでいると江澄がベランダに出ていく。蜜柑を四つ持って江澄が近づいて来たがそのままリビングを突っ切ってキッチンに行ってしまう。そしてしばらくすると炬燵に戻ってきて、曦臣の前に蜜柑を二つ置いた。
    「ありがとう、阿澄。でも今日は蜜柑は…」
    「それ、剥いてみろ」
    せっかく取りに行ってくれたのに断るのも良くないと思い、言われるがままに剥いてみると、驚いたことにほとんど白い筋が残ることなく皮がつるんと剥がれた。
    「えっ!なんですか、これ!」
    「職場の同僚に裏技を教えてもらった」
    会社に行っている間も自分のことを考えてくれたのかと愛おしさが募っていく。
    「…これなら、ずっと蜜柑を弄ってなくてすむだろ」
    手の中にあるひんやりとした蜜柑を江澄の口に運ぶ。小さい口でぱくりと食み咀嚼している様がどうしようもなく可愛い。
    「ありがとう、阿澄。私もやってみたいから裏技を教えて」
    「ん。じゃあもう一口くれ」
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    takami180

    PROGRESS続長編曦澄1
    あなたの名を呼びたい
     山門の手前に白い校服を見つけて、江澄は眉をひそめた。それまでよりも大股でずんずんと進み、笑顔で拱手する藍曦臣の前に立つ。
    「何故、ここにあなたがいる!」
    「あなたに会えるのが楽しみで」
    「俺はあなたの見舞いに来たんだ。その本人が出迎えちゃだめだろう!」
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     江澄は江宗主として、藍宗主に見舞いを出した。小麦や稗も大量に送ってある。
     その礼状とともに、藍曦臣から江澄宛の文が届いた。怪我の様子をうかがい、健康を祈る文面には一言も会いたいとは書いていなかった。同様に、藍曦臣自身の怪我についても触れていない。
     江澄は即座に返事をしたためた。
     三日後に見舞いに行く、と。
    「もう痛みはありません。ご心配をおかけしました」
     寒室に通されると、藍曦臣はてきぱきと茶を用意した。「いらないから大人しくしていろ」という江澄の苛立ちには、笑顔で「まあまあ」と返されただけだ。
    「それよりも、 1880

    sgm

    DONEお野菜AU。
    雲夢はれんこんの国だけど、江澄はお芋を育てる力が強くてそれがコンプレックスでっていう設定。
    お野菜AU:出会い 藍渙が初めてその踊りを見たのは彼が九つの年だ。叔父に連れられ蓮茎の国である雲夢へと訪れた時だった。ちょうど暑くなり始め、雲夢自慢の蓮池に緑の立葉が増え始めた五月の終わり頃だ。蓮茎の植え付けがひと段落し、今年の豊作を願って雲夢の幼い公主と公子が蓮花湖の真ん中に作られた四角い舞台の上で踊る。南瓜の国である姑蘇でも豊作を願うが、舞ではなくて楽であったため、知見を広げるためにも、と藍渙は叔父に連れてこられた。
     舞台の上で軽快な音楽に合わせて自分とさほど年の変わらない江公主と弟と同じ年か一つか二つ下に見える江公子がヒラリヒラリと舞う姿に目を奪われた。特に幼い藍渙の心を奪ったのは公主ではなく公子だった。
     江公主は蓮茎の葉や花を現した衣を着て、江公子は甘藷の葉や花を金糸で刺繍された紫の衣を着ていた。蓮茎の国では代々江家の子は蓮茎を司るが、なぜか江公子は蓮茎を育てる力よりも甘藷を育てる力が強いと聞く。故に、甘藷を模した衣なのだろう。その紫の衣は江公子によく似合っていた。床すれすれの長さで背中で蝶結びにされた黄色い帯は小さく跳ねるのにあわせてふわりふわりと可憐に揺れる。胸元を彩る赤い帯もやはり蝶のようで、甘藷の花の蜜を求めにやってきた蝶にも見えた。紫色をした甘藷の花は実を結ぶことが出来なくなった際に咲くというから、藍渙は実物をまだ見たことないが、きっと公子のように可憐なのだろうと幼心に思った。
    2006