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    846_MHA

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    たいみつワンドロライ。支部に上げたイブのお話の、25日の2人です。
    支部のお話は→ https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=16659383

    #たいみつ

    クリスマス 目の前の十字架に首を垂れて祈る。
    「天にまします我らの父よ…」
    長年唱え続けてきた祈りの言葉は、考えるより先に、歌うように口から出てくる。祈りの言葉を捧げ終わると、そっと目を開けて隣を見る。三ツ谷はまだ目を瞑っていた。神を前にして、此奴は何を祈っているんだろうか。
    ――
     今年も礼拝に行ってくると告げた時、問題なければ自分も連れて行ってほしいと三ツ谷が言ってきた。
    「ちょっと調べただけだけど、キリスト教って同性愛は『逸脱した行為』ってされてるところもあるんだろ。大寿くん1人で神様の前に祈らせたくねェよ。」
    三ツ谷の射抜くような視線は強いのに綺麗で、気づけば大寿は頷きをひとつ返していた。
     三ツ谷の祈りが終わると、2人で教会を後にする。日付を越えた今の時間、教会の中どころか周りにも人気は無い。早く帰って風呂に入って温まろうと帰路を急ごうとすると、
    「大寿くん。」
    と三ツ谷に呼び止められる。
    「どうした、忘れ物か。」
    「ううん、お祈りが終わったら渡そうと思ってたものがあってさ。」
    と言って、鞄の中から包みを取り出した。
    「お前、これ。」
    「いやァ、実は大寿くんがああ言ってくれる前に用意しちゃってて…。」
    三ツ谷は頬を掻きながらはにかむ。
    「そんな高ェハンカチじゃないんだけど、大寿くんのイメージ考えて刺繍したんだ。」
    包みを開けてハンカチを広げると、SHIBA TAIJUのローマ字と黒い龍を組み合わせたデザインが刺繍してある。
    「龍は黒龍のことか。」
    「そ。黒龍10代目リーダーも大寿くんだからね。」
    黒龍リーダーの大寿も柴家の長男としての大寿も、三ツ谷は受け入れているのだと思った。彼の愛は、広くて深い。
    「正直渡そうか悩んでて。もっと良い物プレゼントしたかったし。でも昨日大寿くんにサプライズしてもらったのマジで嬉しかったから、大寿くんなら喜んでくれるかなって。」
    その言葉を聞いて、クリスマスイブで伝えたかった自分の気持ちは、ちゃんと三ツ谷に伝わったのだと分かった。
    「オレがデザイナーとして有名になったら高く売れるから取っといてよ。」
    「絶対ェ売るか馬鹿野郎。」
    いつも通りの応酬をしたつもりだったが、三ツ谷にはバレバレだったらしい。
    「その顔じゃ、オレのサプライズも大成功だな。」
    三ツ谷が笑いながら、背伸びをして大寿の涙を手で拭う。薬指に嵌めた指輪が涙に反射して光った気がした。
    「大寿くんは、結構泣くよね。」
    「…うるせェ。」
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    MOURNINGアラサーのたいみつが指輪を買いに行く話。
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    指輪を買うたいみつ わたしの勤務先は、ゼロの数を数えるのがちょっと嫌になるくらいの高級アクセサリーを扱うジュエリーショップだ。小さな頃からアクセサリー食玩を買い集め続けている程度にはキラキラした物が好きだったわたしは、好きが高じた結果ジュエリーショップの販売員を目指して就職活動を行い、見事ゴールを決めたのだった。それが七年前の話。思わず目を瞑ってしまいたくなるほどのキラキラに囲まれる毎日は最高以外の何物でもなかったが、社会人生活すべてが楽しいことばかりというわけはなく、店内の清掃は面倒だし、ウン百万の宝石に触れるのは死ぬほど神経がすり減るし、なにより配属されたショップのお局がクソすぎて(あらやだ販売員にはあるまじき言葉遣い!目を瞑ってくださいまし)、近所のスーパーで「あのクソババァがさっさと異動になりますように」と七夕イベントの短冊に書き殴ったのが五年前。さて、わたしの願いは見事に叶い、お局は別店舗へ異動となって、それからはたいへん働きやすい職場へと様変わりした。それが三年前。しかしそれは、上司および同僚または後輩がわたしにとってやりやすい相手ばかりになったというだけの話であり、販売員の苦労の大半は、やはり接客にあるのだ。
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