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    ネが作詞家してる夢

    夢想 終末みたいな未来都市で アンドロイドの夢を見る
     シーソーゲームの悪と正義が アイオライトの目に映る
     

    「よし、出だしは順調だな」
     ネロはまずまずといった表情で、ボールペンを握り直した。
     
     オーエンとカインが主演を務める映画の主題歌が、レモンパイラバーズに決まった。
     芸能事務所「魔法舎プロダクション」には、俳優、アイドル、モデル、ミュージシャンなど、様々なジャンルのアーティストが所属している。
     レモンパイラバーズ、通称レモラバは、甘く凛とした歌声で様々なジャンルの曲を歌いこなす、人気急上昇中のアイドルユニットだ。レモラバに限らず、魔法舎所属のアイドルユニットの曲は、大半を作曲家のラスティカが手掛けている。作詞は、アイドル本人たちが手掛けることも多いが、最近では、ネロに話が回ってくることも増えてきた。
     ネロは、元々マネージャーとして事務所に務めていたが、ある時、新曲の作詞に行き詰まったシノに請われて手探りながら詞を書いたところ、「レモラバの新たな魅力を引き出した曲だ」と関係各所で話題となり、以来、作詞の仕事を請け負うようになったのである。
     今度の映画には、ヒースクリフも出演する。将来有望なエンジニア役だそうだ。シノも友情出演するとかしないとか。そして、ネロが密かに推している若手俳優も、シティポリスの署長役として出演するらしい。
     映画の主題歌という大仕事のチャンスを逃すわけにはいかない、と思うくらいには、作詞の仕事に熱が入っていた。もっとも、僅かばかりの私欲も混じってはいるが。そんなこんなで、ネロは、映画の台本を片手にノートに向き合っていた。

     書き出しはテンポよく進んだが、次第に頭を悩ませる時間が増えていった。
    「『チェリーブロッサムの……ソフトクリーム………溶けて、消えて……』うーん、安直すぎるな」
     二重線で勢いよく消して、頬杖をつく。抽象的な比喩ばかりでも伝わらないが、安直すぎるのも考えものだ。塩梅が難しい。何か掴みかけたかと思うと、言葉を模索しているうちに手のひらからこぼれ落ちていく。作詞は難しい。だが、自分の中にあるぼんやりとした感覚や情景が、しっくりくる言葉で表せた時の快感は、何ものにも代え難い。映画の世界観を彩るように、レモンパイラバーズの魅力を引き立たせるように、でも、彼らの新しい一面が覗くように。ネロは、丁寧に言葉を紡いでいく。
     
     ようやく形が見えてきたが、肝心のサビがどうしても思い浮かばない。映画の主題歌のサビといえば、予告編でも幾度となく流される「映画の顔」とも言うべき部分だ。キャッチーで、口ずさみたくなるような言葉が欲しい。
    「〜〜〜〜っああもう!浮かばねえ!!」
     ドサッと音を立てて、ソファに倒れ込む。机の上の台本を手に取り、しっくりくる表現を求めてページを捲る。署長の出てくる場面で、思わず手を止めた。
    「これ、あの人がやるんだよな……」
     ネロの脳裏に思い浮かぶ、ポリスジャケットに身を包んだ俳優。厳つい雰囲気とやんちゃな顔立ちのギャップが魅力の彼は、今回も豪胆な演技を見せてくれるだろう。しかも、台本を読むに、ちょっとたまらない感じの台詞が聞けてしまうようで、ネロは胸の辺りがぞわぞわと落ち着かない気持ちになった。
    「もしこの世界で、俺があの人のアシストロイドだったらなあ……」
     叶わぬ夢でも、見るだけなら無料だ。アシストロイド嫌いの署長の、アシストロイド。なぜ二人は一緒にいるのだろう。どんな経緯で出会ったのだろう。どんな風に過ごしているのだろう。思いを馳せているうちに、ふっと言葉が思い浮かび、ネロは勢いよく立ち上がってボールペンを握り締めた。

     
     プラスチックも溶ける37℃
     あなたの熱で とどめを刺して

     熱帯夜を振り解いたその先の未来を
     まっさらな心で たしかめて
     
     
    「でき、た……?」
     軽快なバンドサウンドに乗せて、レモラバの二人の熱く甘い声が響き渡る。シノの真っ直ぐな歌声に、ヒースクリフの包み込むようなコーラスが被さって、唯一無二の色を魅せる。そんな光景が、頭の中で鳴り止まない。
     そして、ネオン街を駆け抜けるエアバイク。セキュリティロボットとの銃撃戦。ラボで邂逅する登場人物たち。寄り添い立つ、人間とアシストロイド。
    「……うん、悪くないんじゃないか」
     安堵の溜め息を吐き出しながら、ネロはそっとボールペンを置いた。


     後日、「顔は映さないから!」と頼み込まれたエキストラが、夢想したあの役だったことを、この時のネロはまだ知らない。
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    tonoi00mhyk

    MOURNINGボス誕のつもりで書いてたけどなんかネが着火して迷走したのと、普通に大遅刻なのでぽぽい!
    好きなところはちょこちょこ書けました🙆
    ボス誕2023 今日はブラッドの誕生日。昨日から仕込んでおいて完成させた料理の数々を、飾り付けられた食堂のテーブルに次々と運んでいく。バースデーケーキもフライドチキンも、言われなくともたっぷり用意しているというのに、ついさっき、あいつは性懲りもなく盗み食いにやって来た。パーティーの直前ということもあり、さすがに胡椒は勘弁してやるかとカトラリーを持って追いかけ回していたら、なぜかミスラが満面の笑みでこちらを見て座っていたので、背筋に寒気が走った。ブラッドを解き放ってキッチンに戻るやいなや、食堂から爆発音と双子の呪文が聞こえてきた。半分くらい展開の予想がつきそうな気がしながら覗いてみると、今まさに音楽に合わせて踊り出そうとするように、ブラッドとミスラが手を取り合っていた。呆気にとられて見ていると、婿さんがチェンバロを取り出して、軽やかな音色を響かせた。誕生日祝いをするはずだった食堂は、あっという間にダンスパーティ会場へと様変わりした。訳の分からない状況に戸惑っていると、シノとヒースがとことことやって来て事情を説明してくれた。曰く。
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    tonoi00mhyk

    DONEブラネロ♀webオンリー
    「Bouquet for Navy blue」3 展示作品
    素敵なイベントをありがとうございました。

    ネがバレンタインのチョコレートを渡そうと奮闘するお話です。
    前作とほんのり繋がっている設定ですが、読んでいなくても大丈夫です。
    ※ネが先天性女体化
    ビターチョコレートの難題「き、緊張する……!」
     ネロは、マフラーに顔を埋めてそっと息を吐き、必死に自分を落ち着かせようとしていた。
     二月の冷たい風が吹き付ける。コートの前を手で寄せ合わせながら、川沿いの道を足早に歩いていく。待ち合わせの場所まで、あと少し。きっともう待っているであろう男の姿を想像すると、自然と口角が上がってしまう。それと同時に、枕に顔を押し付けて叫び出したくなるような衝動に駆られる。心臓が口から飛び出しそうなくらい、緊張している。今日のために準備した小さな箱を、鞄の上からそっと撫でる。……うん、ちゃんと冷えてる。
     
     賢者さんの世界では、二月の中旬に「バレンタイン」という催しがあるらしい。世話になっている人や、家族や友達、そして、意中の人物に、チョコレートの菓子を送って気持ちを伝える日。「これは義理チョコじゃな」「これは友チョコ!」「「そしてこれは、双子チョコ~!」」なんて、スノウとホワイトがはしゃいでたっけ。双子の言葉を借りるなら、ここにあるのは――「友チョコ」。そういうことにしておきたい。
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    recommended works

    cross_bluesky

    PROGRESSパラロイ本(ブラネロ)の冒頭部分。
    CRITICAL ERROR 鳴り響くエラーメッセージ、動かなくなるボディ。辛うじて稼働していた聴覚センサーが最後に拾ったのは、見知らぬ男の声だった。

     高層ビルの真ん中を薄紅色の花弁が舞い、眩しい光と音に溢れたネオン街──フォルモーントシティ。そこでは人間の他に、アシストロイドと呼ばれる人の手によって作られた機械たちが暮らしている。
     整備と機械化の進んだハイクラス・エリアとは違い、階級社会の底にあるワーキングクラス・エリアには治安の悪い場所も決して少なくない。法の目をかいくぐった非合法な店が立ち並ぶ中、管理者不明のアシストロイドたちはメンテナンスもされず、ただ使い捨ての道具のように各々の役目を全うすべく働かされていた。
     ──フォルモーント・シティポリスのもとに大規模な麻薬取引のタレコミが入ったのは夕方過ぎのことだった。ワーキングクラス・エリアの歓楽街の一角で、違法アシストロイドたちと引き換えに、隣接したシティから大量のドラッグが持ち込まれるという。人の形を精巧に模したアシストロイドは高値でやり取りされるのだ。特に違法アシストロイドは、人の心に取り入りやすいよう愛らしい見目をしているものが多いから尚更。
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